1960年-1989年のミュージカル映画(102本)

点数(10点満点)『映画タイトル』(制作年/制作国)監督名
(同年の映画は点数順に並んでいます。
 また、ほぼ全てネタバレをしているのでご了承ください。)


7.0『恋をしましょう』(1960/米)ジョージ・キューカー

 『銀の靴』(1951年)より面白い
 大富豪のイヴ・モンタンマリリン・モンローの気を惹くために生まれて初めてショウやコメディに挑戦するが、うまくいかずプライドが壊れていくなど、似た設定の『銀の靴』(1951年)より面白い。ただ結局は金持ちの美男が得をするという構図になっていて、イヴ・モンタンの登場によって役を失う男や翻弄される演出家たちを思うと可哀想ではある。
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6.0『G.I.ブルース』(1960/米)ノーマン・タウログ

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 まあまあ楽しめる
 兵士たちの間で、身持ちの固い彼女を陥落させた男に300ドルが与えられるという賭けが始まる。いかにもマッチョ思想の男が考えることで私は苦手だが、エルヴィス・プレスリーが女を落とすために彼女に近づくうち本当に好きになる、という展開は恋愛ものとしてはまあまあ楽しめる。
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3.0『ベルズ・アー・リンギング』(1960/米)ヴィンセント・ミネリ

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 筋が不自然
 電話応対代行会社に務めるジュディ・ホリディは、劇作家のディーン・マーティンの「ママ」役を務めていて、彼にモーニング・コールをかけるのが日課になっている。マーティンはなかなか脚本を書かずに酒を飲んでは出版社に執筆を催促されるのだが、すぐクビにならないのは売れっ子作家であるからだし、加えて彼は「女友達は大勢いる」と発言するなど身近な人物だとは思えず私は共感できなかった。また、電話交換手が違法行為をしていないかと大した理由もなくジュディ・ホリディが警察にマークされる展開になるがこれは不自然であり、彼女がマーティンになかなか連絡できないという物語構造を保つための言い訳に過ぎず面白くない。


1.5『カンカン』(1960/米)ウォルター・ラング

 興味が出ない物語
 1896年のパリが舞台で、カンカンという踊りは卑猥だから取り締まろうとする判事とそれに抵抗する人々が描かれるが、そもそもカンカンのどこに魅力があるのか分からないので正直取り締まられようがられまいが興味が出なかった。また、早い段階でシャーリー・マクレーンと判事がキスをするので恋愛ものとしての情緒もないし、インチキ弁護士のフランク・シナトラの「不貞の原因は結婚にある。結婚がなければ不貞はない」というモテ独身男宣言があるのも嫌である。モテない人間はそもそも結婚が出来ないのである。加えて弁護士は誠実であるべきなのだからインチキ弁護士が良い人のように描かれるのも問題があると思う。
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2.0『花くらべ狸道中』(1961/日)田中徳三

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 まだ狸をやるか
 60年代に入って狸の設定はもうキツいんじゃないか。狸が「お月様、時間を元に戻してください」と念じることで時間が戻るなど何でもありのファンタジーで面白くない。ただ、中田康子や若尾文子の色気があったり、勝新太郎が出てきたりと、他の狸映画よりは見ていられるかもしれない。


0.5『ウエスト・サイド物語』(1961/米)ロバート・ワイズ

 ガキの喧嘩
 原作の『ロミオとジュリエット』は両家の対立の背景は詳しくは説明されず、二人の恋愛描写も無いのにロミオとジュリエットが愛し合っているという構図で私にはイマイチだが、『ウエスト・サイド物語』は両者の対立がガキの喧嘩に置き換わっていて余計私には共感できない。悪ガキを取りしまる警官を悪く描いていてるのもおかしいし、恋愛も『ロミオとジュリエット』と同じく一目ぼれの相思相愛で捻りがないし、不良グループの歌う歌もダサい。悲劇的な結末なので不良を正当化していないだけマシかもしれないが、そこだけである。
 例えばこの作品をほめる批評家の萩尾瞳は「『ウエスト・サイド物語』はミュージカル映画に画期的な変革をもたらした。それは特定のスターを起用することをさけ、グループの魅力で見せようとしたことであり、モダン・バレーの要素を取り入れた新しいダンスを展開したことである」(『プロが選んだ初めてのミュージカル映画』92p)と言っているが、私にとって映画で重要なのは内容である。「グループの魅力を見せる」ことで、逆にキャラクターそれぞれの個性が薄れて人間ドラマを描けていないのは明白である。『ウエスト・サイド物語』はしばしばミュージカル映画の傑作であると紹介されが、まったく納得できない。
 

6.5『黒蜥蜴』(1962/日)井上梅次

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 エロティックなのは良い
 江戸川乱歩の小説『黒蜥蜴』を三島由紀夫が戯曲化し、さらにそれを映画化した作品で、私は両方の原作も読んだが、基本的に映画は原作に忠実である。しかし映画のオチでは哲学的なテーマを加えているが、これはただスノッブなだけでいらないと思った。
 替え玉を使ったり変装をしたりと強引な展開は多いが、京マチ子明智小五郎大木実)の関係がまるで恋愛のように発展してく様が面白く、布越しに明智を撫でようとする京マチ子の仕草もエロティックで良い。


7.0『ひばり・チエミの弥次喜多道中』(1962/日)沢島忠

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 モテない江利チエミが面白い
 ひばりとチエミは麻薬組織の仲間だと思われ誤認逮捕されてしまう。すぐに釈放されるが、「牢屋に入った」という偏見から務めていた芝居小屋をクビになり、二人は男装して旅に出る。しかし、どうして男装しなくてはいけなのかは分からない。美空ひばりが目が悪いという設定も面倒臭く、物語には蛇足に思える。
 ただ、江利チエミの喋りにモテない女の悲哀や滑稽さが出ていてそこは面白かった。
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5.0『ヤング・ヤング・パレード』(1963/米)ノーマン・タウログ

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 相棒が嫌なやつ
 便利屋のプレスリーには何人も女がいて、冒頭からいきなり女といちゃつくのでムカつく。プレスリーの相棒もギャンブル狂で、大負けした後金を払わずに逃げるなどダメなやつである。また、相棒は嘘をついたり密輸に手を出そうとするのに、プレスリーとは全然喧嘩にならならず、何となく両者が和解するのはおかしいし人間ドラマを演出するチャンスを潰している。ただ、プレスリーが最後に惚れた看護婦はなかなか落ちず、そこから片思いの物語になっていく様は恋愛映画として楽しめた。
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2.0『ひばり・チエミのおしどり千両傘』(1963/日)沢島忠

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 ひばりとチエミの掛け合いがない
 お姫様である美空ひばりが脱走してしまったため、代わりに乳姉妹江利チエミが姫のフリをして当座をしのぐという話で、江利チエミの歌や台詞回しは面白いが、ひばりとチエミが同じシーンに出ないので掛け合いがなくつまらない。また、姫という身分が入れ替わったからといって身分制への意識や批判的視点があるわけでもなく私には物足りない。
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1.0『バイ・バイ・バーディー』(1963/米)ジョージ・シドニー

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 人に魅力がない
 バーディーというスター歌手はただのプレスリーの二番煎じで全くカリスマ性を感じないし、人間性も描かれないので何の魅力もない。ディック・ヴァン・ダイクは作曲家であるが科学者でもあり薬を開発できるなど荒唐無稽でギャグとしても笑えない。唯一面白かったのは、バーディーを見て興奮して絶頂に達し、イキっぱなしみたいになってしまった熟女がエロかったところ。
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9.5『マイ・フェア・レディ』(1964/米)ジョージ・キューカー

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 恋愛感情を肯定的に捉えていて感動できる
 言語学の教授レックス・ハリスンは、「(人は)話し方で人を差別し 話し方で人をさげすむ その壁は崩せぬものか」と、言葉によって階級の壁を打破することを考えていて、その実験のために下層の花売り娘オードリー・ヘプバーンにレッスンを受けさせることにした。オードリーに対するハリスンの言語教育は厳しさを極め、ほとんど人格を無視して女を見下しているように見える。そのため原作戯曲『ピグマリオン』(バーナード・ショー著)では二人は結ばれないことで作者は女性の味方をしようとしているのだと思うが、映画ではオードリーを通してハリスンの内面が徐々に変化していって恋心が芽生え、女性嫌悪を反省させることによってオードリーの味方をしている。恋愛感情というものをとても肯定的に捉えていて感動できる。ラジカルフェミニストはこの男の元から去らないオードリーを批判しそうだが、もし二人がこのまま結婚しなければオードリーは一人で生きて行かざるをえず、花屋を始めるとしても最初の資本金も必要だし、しかも店を経営したところで上手くいく保証もないのだから、彼女にとって結婚が幸せならそれでいいのである(男のもとを去った方が良い、と考える人は、その女性の今後の人生が失敗したとき責任を持てるのか?無責任ではないか?)。その他、音楽も演出もいいしハリスンが上流階級にずけずけ物を言ったりするのも面白い。もっとも、本来原作『ピグマリオン』は英国の「アッパー・ミドルクラス」や「ロウアー・ミドルクラス」という中産階級のさらに細かい区分における対立も問題にしているが、米国で映画にするにあたりアッパー・クラスとワーキングクラスという分かりやすい対立に偏向されている(新井潤美『階級にとりつかれた人びと』p136)。
 ただ映画が170分あり、オードリーにレッスンを受けさせるかどうか揉めるシーンや父親が歌うシーンなどは中だるみしていると思った。
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9.0『メリー・ポピンズ』(1964/米)ロバート・スティーヴンスン

メリーポピンズ スペシャル・エディション [DVD]

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 原作をうまくミュージカル化している
 既に舞台女優として名声を得ていたジュリー・アンドリュースの映画デビュー作で、原作小説(『メアリー・ポピンズ』シリーズ、P.L.トラヴァース著)も面白いが映画はそれをうまくミュージカル化していると思う。メリー・ポピンズ(役ジュリー・アンドリュース)は乳母だが母性は強すぎず、誇り高くツンとしているので子供と大人という対比にもなっており色気があって魅力的である。メリー・ポピンズがただただ子供に甘かったり優しかったりするだけではこの作品の魅力はほとんど削がれてしまうように思える。もっとも、比較文学者の新井潤美によれば、英国のナニー(乳母)はアッパー・クラスの子供をしつけるためにかなり行儀が良く、映画のジュリー・アンドリュースはこれでもニコニコしすぎだという(『不機嫌なメアリー・ポピンズ』p92-93)。ほかには、両親の人間性がしっかりと提示できているので、ファンタジーでありながらも子供と夫婦のズレや夫婦間のズレがリアルで楽しめる。父親(役デヴィッド・トムリンソン)が大道芸人(役ディック・ヴァン・ダイク)と相対して感染し、銀行の頭取を前にして生き生きと歌うシーンでは感動した。
 ただ、ポピンズらが絵の中の世界に入って遊ぶシーンは20分もあり長いので、途中で飽きてしまった。
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1.5『シェルブールの雨傘』(1964/仏)ジャック・ドゥミ

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 内容がないのに後味が悪い
 全部の台詞がメロディに乗っているが、そういうアイデアと映画が面白いかどうかは別の話である。カトリーヌ・ドヌーヴと恋人ギイは、いきなり相思相愛のカップルとして登場し、結婚を前に戦争で引き裂れ、それぞれ別々の恋人と結婚するが、なぜそうなったかという描写が足りずついていけない。しかも、ドヌーヴの方が男の愛を裏切ったように描いているので女性蔑視の傾向がある。なんでわざわざ後味の悪い映画を作るのかよく分からない。
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3.0『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』(1964/英)リチャード・レスター

ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ![決定版] [DVD]

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 冴えないリンゴ・スターは面白い
 ビートルズ初の主演映画で、全編を通してビートルズの曲が使われるが、女の子にキャーキャー言われながら追いかけ回されるだけで映画としては退屈である。
 ただ、リンゴ・スターだけは冴えなくてモテず、女の子をナンパしようとしても「何よチビ」と言われるなど哀愁があり面白かった。


0.5『ああ爆弾』(1964/日)岡本喜八

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 テロを企てるヤクザ
 爆弾テロを企てるヤクザの主人公を面白く描こうとしているのがまずおかしいし、しかもギャグが面白くない。歌も寒いし筋もつまらずいい所なしである。
 ところで、「南無妙法蓮華経」と祈りを挙げるヤクザの妻は創価学会員なのだろうか?主人公のヤクザの下の名前も「大作」であり深読みしてしまう。


0.5『七人の愚連隊』(1964/米)ゴードン・ダグラス

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 いいギャングなどそもそもいない
 フランク・シナトラがいいギャングで、ピーター・フォークが悪いギャングだが、そもそもヤクザ自体が「悪」なのだから私には全く興味のない対立である。しかもシナトラはいいヤクザということになっているが、「盗むなら車ごと盗め」と教えてくれたボスを崇拝しているなど普通に犯罪者である。ラストでもシナトラは大きく罰せられることはなく楽しそうにサンタの格好をして踊って終わるので不快だった。
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9.0『サウンド・オブ・ミュージック』(1965/米)ロバート・ワイズ

 映画初心者も玄人も楽しめる傑作
 同名のマリア・フォン・トラップの自叙伝をもとにして作られたミュージカル映画で、1930年代のオーストリアを舞台にしている。「マリア(ジュリー・アンドリュース)は修道女には向きません」と先輩の修道女が言うように、ジュリーが宗教に熱心すぎないから無神論者の私も彼女に共感しやすい。ナチス批判などの政治的なメッセージは脚色されているものの、長女リーズルの恋人で郵便配達員のロルフがナチスに傾倒していくところなどは、政治状況をうまく活用してドラマにしているから映画として面白くなっている。終盤でナチス党員となったロルフが逃走するトラップ一家を発見し、上官に報告しようかどうしようか、と葛藤する場面は劇的である。もっとも、この逃走劇はフィクションである(瀬川裕司『「サウンド・オブ・ミュージック」の秘密』p203)。傑作であり、映画初心者も玄人も楽しめる作品だろう。ちなみに私は劇中の曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」をサックス奏者ジョン・コルトレーンのカバーで先に知っていたが、原曲の方がいいと思った。
 ただ、父親(役;ロバート・プラマー)のキャラがモテ男で格好付けているのが少々鼻に付くし、そのプラマーのことが好きな金持ちの女(役;エリノア・パーカー)がジュリー・アンドリュースを追い出す女として強調されているのは嫌であった。
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1.0『ヘルプ!4人はアイドル』(1965/英)リチャード・レスター

 マニア向け
 指輪をめぐるファンタジックな追いかけっこが展開されるだけで、ビートルズを見たい人だけが見ればいい映画であった。


1.0『歌え!ドミニク』(1966/米)ヘンリー・コスター

(イメージ無し)
 単なる宗教プロパガンダ
 実在する尼がモデルの映画だが、主人公ドミニクは説教臭くて『サウンド・オブ・ミュージック』に比べて魅力が全然感じられない。ある日、望まない妊娠をした女性が中絶するつもりだとドミニクに言うと、「出産はすてきなことよ 子供をわざと殺すなんて」と怒り出し、他の尼僧も出産が正しいことだと疑わない。しかし、憎い男や嫌いな男の子供を産めというのは酷だし、お金のない女性にとって養育費は死活問題なのに子供を産めというのは無責任である。なのに妊娠した女性の話を聞かずに「中絶は悪」と決めつけるのは完全に思考停止のカルトである。中絶廃止論者はレイプされて妊娠された女性に向かって子供を産めと言えるのか。ラストでは、刑務所に入るなど問題のあった父親が、息子が交通事故にあっただけでまともになり、神に祈りを捧げるまでに変貌するが、現実はそんなに簡単なはずがなく、もはや単なる宗教プロパガンダ映画である。


0.5『努力しないで出世する方法』(1966/米)デヴィッド・スウィフト

(イメージ無し)
 ほとんどカルト宗教
 学歴もない男が、出世する方法が書かれた本を頼りに嘘とインチキを塗り重ねてどんどん出世していくが、ギャグとしても全く笑えない。出世することの引き替えに何か失ったりリスクが増えるのならまだ分かるが、そうではなく中途半端なギャグが続くだけで得るものがない。狂信者が聖書に従うが如く本を盲信し、会長にまで出世し美人の秘書と結婚する内容なのだが、要するにこれは聖書を盲信することで人生が上手くいくというカルト宗教映画という風に読める。


0.5『ローマで起こった奇妙な出来事』(1966/米)リチャード・レスター

ローマで起った奇妙な出来事 [VHS]

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 差別を楽しむ趣味の悪い映画
 ローマ時代の奴隷が主人公で、女性の人身売買をギャグにしているが笑えないし、身分差別の実態や残酷さ、生きるか死ぬかというようなリアリズムがなく面白くない。奴隷として購入したフィリスが処女だというのに「私の体はあなたのもの」と性行為のニュアンスを嬉しがっているなど、映画に登場するすべての女が男を誘惑する女として人間性を剥奪されていて気分が悪くなる。「メイドを持とう 忠実でネズミより静かな女」という歌も歌われいる。人間を差別することを楽しんでいるような趣味の悪い映画である。


10.0『ドリトル先生 不思議な旅』(1967/米)リチャード・フライシャー

 原作をこえた傑作
 全13冊からなる原作小説のエピソードをうまく繋ぎ、ずっと楽しい脚本にしている。人間も動物もそれぞれ個性がしっかり出ていて登場するキャラクター全てが魅力的である。とくに、ドリトル(役;レックス・ハリスン)のことをおかしいと思っている検事の娘(役;サマンサ・エッガー)が、ドリトルの直向きな姿に感銘を受けていき、また女嫌いのドリトルも女性に心を開いていく様は面白く、恋愛ものとしても胸を打つ。さらに私が感動したのは、法廷で精神異常者ではないかと疑われたドリトルが、「人間とはこんなものか」と歌で判事に反論するシーンで、彼の主張は偽善ではなくしっかりと的を射ており、動物愛護団体の人間でなくとも感動できる。私は今まで400本ほどミュージカルを見たが、その中で一番感銘を受けた歌のシーンだと言っていい。以下に歌詞の一部を紹介する。

 「『まるで犬扱い』『牛馬のように働く』『豚のように食う』改めるべきだ
  卑劣な相手をイタチにたとえ 嫌な女は雌ギツネか猫
  なぜ言わぬ 『蛙のように気高い』『雌鶏のように裕福』
  いつ訪れる 豚をきれいと言う日は」
 「赤んぼヤギやラムの毛皮も 女にはただの毛皮
  毛皮をまとい羽を飾り 思ってもみない 
  殺した動物のことを それは誰かの兄 子をもつ母親かも知れぬ」

ドリトル先生 不思議な旅』は原作をこえているしギャグも笑えるし本当に言うことのない映画である。
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1.5『モダン・ミリー』(1967/米)ジョージ・ロイ・ヒル

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 全体的に寒い
 ジュリー・アンドリュースは「ついに男女平等の時代になったのよ」と言うが、そのくせ上司の男に惚れて「男らしい」とウットリするのは矛盾している。またジュリーは結局は「男女平等はもういいの 一人の女性でいたいわ」と反動的なことを言うのでガッカリする。ギャグも笑えなくて、サイレント映画のような字幕の挿入の仕方もスベっている。物語の舞台設定である1920年代当時の映画のようなドタバタ喜劇風に演出しようとしているが全体的に寒い。また、ダンスシーンも独創的には思えず冗長に感じた。
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1.5『キャメロット』(1967/米)ジョシュア・ローガン

 倍速で見ても同じ
 聖杯とアリマタヤのヨセフの伝説に基づく映画だが、何か大きな物語が進行するわけではないのに3時間もあり退屈である。王女が王の愛を裏切るという女性蔑視もあり嫌だし、身分制への批判意識もないし、全編倍速で見ても差し支えない。


1.0『ロシュフォールの恋人たち』(1967/仏)ジャック・ドゥミ

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 手抜きに見える
 登場人物が多く一人一人の人間性を浮かび上がらせていない。それを補うような音楽やダンス、笑いもない。また、お互いの元に運命の人が現れるという相思相愛の展開が多く、恋愛の丁寧な描写もない。オチも、カトリーヌ・ドヌーヴの恋がどうなったかを描かず省いているのが手抜きに見える。
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4.0『スター!』(1968/米)ロバート・ワイズ

 ミュージカル映画の退潮を象徴する作品
 気丈な振る舞いがジュリー・アンドリュースにあっているが、3時間近くあるのは長い。ジュリーが傍に居てあげられず別居状態だった娘とギクシャクするが、最終的に関係がどうなったのかはちゃんと描かれず終わるので物足りない。また、この当時ジュリー・アンドリュースは「もっともギャラの高い女優」となったにもかかわらず『スター!』が興行的に大失敗したことにより、「ミュージカル映画の退潮を人々に強く印象づけることになった」(瀬川裕司『「サウンド・オブ・ミュージック」の秘密』p155-156)映画となった。
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3.0『オリバー!』(1968/英)キャロル・リード

 原作よりはマシ
 歌は多く楽しめるが、脇役の背景を描いていないので脇役が歌うとき感情移入しにくい。また主人公オリバーは孤児として生まれたが、じつはいいとこの生まれだったというオチで、これも「なんだ、結局生まれがいい人間は幸せになるだけか」とガッカリするだけである。まあそもそも原作の『オリバー・ツイスト』(ディケンズ著)自体がイマイチだから仕方は無いが、原作を読むよりは映画を見た方がマシ、という感じ。


1.5『アンデルセン物語』(1968/日)矢吹公郎

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 世界観が掴めなかった
 ネズミと会話できる少年が「空から人間が降りてくるなんてあり得ない」と言っているが、だったらネズミと喋るのもあり得ないし、どこまでがリアリズムの範囲なのかブレていて世界観が掴めなかった。その後もキャラクターの性格が浮かび上がらないままで、最後に強引にハッピーエンドにしているがつまらない。絵柄もあまりかわいくない。


1.0『チキ・チキ・バン・バン』(1968/英)ケン・ヒューズ

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 車社会の宣伝
 「チキチキバンバンそれは美しい車愛する車」という歌詞があるようにチキ・チキ・バン・バンとは車の名前で、車による死亡事故や排気ガスなどの負の側面には触れられないので、私にはこの映画は車社会のプロパガンダに感じた。また、後半の悪党ボンバースト男爵との戦いはありがちなファンタジーの展開で、特筆することは無い。『メリー・ポピンズ』のヒットにあやかり同じスタッフが多く結集したらしいが、そうだとは思えないほどつまらない。
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1.0『フィニアンの虹』(1968/米)フランシス・フォード・コッポラ

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 「あんたなんか黒んぼになればいい」という矛盾
 冒頭から、ロケ撮影やカメラワークなどを駆使したリアリズムの強い作品なのかと思ったが、内容は「三つの願いが叶う壺」をフレッド・アステアとその娘がアイルランドから米国に持ち出し、それを妖精が取り戻しにくる」、という単なるファンタジーである。しかし、アステアと妖精の関係性が分からないし、なぜ妖精から壺を借りてきたのかも分からないので釈然としない。
 フィニアンの村では白人と黒人が仲の良く暮らしているという設定が、偽善っぽくて気味が悪いし、それにじゃあアジア人はどうなんだと言いたくなる。また、この村の土地を奪おうとする人種差別主義者の白人議員が出てくるが、アステアの娘は怒って「あんなたんか黒んぼになればいい」と言い放ち魔法で議員を黒人にする。しかしこれは完全に論理破綻していて、アステアの娘は「黒人は苛められていい」と内心思っているのであり、本当に人種差別をしない人は「あんたなんか黒んぼになれ」だなんて言わないのである。その他、男が強引にキスをすると女もそれを受け入れ、一気に相思相愛の良い関係になるというマッチョ思想も出てきたりして満遍なくつまらなかった。
 ちなみにこの映画はアステアが最後に出演したミュージカル映画である。
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0.5『イエロー・サブマリン』(1968/英)アニメジョージ・ダニング

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 レコードを聴けば良い
 ペパーランドという楽園をビートルズが敵の手から助けるというものだが、ディズニーの劣化版のようなドタバタ劇は観ていて辛くしつこい。普通にビートルズのレコードを聴けば良い。


0.5『プロデューサーズ』(1968/米)メル・ブルックス

 男同士の戯ればかり
 ミュージカル映画プロデューサーズ』(2005年)の原作映画。エロい婆さんエステル・ウィンウッドの演技は少し面白かったが、全体的にギャグが笑えない。また2005年版に比べ女性ウーラの出番がほとんど無く、よりホモソーシャルな内容になっている。主人公らが逮捕された後も刑務所で男たちだけで仲良くショウをやっていて、男同士の戯れに全く興味がない私としては良さがわからなかった。


0.5『ジョアンナ』(1968/英)マイケル・サーン

 ヌーヴェルヴァーグの焼き回し
 終始アートぶった雰囲気で、ヌーヴェルヴァーグの焼き回しにしか見えない。登場人物が退廃的だったり性に放縦だったりするだけで面白くない。ジョアンナは殺人を犯した黒人の子を身籠もるが、彼女には感情移入できないので同情できず、感情を揺さぶられなかった。


7.5『ペンチャー・ワゴン』(1969/米)ジョシュア・ローガン

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 奇妙な西部劇
 『桑港』(1936年)と同じく、放埒な街が天罰で崩壊するというキリスト教の教訓が強すぎるものの、それを抜きにするとなかなか変わった映画で面白い。クリント・イーストウッド主演の西部劇にもかわらずドンパチ戦うシーンや暴力的なシーンがほとんど無いのがまず驚いたが、その後もジーン・セバーグイーストウッドリー・マーヴィンの一妻二夫制で生活するという奇妙な展開になる。一歩間違えると馬鹿馬鹿しいギャグ映画になりそうだが、人間ドラマが丁寧に描かれているのでリアリティを失っていないのでそんなに飽きなかった。


3.0『ファニー・ガール』(1969/米)ウィリアム・ワイラー

 歌がうまいのは分かるが
 歌手バーブラ・ストライサンドの映画デビュー作で、喜劇女優ファニー・ブライス(ファニーは本名)の伝記映画。バーブラ・ストライサンドの歌がうまいのは分かるが、好きになった男がギャンブル狂でそいつに振り回されるなど内容はどうでもいいレベルで印象に残らない。結局男女は結ばれないが、女性に悪く責任があるようには描かれていないから『シェルブールの雨傘』(1964年)などよりはマシかもしれないが。
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4.0『ハロー・ドーリー!』(1969/米)ジーン・ケリー

 ケチで偏屈な男に惚れる理由が分からない
 結婚ブローカーだというドーリー(バーブラ・ストライサンド)を中心に、他の登場人物たちが恋を巡らせるが、登場人物が多くそれぞれの人間性が伝わってこない。ドーリーがホレスというケチで偏屈な飼料の製造主が好きな理由も分からない。一方、「女性に触ったのは初めてだ」と女になれていない童貞の描き方は面白いが、その童貞も女とすぐ相思相愛になるのでムカついた、もっと丁寧に過程を描いてほしい。
 ちなみにソーントン・ワイルダーの原作戯曲『結婚仲介人』は登場人物が生き生き喋っていて面白いが、ドーリーがホレスという男のどこに惚れているのかも分からないなど映画同様描写が足りないのは否めない。
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2.0『スイート・チャリティ』(1969/米)ボブ・フォッシー

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 女性に恨みでもあるのか
 原作映画『カビリアの夜』(1957年、フェデリコ・フェリーニ監督)でもそうだが、なぜ主人公の女性をここまで可哀想に描く必要があるのか分からない。女性に恨みがある人間が作っているんじゃないかと思わざるを得ない。趣味が悪いし後味が悪い。ヒッピーのような格好をしたサミーデイヴィスjr率いる新興宗教が出てきたり、フラワーチャイルド(ヒッピー)が主人公を励ましたりするが、この当時のオカルトと左翼が結び付いた雰囲気は、無神論者で左翼ではない私には理解できない。
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2.0『チップス先生さようなら』(1969/米)ハーバート・ロス

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 主人公が受動的すぎる
 教師のチップスは美人に惚れられたくせに、女の顔をおぼえていないなど恋に全然気付かず鈍感でムカついてしまう。全体的にチップスがなにか行動を起こすわけではなく受動的なので退屈である。
 ちなみに原作小説『チップス先生、さようなら』(ヒルトン著)ではより一層チップスが女に冷たく、妻と子供が戦争に巻き込まれて死んだらしいがどうやって死んだのかも含めて全然詳細が語られず、死んだ後も思い出話が出てこないので、映画以上に何が言いたいのかよく分からなかった。


1.0『素晴らしき戦争』(1969/英)リチャード・アッテンボロー

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 本当の平和主義者は戦争映画を撮らない
 序盤から実験的な会話劇があるが退屈である。また、「この国の最良な男達を私たちは殺しています」「戦争に勝者なし」という演説が出てくるようにこの映画の基本的なスタンスは平和主義なのだろうが、戦争をしないところで攻めてきた敵国が勝者になる訳だからこのスローガンは単純に間違っている。さらに、そもそも本当に平和主義者なら、暴力を描くこと自体に抵抗があるはずだから戦争を題材にした映画など撮らないと思う。戦争経験者のオードリー・ヘプバーンは映画『戦争と平和』の撮影中、戦争体験が甦ってくるので毎晩悪夢に悩まされたという(ハイアム『オードリー・ヘップバーン 映画に燃えた華麗な人生』p126)。風刺が効いているとも思えず、何がしたいのかよく分からない。


7.0『晴れた日に永遠が見える』(1970/米)ヴィンセント・ミネリ

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 評価が難しい
 精神医学博士のイヴ・モンタンが大学で大真面目に催眠術の講義をしているシーンから始まったので、オカルト色が強く面食らった。その講義に出席しているバーブラ・ストライサンドは霊感が強く、イヴ・モンタンに前世の記憶を話していく。バーブラには前世が何人もいるなどややこしいのだが、彼女の前世の話を聞くうちにモンタンが彼女の前世にどんどん惹かれて恋に近くなるように話が展開していき面白くなった。また、バーブラは自分を実験台にしていると感じモンタンを避けるようになったが、彼は何とか自分の元に戻ってもらおうと彼女の霊感に訴えるなど、設定をちゃんと生かしている。
 ところで最後バーブラの前世が、2038年に自分の来世とモンタンの来世が結ばれると予言するのだが、モンタンが本当にそれを信じたのかはわからないものの、来世に期待せよというメッセージだとも読めるから宗教色が強すぎて私には腑に落ちないところがあった。ファンタジーとしては楽しめるが、絶賛するのはためらわれる映画である。
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2.0『クリスマス・キャロル』(1970/米)年ロナルド・ニーム

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 寄付は偽善である
 金貸しの男スクルージはクリスマスも働きずくめで、「クリスマスに仕事なんて神のみ心にそむく」と悪どく描かれている。しかし現代ではクリスマスでも働くことはあるし、日本人の私にはピンとこない。またこのスクルージが寄付をしないことも批判されるが、金持ちが寄付をしたところで再度お金を吸い上げるのだから寄付とは基本的に金持ちの偽善行為である。世界で一番寄付をしているのはビル・ゲイツであるが、それは彼が世界で一番金儲けをしていて貧乏人から金を奪っているからであり(スラヴォイ・ジジェク『暴力 6つの斜めからの省察』)、本当に貧乏人のことを考えているのならマイクロソフトなど廃業した方がいいのである。またスクルージの元に幽霊が出てきて、一緒に過去にさかのぼって人生を見つめ直す作業をするが、スクルージが特に説明もなく簡単に子供のように童心に返ってしまうのが納得できない。現実において一度大人になったら童心に返ることは不可能であるし、しかもスクルージは特に現実主義者で金貸し業者であり、そんな男が無邪気になるには説得力のある理由やちゃんとした描写が必要である。映画『メリー・ポピンズ』(1964年)では銀行に勤める生真面目な父親が、金儲けしか考えていない上司たちに反抗するシーンがあるが、こちらの方が面白いし感情を揺さぶられる。
 ちなみに原作『クリスマス・カロル』(ディケンズ著)も映画とほぼ同じ内容でイマイチである。


1.5『恋の大冒険』(1970/日)羽仁進

 カラオケビデオを見せられてる感じ
 今陽子が「勇ましい」男に惚れるだけで、「恋の大冒険」という題名なのに恋愛描写ができていない。「催眠術」など使い古された手を使う悪者が出てくるなどコメディとしても笑えない。音楽にのせてカラオケみたいなミュージックビデオを流して面白い訳がない。


1.0『ロバと王女』(1970/仏)ジャック・ドゥミ

 身分制へのノスタルジー
 王は妃を亡くしたが、妃の面影が恋しすぎて自分の娘と結婚しようとする近親相姦の話で、童話を映画化しただけの平凡な作品に思える。王女と王子の恋愛も一目惚れなので捻りがない。興行的に成功したようだが、まあフランスという共和主義国にも当然、王制や身分制に対する反動やノスタルジーが沸いてくるというだけのことだろう。
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8.0『屋根の上のバイオリン弾き』(1971/米)ノーマン・ジュイソン

 原作より共感しやすい
 ロシアに住む伝統的なユダヤ教徒一家の父親が主人公で、彼の価値観は伝統と社会変革の間で揺れ動く。私は無神論者だからユダヤ教徒の伝統や選民意識に共感できないものの、娘達の恋愛結婚に動揺する父親の姿は普遍的なもので面白かった。また、娘達の恋愛結婚に影響されて父親自身も妻に「愛しているのか?」と訊くのは面白い。後半、ユダヤ人達はロシア政府によって土地を奪われるのだが、ロシア兵の描き方も悪者一辺倒ではないので冷静な演出で見やすかった。
 ちなみに原作小説『屋根の上のバイオリン弾き』(ショラム・アレイヘム著)は、映画よりユダヤ教的な思想が強く、娘の結婚に対する心理描写やドラマも少なかったので、映画の方が面白く無宗教の人にもわかりやすいと思った。


4.0『ボーイフレンド』(1971/英)ケン・ラッセル

 家庭におさまること自体は悪くない
 主演女優が怪我をしたので急遽本番に出ることになった舞台助手のツイッギーは、やはり台詞も覚えていなくうまく踊れなくて…というドタバタ喜劇。冒頭で、冴えないツイッギーが片思いしている団員トニーの気を惹こうとする様は可愛いが、すぐに相思相愛のようになるので恋愛の描写はなくなり、笑えないギャグがメインになるのは残念だった。また、途中からトニーが他の女に近づいてイチャつくのでムカつく。ラストでは、ツイッギーはハリウッドでの成功より、故郷英国で恋人と「新居探し」をすること選ぶが、ポジティブに考えれば男を裏切らない女と読める。過激なフェミニストなどはツイッギーのことを家庭におさまることに満足した女として批判しそうだが、別に家庭におさまること自体は悪くない。ツイッギーがハリウッドに行ったところで、もし失敗して身を崩したらあなたは責任が取れるのか?新居探しを選択した彼女は別に間違ってはいないのである。


2.5『夢のチョコレート工場』(1971/米)メル・スチュアート

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 2005年版を見るべき
 全体の3分の1は工場に行く前の話だが、工場に招待されるまでの人々のドキドキ感はしっかり描けている。ただ招待された人間同士に人間関係が生まれるわけでもなく、助け合いや喧嘩をするでもなく淡々と話が進むだけで拍子抜けする。また原作小説(ロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』)でもそうだが、工場主ウィリー・ウォンカの人物像が描けておらず彼の魅力が全然わからない。一方これのリメイク作品『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)はウォンカのバックボーンをしっかり描いていてしっかり面白いのでそちらを見るべきである。


2.0『おしゃれキャット』(1971/米)ウォルフガング・ライザーマン

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 召使いにも遺産を別け与えればいいだけの話
 身寄りのない金持ちのマダムが、自分が死んだら全財産を猫に残す事に決めたため、マダムに忠実に仕えていた召使いが遺産に目がくらんで猫を始末しようとする、という物語だが、話自体がグロテスクで不愉快である。そもそもマダムが召使いにも多少遺産を別け与えれば済む話だろう。キャラクターはそれぞれ面白いのだが、暴力的なギャグばかりで笑う気になれなかった。ちなみに召使いは結局クビになったようだが、マダムはまだ死んでいないわけで、その間誰がマダムの世話をするんだと思った。また新しく召使いを雇うとしても、その召使いにもマダムは遺産を与えないのだろうか。


2.0『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972/伊)フランコ・ゼフィレッリ

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 宗教対立に私は関心がない
 中世イタリアの修道士アッシジのフランチェスコの伝記映画。戦争から帰ってきたフランチェスコキリスト教に目覚めるが、周囲はキチガイになったと思って理解しない。もちろん無神論者の私には共感できず、キリストの像を見て涙を流すフランチェスコの気持ちは理解できない。また、フランチェスコたちは司教と宗教の在り方をめぐって対立するが、宗教自体に無関心な私にとって宗教対立という問題自体がどうでもいい。もちろん、中世は科学が発達していなかったので宗教を心から信じた人の存在は頭では理解できるが、現代でアッシジのフランチェスコと全くと同じことをしてもオカルトにしかならないだろう。また、フランチェスコと彼らの仲間の男たちの信頼関係が美しく描かれて同性愛的に見えるが、女性にしか興味のない私には男同士の群れが美しいとは思わなかった。
 同じくフランチェスコを描いた映画でも、『神の道化師、フランチェスコ』(1950年、ロベルト・ロッセリーニ監督)の方が大袈裟でなくて私は楽しめた。


2.0『ラ・マンチャの男』(1972/米)アーサー・ヒラー

 ゴチャゴチャした失敗作
 牢屋に入れられたセルバンテスと付き人が、自ら騎士ドン・キホーテとサンチョを演じるというメタ的なミュージカルだが、ゴチャゴチャしていて面白くない。セルバンテスの生涯を映画化するのか『ドン・キホーテ』を映画化するのかはっきりするべきである。もっとも、元になったミュージカル『ラ・マンチャの男』も二重構造になっている(芝邦夫『ブロードウェイ・ミュージカル事典』p275)ので、原作から失敗しているのだが。ドン・キホーテはインテリに見えないからいいのに、セルバンテスが物語の要旨や教訓を説明していくので興ざめする。セルバンテスドン・キホーテ、という定式にとらわれすぎているのだろう。さらに、この劇中劇の役を演じている牢獄にいる人間たちのバックボーンも分からないので登場人物が多いだけになっている。加えて、ドン・キホーテの冒険が大幅に省かれているので、苦労を重ねる冒険譚としての良さがほとんどない。死の床に伏すドン・キホーテと売春婦とが再会するシーンも、それまでの過程が省略されているので感動できない。
 伝記『セルバンテス』(カナヴァジオ著)や小説『ドン・キホーテ』を読んだ方が良いだろう。

1.0『キャバレー』(1972/米)ボブ・フォッシー

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 ナチス批判程度で過大評価されている
 ナチスが台頭し始めたドイツが舞台で、英国人学生マイケル・ヨークが部屋を探しに尋ねてくるやいなや、ライザ・ミネリに惚れられるのでまずムカつく。かと思えばライザ・ミネリが浮気して男を裏切るので、女を嫌なように描いていてそこもムカつく。「処女は押し倒すに限る」という劇中の台詞があり、押し倒されて本当に燃え上がる処女が出てきてこれも腹立たしい。ラストでは『スイート・チャリティ』のようにライザ・ミネリの恋はうまくいかないが、わざわざ悲しい終わり方にする意味も分からない。撮影中、フォッシーとライザ・ミネリがコカインを吸引しているのを撮影スタッフは目撃しているが(ウェンディ・リー『ライザ・ミネリ 傷だらけのハリウッド・プリンセス』167p)、ドラッグをやってるからわざと暗い退廃的なオチにしたのだろうか。また、ヌーヴェルヴァーグのような唐突なジャンプカットを用いるなど映像表現に実験的な姿勢を見せているが、だからなんだという話で内容が良くなければダメである。『キャバレー』は批評家に傑作扱いされることがあるが私には良さが分からず、ミュージカルでありながらナチスを批判してる程度のことで過大評価されているんじゃないかと思った。
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1.0『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1973/米)ノーマン・ジュイソン

 私はヒッピーに関心が無い
 キリストの最後の一週間をミュージカル化したものである。当時のヒッピーやカウンター・カルチャーの担い手は自分たちの原点がイエスだと理解していたように(小谷佳楠『アメリカ映画とキリスト教 120年の関係史』p118)、ヒッピーとは基本的に宗教に興味のある人々なので無宗教かつ日本人の私には関心が持てない。劇中でキリストが商店街に突入し「ここは祈りの場所なのに盗人の場所にした」と商品をぶちこわしていくシーンがあるが、ふつうに酷いと思った。ところで、キリストを裏切るユダ役をなぜか黒人がやっているのも奇妙である。


1.0『ロビンフッド』(1973/米)ウォルフガング・ライザーマン

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 ロイヤリストとしてのロビンフッド
 金持ちから金を盗み貧乏人に与える義賊の狐(ロビンフッド)と熊(リトル・ジョン)が主人公だが、王族からは金を盗まないと言っていているので、彼らは王族を崇拝しているようである。確かに彼らの台詞を追うと、「リチャード王万歳」と言っていて、身分制に反対するどころか王を称えているロイヤリスト(英国王党派)であることが分かる。また、ロビンフッドの恋人である狐の姫マリアンは可愛いが、既にお互いに相思相愛となので丁寧な恋愛の描写はなく楽しめない。また不可解なことに、キツネの姫マリアンはライオンの姪であるなど、モデルとなった人間を機械的に動物の造形にしただけで動物である必然性が全然ない。さらに、バトルシーンが多くて長いが、変装で敵を出し抜くというパターンが多くて飽きる。


3.0『ファントム・オブ・パラダイス』(1974/米)ブライアン・デ・パルマ

 片思いの話にすればいいのに
 主人公の作曲家の男は冴えない風貌なのに、ジェシカ・ハーパーと一目惚れしあい相思相愛になるのがムカつく。この映画は『オペラ座の怪人』をモチーフにした悲劇であり、男の片思いという設定でも充分話は進行するのだから、わざわざ相思相愛にする脚本は無駄である。また、作曲家が作った曲はロック版『ファウスト』ということなのだが、『ファウスト』というキリスト教的なテーマをよく理解していない私にとって世界観を楽しめなかった。
 また、ジェシカ・ハーパーは美人で歌声も良いが、使われているロック音楽は全体的にダサいと思った。
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2.0『ザッツ・エンターテインメント』(1974/米)ジャック・ヘイリー・jr.

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 マニア向け
 MGM社がこれまで制作したミュージカルの名場面をつなぎ合わせたもので、マニア向け。


1.5『メイム』(1974/米)ジーン・サックス

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 原作も映画も酷い
 父親が死に身寄りがメイム叔母さんしかいなくなった少年パトリックが、メイムと生活するようになるが、まずメイムやその友人の女優が年を取り過ぎていて美人ではないのが気になる。原作小説ではメイムは35~40歳の設定なのに(パトリック・デニス『メイムおばさん』p104)、メイム役のルシル・ボールは63歳である(70過ぎても美人な女優はもちろん居るがルシル・ボールはそうは思えない)。のちにお金に困ったメイムが女優として仕事をするエピソードが出てくるが、綺麗どころとして舞台に出ているのでおかしい。また、メイムと金持ちの男ボーレガードが一目惚れして相思相愛になりすぐ結婚するが、とくに情緒もなく面白くない。一方でパトリックはメイムと暮らし始めたかと思うとすぐ管財人に引き取られて彼女と離ればなれになり中盤は全く出てこないので、メイムとパトリックが心を通わすシーンがなく脚本に問題がある。二人の間に思い出がそもそも無いから、終盤で成長したパトリックとメイムが再開しても全然劇的にならない。
 もっとも原作ではメイムとパトリックはずっと一緒に暮らしているものの、面白いエピソードは全くないので原作もダメである。


0.5『星の王子さま』(1974/米・英)スタンリー・ドーネン

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 現実逃避かつ女性嫌悪
 大人を批判して子供心を賛美する現実逃避な内容だが、大人は大人で正しいのである。例えば劇中では変な軍人がバカにされているが、戯画化された軍人では「軍隊=悪」という一般論は引き出せない。北朝鮮やISの例を出すまでもなく、現実問題として軍隊は嫌でも必要である。また、女の精が宿っている花は、王子に色々要求するなど我が儘な存在としてだけ描かれていてつまらないし、そもそも主要キャラに女性が出てこないこと自体に女性嫌悪を感じる。
 原作はサン=テグジュペリの小説『星の王子さま』で、こちらも私にとっては同様の理由でつまらない。


5.0『トミー』(1975/英)ケン・ラッセル

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 ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)よりは楽しめる
 ロックバンド、ザ・フーの発表したアルバム「トミー」の映画化で、主人公の障害者トミーが成長していく物語として展開するので、『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)のようなエキセントリックなだけの映画よりも楽しめる。ただ、最終的にはイエス・キリストを無条件で肯定する内容になり支持できない。トミーは「あなたに従うだけで興奮する」と歌うが、そんなものはただの盲信であり、人間なら自分で考えて行動して興奮したほうがいい。


2.5『ナッシュビル』(1975/米)ロバート・アルトマン

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 登場人物の多い失敗作
 登場人物が序盤から出まくるので人間ドラマが薄れコメディみたいになっているが、別に笑えないので失敗作である。私が大学生の頃『ナッシュビル』を見たときは、主人公がいなくて登場人物が多いこの映画が何となく凄いと思ったが、しかしよく見ると各プロットや人間模様がそれぞれがうまく絡んでいるとは全く思えない。同じく登場人物の多い『フェーム』(1980年)よりは若干マシだが、ロバート・アルトマン監督でさえも、主人公が多い映画を撮るとこのくらいにしかならないと考えた方が無難だろう。またラストで、コンサートで歌う歌手たちに若い男が発砲し、バーバラという女性歌手が大怪我を負い搬送されるのが可哀想であるが、にもかかわらず別の歌手が歌を再開し、「私は気にしないわ 何も気にしない」「心安らかに暮らせないなら人生は無意味よ」と今の事件を無かったこととして客に受け取るように迫っており、被害者女性(バーバラ)からしたらとんでもないことを言っているのだからこのメッセージは理解できない。
 ちなみに発砲した若い男も序盤から出てくるキャラクターで、当初は普通の優しそうな青年だったのに、いつこんなテロを決意するに至ったのかというプロセスや心理描写もまったくない。「優しそうな人が社会によって犯罪者に作り変えられる」「犯罪は犯罪者ではなく社会に責任がある」という言い分は左翼が言いがちだが、実際に凶悪犯罪を起こすのは宅間守のように幼少からヤバい傾向があると私は思う。
 ところで、2人の聴覚障害児を持つ女(リリー・トムリン)がベッドで若い男の脇毛を撫でているのはエロかった。


2.5『ファニー・レディ』(1975/米)ハーバート・ロス

 前作の繰り返し
 『ファニー・ガール』(1969年)の続編。前半のバーブラ・ストライサンドジェームズ・カーンのちぐはぐなやりとりは面白いが、序盤で相手のことを「好きだ」と歌いあい相思相愛であることが明示されるので二人の恋の行方をドキドキして見たかった私はガッカリした。また、カーンがバーブラに無理矢理キスして良い感じになるのも、バーブラの気丈なキャラにも合わない。結局、バーブラの恋愛はうまくいかなり、前作の繰り返しみたいになるだけで残念だった。
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0.5『ロッキー・ホラー・ショー』(1975/英)ジム・シャーマン

 同性愛を扱っているからと過大評価してはいけない
 主人公のカップルは既に相思相愛として登場しており、恋愛ものとして楽しめない。またゲイの人が魅力的ではないし、かと思えばゲイでありながら処女と無理矢理セックスするなど酷い。同性愛を扱っているからと言って作品を過大評価することは絶対やめるべきである。もし同性愛を過大評価するとしたら、異性愛者差別である。他にも、ロック音楽もかっこよくないし、ギャグとしても面白くないし、語り部のじいさんがナレーションをいれるアイデアも効果的ではなく邪魔である。一部の映画評論家みたいな人は「このシーンは別の映画のオマージュだ」などと誉めるのだろうが、それがオマージュだったところで酷い物は酷いということに向き合った方がいい。また、「酷いところが逆に良い」というような感想を言う人がたまに居るが、そんな屁理屈を捏ね出すと全てが無意味になるのでやめたほうがいい。


2.0『ザッツ・エンターテイメント2』(1976/米)ジャック・ヘイリー・jr.、ジーン・ケリー

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 マニア向け
 『ザッツ・エンターテイメント』(1974年)の続編で、マニア向け。


1.0『青い鳥』(1976/米)ジョージ・キューカー

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 原作共に良さが分からない
 予算が無いのか知らないが、76年のわりに映像表現がダサい。原作同様、「青い鳥を探す冒険に出たら実は青い鳥は家の中にいた」という家庭を賛美する話で、おうちが一番という『オズの魔法使』のメッセージと一緒なのだが、幸せな家庭ならともかく、世の中には貧困にあえぐ家庭やDVや虐待のある家庭があって、そんな家に対しても「おうちが一番」と言えるのかと疑問である。良さが分からなかった。


0.5『スター誕生』(1976/米)フランク・ピアソン

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 1954年版を下回る
 『スタア誕生』(1954年)のリメイクで、ジャズ歌手がロック歌手に変わっただけだが、ロックスターのクリス・クリストファーソンはコカインに溺れているなど酒以上に感情移入できない。また、客前でバイクを暴走させたりヘリコプターに発砲するなどスターなら何でもやっていいという考え方に全く私は惹かれない。クリストファーソンは勝手に死んで相手役のバーブラ・ストライサンドは悲しむが、自業自得にしか思えないし、人々が悲しみに暮れる理由も分からなかった。1954年版も私は好きではないがそれを下回っている。
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0.5『ダウンタウン物語』(1976/英)アラン・パーカー

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 発想が気持ち悪い
 まず、マフィアの抗争の話を、全キャスト子役に演じさせるという発想が気持ち悪い。よくアイデアは先にやった者勝ちというが間違いだと思う。作品で重要なのは内容である。まったく、悪ぶって格好付けていて女にモテモテのガキを、ナレーターが「いい男だ」と評するなどどうかしている。反ギャング的なメッセージもないので、観客に対してギャングをかわいらしく身近に感じさせようとする意図があるとしか思えない。この映画がヒットして得をするのは反社会勢力である。ちなみに子役らは銃弾の代わりにパイを投げあうのだが、男児を白いもの(=精液)まみれにしたいという男色映画に見えるので、男に一切興味がない私にはそこも気持ち悪く苦痛であった。


7.5『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977/米)ジョン・バダム

 人間を描こうとしていて面白い
 ジョン・トラボルタ主演の有名な映画だが、ダンスに狂う主人公と家族との軋轢がちゃんと描かれていて面白かった。また、トラボルタは自分も女も避妊具を持ってなかったのでセックスを中断するなど、そこまで不良ではないようだから良かった。ただ、ディスコに通う人々に私はそんなに感情移入できないのでディスコの雰囲気はイマイチ楽しめなかった。
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8.0『日本人のへそ』(1977/日)須川栄三

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 日本のミュージカル映画の中では面白い
 原作(「日本人のへそ」井上ひさし著)を忠実に映画化していて、かつ歌も歌詞も面白かったので日本のミュージカルとしてはクオリティが高い。同性愛の男や天皇崇拝家の男が「女は嫌いですよ」と言うなど、同性愛者の持つ女性嫌悪が明快に描かれていて政治的な部分も個人的に楽しめた。ただ、主人公の緑魔子が年齢以上に老けて見えて痛々しいのと、どんでん返しをさらにどんでん返しにする展開がそんなに面白いと思えなかった。


4.0『ニューヨーク・ニューヨーク』(1977/米)マーティン・スコセッシ

 長いのにドラマがなく退屈
 序盤のしつこく口説くサックス奏者のロバート・デニーロと、それをあしらう歌手のライザ・ミネリは見ていて面白かった。その後二人はタッグを組んでツアーを共にするが、妊娠したミネリが自分の体を過剰に心配してツアーを辞める、という展開は強引で共感できなかった。ミネリが息子を出産したあと結局二人は別れ、ミネリは歌手として、デニーロはレコード会社の社員としてそれぞれ成功する。だがラストで両者が数年ぶりに再会した際、とくに対立や葛藤もなく物足りないし、バッドエンドを美しく描こうとして嘘くさい。デニーロと息子が再会したら、もっとぎこちなくなるのではないか。映画が160分以上もあるのにドラマがなく退屈であった。
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2.0『愛と喝采の日々』(1977/米)ハーバート・ロス

 慎ましい女がすぐセックスするとは思えない
 登場人物の家庭環境などを丁寧に描こうとする姿勢は評価できる。しかし、慎ましい少女のようだったバレエ団に所属するエミリアが、すぐにダンサーのロシア人の男と相思相愛になりセックスをするのはおかしい。しかも「ピル飲んでるから大丈夫」と嬉しそうに母(シャーリー・マクレーン)に報告しているのも奇怪だし、コンドームを付けろとも思った。ところで、このロシア人は浮気をしていてエミリアはショックを受けるので、二人の中は終わるのかと思いきや、一緒に踊るうちにまた気持ちを取り戻す、という展開にも納得がいかない。どうしてまたヨリが戻るのかという心の道筋をちゃんと描写すべきである。
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1.0『グリース』(1977/米)ランダル・クレイザー

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 圧倒的に『サタデー・ナイト・フィーバー』の方がいい
 不良グループの日常やいさかいに私は一切興味が無い。また、清楚だったオリビアニュートン・ジョンがジョン・トラボルタと付き合ううちに不良少女化していくのはしょうもないと思った。歌や振り付けもダサいし、圧倒的に『サタデー・ナイト・フィーバー』の方が面白かった。
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1.5『ウィズ』(1978/米)シドニー・ルメット

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 24歳の女性らしくない
 『オズの魔法使』(1939年)をオール黒人キャストで製作したものだが、オール黒人キャストの映画は『ハレルヤ』(1929年)、『キャビン・イン・ザ・スカイ』(1943年)と昔からあるので真新しくない。また、主演のダイアナ・ロスは24歳という設定だが、言動が少女っぽくて少し気味が悪い。原作同様「家に帰りたい」というオチで終わっているが、大人の女性と少女を同一視しているというか、24歳という年齢を考慮した上で脚本を作らなければダメだろう。ダイアナ・ロスマイケル・ジャクソンの歌はいいけど、だったらサントラやCDを聴けば良い。


0.5『ローズ』(1979/米)マーク・ライデル

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 格好良くない
 ジャニス・ジョプリンをモデルにした女性ロック歌手ローズが主人公。冒頭から大酒を飲むなど彼女が「スターの苦悩」を抱えていることが描かれるが、私にはそんな贅沢な悩みを経験したことはないし、幼少期や売れない頃のシーンが無いので感情移入はできないために悲しくない。ローズは「恋をしたい」というが、すぐに男と相思相愛になって一気肉体関係になるのでこれも私には楽しくない。あと例によって彼女らは「ドラッグ!セックス!ロックンロール」の掛け声をあげるが、非合法のドラッグは反社会性力の儲けになる訳だから全く格好良くない。


0.5『オール・ザット・ジャズ』(1979/米)ボブ・フォッシー

 やけくそで作った映画
 主人公が覚醒剤を飲むシーンからはじまる。全編通して退廃的で、生きる活力が無く疲れる。また、主人公は女と遊ぶくせに、女が浮気するのは嫌という全くおかしい考えの人間で、何も共感できなかった。『オール・ザット・ジャズ』はボブ・フォッシーの遺作であり、彼は自分の死期を悟っていたのか、自分が理解できれば良いという独りよがりな内容で、やけくそで作ったんだと思う。もちろんそのやけくそは良い方に転がっていない。自らの映画作品『レニー・ブルース』からの引用などもあるが、引用があるからといって面白いわけではない。


0.5『ヘアー』(1979/米)ミロス・フォアマン

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 ヒッピーに共感できない
 何度も言っているが、無神論者の日本人の私には独自の信仰を持つヒッピーの言い分は共感できない。ヒッピーらが徴兵を控えた若者を批判するシーンが多いが、現代ではもはや軍隊は必要だと言わざるを得ないのだからわざわざ馬鹿にする必要は無い。また、ヒッピーのリーダーのバーガーはむしろ軍人よりもマッチョ野郎で、無理に女に手を出すところを観るのは不快だし、しかも彼は議論になったとき言葉に詰まると暴力を振るうので最低である。


8.5『歌え!ロレッタ 愛のために』(1980/米)マイケル・アプテッド

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 魅力的な主人公
 カントリー歌手ロレッタ・リン(役;シシー・スペイシク)の自伝小説を元にした映画らしく、ロレッタの思春期からの家庭環境や生活を丁寧に追っている。ロレッタが男に惚れる側だが、シシー・スペイシクがそんなに美人ではないので男に嫉妬できず応援できる(つくづく私は人間の容姿は重要だと感じる)。10代の頃早婚するもロレッタがセックスに怯える姿などはリアルだし、普通の女性が徐々にスターとなり精神が追い詰められていくところに共感できた。苦楽を共にする夫婦関係もしっかり描かれているし、ロレッタが愛を裏切ることもないので女性蔑視もなく楽しめた。


7.0『ポパイ』(1980/米)ロバート・アルトマン

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 後半ダレる
 アニメ「ポパイ」の実写映画。セットが凝っているし、オリーブ役のシェリー・デュヴァルもはまっていて可愛い。またポパイの恋心が繊細に描かれていて楽しいし、ポパイと父親との関係など人間性への言及もちゃんとなされている。ただ、町で嫌われている役人を海に落としたくらいで余所者のポパイが人々に祝福されるのは物足りなく、役人ともっと議論するシーンが必要である。また、後半は喧嘩シーンの連続でダレる。


2.0『フェーム』(1980/米)アラン・パーカー

 前衛アート批判に見える箇所は面白い
 公立芸能学校に型破りな生徒達が入学してくる、という話だが、主人公がおらず誰のキャラも立っていないのに複数の人物を同時進行的に見るのは辛い。手法を優先して面白さを損なわせているだけである。文字の読めない黒人男子学生が出てくるが、授業態度が悪すぎるので感情移入も出来ない。また、劇中で『ロッキー・ホラー・ショー』を上映するが私にはこの映画の良さが全く分からないので、英国人監督(アラン・パーカー)が好きな英国映画を引用しているだけの自慰なのかと思った。
 一方で、映画を撮影するという男が、ゴダールだのなんだの知識をひけらかしながら黒人女性(アイリーン・キャラ)に服を脱ぐよう強要し、嫌がっているのに裸にさせるのは前衛アートへの批判として読めてそこだけはとても面白かった。ただこの映画自体が前衛映画のような骨組みになってているので説得力は欠けているが。


1.0『ブルース・ブラザース』(1980/米)ジョン・ランディス

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 宗教テロリストの思考
 強盗で3年服役していたジョン・ベルーシは牧師(ジェームズ・ブラウン)の歌を聴いて「バンドを作る」という啓示を受けたらしく、「俺たちは神の使命を帯びてる」と宣言するなど宗教色が強い。一方でジョン・べルーシは違反を累計150回以上おこして免停中なのに車を運転し、警察を巻くために店の中や人混みの中もかまわず車をぶっ飛ばすのだが、神の使命を帯びていれば何をしてもいいという考えは完全にオカルトや宗教テロリストだろう。ネオナチやヒトラー批判ネタも出てくるが、何となく政治を茶化しているだけで映画に必要な要素だとは思えない。また、アレサ・フランクリンレイ・チャールズキャブ・キャロウェイなど大物ミュージシャンが歌うが、これも映画の面白さとは別である。


1.0『ザナドゥ』(1980/米)ロバート・グリーンウォルド

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 流行を取り入れただけ
 不思議な女神オリビア・ニュートン=ジョンと遭遇した画家志望の若者が彼女を探し求めるファンタジーだが、オリビアがなぜかローラースケートを履いたりするなど格好がダサいし曲もいいとは思わなかった。また、オリビアの方も若者に恋をしていると言うが、結局一目惚れの相思相愛に過ぎない。ローラースケートなど流行を取り入れているだけで、どこを面白いと思えばいいのか分からない。


1.0『愛と哀しみのボレロ』(1981/仏)クロード・ルルーシュ

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 何となくの3時間
 主人公を決めず、ロシア・パリ・ベルリン・ニューヨークでのシーンが錯綜し、わざと話をややこしくしている。それでいて男女が唐突に結婚したりするから、時間をかけるべきところにかけていない。何となく戦争を絡めただけの大げさな話を3時間見るのは苦痛である。


0.5『ショック・トリートメント』(1981/米)ジム・シャーマン

 前衛は色褪せる
 妻のジェシカ・ハーパーが嫌な女役で、夫が可哀想に見えるという女性蔑視の構図になっていて観ていて不愉快である。夫婦生活に不満があるとジェシカ・ハーパーは言うが、具体的にどういう生活だったのか描写されないので1秒も共感できない。物語も何も解決しないまま終わっている。この作品に限らずかつて「前衛」とか「カルト作品」とか持てはやされた作品は結局色褪せるということが分かる。
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2.0『アニー』(1982/米)ジョン・ヒューストン

 冒頭だけ面白い
 孤児のアニーは億万長者の議員の秘書に目をかけられて引き取られるが、秘書がアニーに目をかけたのはただの偶然で、別の孤児でもよかったのであり必然性が全くない。なぜたくさん孤児がいる中でアニーなのかという理由付けがあれば面白いのにと思った。また、議員の家にやってきた時、既に家にいた上流階級の人々がなぜか皆アニーに優しいのが偽善的で気味が悪い。しつけをされていないアニーを上流階級の人々が見たら、「こんな子供を一体どこから連れてきたんだ」と蔑みそうなものである。強面の富豪議員も最初はアニーに無関心だったが、いつのまにか彼女のわがままを許していて物語が薄っぺらい。また、議員が巨大映画館の席を全部買い占めてアニーを映画に連れてってくれる際も、彼女は無邪気に楽しむだけだけだが、孤児の出身ならそういう金持ちのお金の使い方にズレや違和感や怒りを感じないのだろうかと疑問に思った。加えて、魔法が使える用心棒プンジャブというキャラが出てくるが必要なキャラだとは全く思えない。
 冒頭のアニーが捨て犬を助けるシーンだけ面白かったが、その後は別に犬も活躍しないしガッカリした。これのリメイク映画『ANNIE/アニー』(2014年)の方が面白い。


1.5『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982/米)フランシス・フォード・コッポラ

 興行的な失敗も納得
 最初からカップルとして登場する男女が喧嘩をするが、お互いの人間性が分からないので喧嘩をされてもついていけない。男がセックスしたあと「昔は足の毛を剃ってたのに」と女に文句を言うが、私は女性の体毛をまったく気にしない(というか無いよりあるほうが好き)なので共感できなかった。しかも男女は別れた後、すぐそれぞれ別の異性と一目惚れをして相思相愛になるから馬鹿馬鹿しい。また、全体的に「女が男の元から去って行った」と女が裏切り者で男が可哀想に描かれている調子なのも嫌である。興行的に失敗した映画のようだがそりゃそうだろう。


1.5『ビクター/ビクトリア』(1982/米)ブレイク・エドワーズ

 内面を描けていない
 ジュリー・アンドリュースがゲイの芸人ロバート・プレストンと組み、「女装した男性」を演じて一発当てようとする、という話だが今一つピンとこない。また当初ジュリーはちょっと抜けたバカっぽいキャラだったのに、男装した瞬間にジェンダー論のようなものを滔々と喋れるインテリになっていておかしく思った。またジュリーは仲が悪そうだったはずのクラブ経営者といつの間にか恋に落ちている理由も分からない。ジュリーは彼のことを「男性優先主義者」と怒っていたはずなのに、クラブで喧嘩が起こった混乱で、経営者とジュリーがいきなりキスをし、そのままベッドを共にしているが、彼女の心は彼に対してどう折り合いをつけたのか語るのをこの映画はサボっている。オチではゲイの芸人プレストンがショーでクオリティの低い女装をして客から爆笑をとるが、普段は男装をしている同性愛の男が仕事とはいえ女装して笑いものになるのは傷つくと思うのに(例えば同性愛者の作家ジャン・ジュネは『泥棒日記』の中で、自分が女装して周囲に笑われ傷ついたことを書いている)、そういう内面に迫らずになんとなくハッピーエンドで終えているのはおかしい。
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0.5『パイレーツ・ムービー』(1982/濠)ケン・アナキン

 強盗殺人を肯定するバカ映画
 大人しそうな主人公の女の子マーベルは、海賊に育てられ海賊として生きてきたことがコンプレックスの青年フレデリックといきなり相思相愛になりキスをする、という酷い展開から始まる。しかもマーベルは彼に「(海賊って)船を襲って人を殺してお宝を奪う連中?カッコいいじゃん」と強盗殺人行為を美化し肯定する発言をするので益々共感できない。しかも、フレデリックは当初海賊だった過去が嫌だという設定のはずなのに、マーベルに「海賊がカッコいい」と言われても気分を害さないどころか自慢げにしており腹が立った。二人は敵の海賊達と対立するが、「敵と仲良くなれば良い」という意味不明の歌が流れ、海賊達の悪事は不問に付されるという最低の着地で終わる。海賊のホモソーシャル女性嫌悪的な世界を低いクオリティで肯定したバカ映画である。


8.0『フラッシュダンス』(1983/米)エイドリアン・ライン

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 恋愛映画として楽しめる
 製鉄所の若き社長マイケル・ヌーリーが、社員でダンサーを目指している女ジェニファー・ビールスをなかなか口説き落とせない感じが面白い。音楽やダンスは特別私の好みではないが、恋愛描写や物語はちゃんとしていて楽しめた。ところでジェニファーはなぜか度々教会に行って「懺悔を怠りました」と泣くが、なぜ彼女は心神深いのかよく分からなかった。彼女の家族の影響なのか、それとも土地柄なのかは知らないが、突然のキリスト教的なシーンについていけずバックボーンを描いてほしかった。


1.0『ル・バル』(1983/仏・伊・アルジェリア)エットーレ・スコラ

(イメージ無し)
 今見ると面白くない
 私が大学生の頃見たときは実験的で凄いと思ったが、特定の主人公もいなく台詞もなく実験性が先行しているだけで、人間が描かれておらず今見返すと面白くなかった。途中で戦争を絡めているのだが、「とりあえず何とか深い映画にしよう」という魂胆だけ見えて寒くなった。黒髪でボブの色っぽい女性が居るなあ、という所以外は私には見るところがなかった。


1.5『上海バンスキング』(1984/日)深作欣二

あの頃映画 「上海バンスキング」 [DVD]

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 左翼が右翼を台頭させている
 原作同様(『上海バンスキング』斉藤憐著)、戦時中の上海を舞台に、日本から逃れてきた音楽家がヤクザの世話になってジャズを演奏する話である。しかしヤクザの店で働くようになった松坂慶子が「上海は私をアヘンのように夢中にさせた」と言うなど、楽観的すぎてついていけない。さらに松坂慶子の夫でクラリネット奏者で風間杜夫はドラッグにより廃人になるが、勝手に廃人になられても全く共感できない。また、日本兵上海市民を虐殺していく描写があるなど概して左翼的な目線で物語は進む。いや、もちろん日本は中国を植民地にしたのだが、それなら先に中国を植民地化した英国などの欧米も批判せねばフェアではなく、日本だけ批判するのは非生産的な左翼の政治観にとどまる(なぜ非生産的なのかというと、日本が謝ったところで中国との関係が好転するとは思えないからである)。別の国が謝らないのに日本だけ謝るのは危険であり、かえってそのことに反発する右翼が「自虐史観だ」と台頭することになる。左翼が右翼を台頭させているのである。左翼も右翼も私は嫌いである。


1.0『コットンクラブ』(1984/米)フランシス・フォード・コッポラ

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 凶悪殺人者が元々いいやつだとは思えない
 禁酒法がしかれた1920年代のニューヨークが舞台で、ミュージシャンのリチャード・ギアはマフィアのボスの命を助けたことからかえってマフィアの抗争に巻き込まれる。しかし、ジャズやマフィアに興味がない私にはそもそも引き込まれなかった。もちろん一般市民が巻き添えに殺されるなど、この映画がギャングに対して諸手を挙げて賛美しているわけではないのは分かるが、一方でコットンクラブ経営者であるマフィアのマドゥンのことは憎み切れない描き方をするなどマフィアを全否定しないようにしている。ギアと女の恋も、相思相愛の一目惚れなので恋愛としても面白くなかった。また、ギアの弟ニコラス・ケイジはマフィアになり、抗争に深入りして市民を巻き込んだ殺人を犯す。ギアは、元々いいやつだったのに「お前はどこで間違った?」と悲観するが、しかしそんな凶悪な殺人を犯す人間が元々いいやつだったとは思えない。じゃあギアがケイジの「元々いいやつ」エピソードを語るのかと思いきやそれもないので腹が立つ。人間は生まれたときは善人だが社会によって悪く「させられる」、つまり社会の方に責任があるという左翼的な政治思想を雑に表明しているに過ぎない。


0.5『フット・ルース』(1984/米)ハーバート・ロス

フットルース [DVD]

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 バカ映画
 「避妊しなかったら赤ちゃんができちゃった」、「ちょっとまってその男私の彼氏の彼氏なんだけど」、というどうしようもない会話が展開されていくバカ映画。ヒロインのロリ・シンガーも、シンナをー吸って車に曲乗りして他の車に迷惑をかけたり、電車に轢かれようと線路に立ったりするなど愚か者で何も共感しなかった。一方で、青年たちは町の「ダンス禁止令」を撤廃するために、牧師に「聖書で人々が踊ったことが書かれている」と主張していく。つまりキリスト教を用いてキリスト教を批判するという内容だが、そもそも宗教に関心のない日本人の私には意味のない議論をしているとしか思えなかった。


1.0『妖精フローレンス』(1985/日)波多正美

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 『ファンタジア』のオマージュの失敗
 クラシック音楽に合わせて絵を動かすのは『ファンタジア』(1940年)のオマージュだろうが、映像表現がメインで物語が面白くない。しかも致命的なことに、映像表現がいいと言うわけでもない。また、全然恋愛描写がないのに主人公の音楽科の学生マイケルと妖精がお互いを「好きよ」「好きだ」と言い合っていて呆気にとられた。


1.0『星くず兄弟の伝説』(1985/日)手塚眞

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 笑えなかった
 何となく当時のロックや若者の空気感を持ち出して馬鹿馬鹿しいことをやっているだけで、ギャグも笑えなかった。ギャングとのカーチェイスも粗悪なファンタジーのようになっていて、やるよりやらない方がいい。しかも最終的にギャングがどうなったのか、罰せられたのかどうかすら不明なまま終わる。戸川純の妹・戸川京子のとぼけた感じはかわいいがそれだけか。


0.5『コーラスライン』(1985/米)リチャード・アッテンボロー

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 退屈なエセドキュメンタリー
 舞台のオーディションに来た人達全員が主人公なので人間の内面に深入りすることはなく、なぜオーディションに来たのかという動機すらも分からないので登場人物に感情移入をして見ることはできない。選考で絞られた男女が歌にのせて自己紹介するが、「おっぱいとお尻が私の人生を変えてくれた」程度のことしか言っておらず失笑ものである。偽のドキュメンタリーを延々と見せられているだけで退屈であった。


8.5『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(1986/米)フランク・オズ

リトルショップ・オブ・ホラーズ 特別版 [DVD]

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 同名映画『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(1960年)のミュージカル化だが、1986年版のほうが恋愛描写が丁寧だし脇役も物語にうまく絡んできておりとても良かった。
 モテず冴えない花屋の店員リック・モラニスが、同僚のエレン・グリーンに心を寄せるが報われない感じがまず面白い。エレンには気が狂れた歯科医の彼氏がいるが、その歯科医の人間性もちゃんと描かれいるので、エレンの悲哀に説得力がある。ただモラニスが珍しい花を発見したことでメディアに登場すると、エレンが彼を憧れの存在と見なすのは急だしよく分からなかった。エレンの内面を丁寧に描かないと、「エレンも実は昔からモラニスに惚れていた」というような単なる相思相愛の映画に過ぎなくなってしまうからである。
 ところでこの珍しい花は人食い植物だが、巨大化して暴走する植物とモラニスとの対決のシーンで、送電線で感電させて殺すだけなのはあっけなく物足りなかった。


1.0『ビギナーズ』(1986/英)ジュリアン・テンプル

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 反抗的な若者の美化
 1958年の英国の街ソーホーが舞台だが、無理に当時の黒人問題などを絡めていてつまらない。また、ソーホーでは「階級や所得の差は消えて男も女も白も黒も黄色もゲイもストレートも平等だった」と主人公は言うが、そんなことはありえない。当時の社会を美化しているだけで、この映画はアートやロックを扱っていながらむしろ反動的ではないか。さらに、メインのカップルの恋愛は、女の方から愛を裏切るという女性蔑視だし、若者たちが社会に対して反抗的なイタズラや意味のない嫌がらせをすることを「良いこと」として描いており共感できない。駆け出しのカメラマンである主人公が芸術とお金の間で葛藤するが、それも私にはどうでもよくて、芸術は金にならないものに決まっているのだから金が欲しいなら仕事をすればいいだろうとしか思えない。
 シャーデーが歌うところは個人的に好きだが、映画としての出来とは関係ない。


3.0『ラ・バンバ』(1987/米)ルイス・ヴァルデス

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 早死にしたことによる過大評価
 飛行機事故により17歳で死んだロック歌手リッチー・ヴァレンスの伝記映画。リッチーは学校で女の子と知り合うが、彼女の家柄が良いために彼女の父親が彼のライブに行くなと言ったりするなど階級への意識があり良かった。一方でリッチーには刑務所帰りの不良の兄がいて、リッチーの前の彼女の処女を奪ったり妊娠させた過去があり酷く、またバイクに乗って格好つけたりするが全然魅力的とは思えなかった。また、リッチーは飛行機が爆発する悪夢を何度も見るが、彼が死ぬオチは分かっているわけでサスペンス効果は無く鬱陶しかった。全体的に、映画にするほどの人生か、と思った。どの芸術の分野にも早死にすると過大評価される人がいるが、リッチー・ヴァレンスもそういう中の一人ではないか。
 ところで、母親役のロザンナ・デ・ソートは美人で見とれた。


1.0『ダーティ・ダンシング』(1987/米)エミール・アルドリーノ

 女たらしが観る映画
 人々が腰振りダンスをずっと踊っているだけで退屈である。主人公の少女(ジェニファー・グレイ)は男とセックスをして妊娠し、中絶するかどうかという問題が出てくるが、どうして最初から避妊をしないのか意味が分からない。相手の男も、「日に3,4人も(女が)俺に部屋の鍵を渡す」と嘯くなど私には何も共感できない。女たらし向けの映画である。


4.5『スクール・デイズ』(1988/米)スパイク・リー

 黒人への自己批判は面白いが結局オカルトになった
 スクール・デイズ』は黒人監督スパイク・リーの作品で、黒人学生が白人文化に憧れる気持ちと、白人を認めたくない気持ちとの間に揺れる様子を描く。オール黒人キャストのミュージカルよりは面白いが、ただあくまで「黒人」が問題であり、マイノリティ全般がテーマではないのに注意すべきである。例えばアジア系の人々に対する差別問題には全く触れられない。
 眼鏡のモテない黒人学生(スパイク・リー自身が演じている)が童貞を卒業するために女を色々当たるがうまくいかないのは面白い。また、黒人運動をしている主人公(ラリー・フィッシュバーン)の恋人が、「あなたは色の薄い黒人を差別している」「私の肌が濃い黒だから私とつき合っているんでしょ。黒人解放運動家の体面を保つために」と鋭い批判をするのも面白いし、黒人運動より就職を気にする学生たちの言い分もあいまって、議論が深まっていると感じた。
 ただ、この映画は主人公たちが「友愛会」というカルト宗教的なグループと対立するのが物語の軸であるはずなのに、最後に何となく主人公たちと友愛会が喧嘩をやめて融和するのは気味が悪い。寛容の精神や博愛の精神が問題なのは、明らかに間違った人々を許してしまうことである。カルト宗教と融和できるのは、結局のところカルト宗教的な人間なのである。部下に自分のことを「全能の男」と言わせていた友愛会のリーダーは絶対反省させなければいけないのに、そういうシーンは全くない。黒人に対する自己批判は良かったのに、結局オカルト映画に着地してしまい残念だった。


1.5『想い出のマルセイユ』(1988/仏)ジャック・ドゥミ

(イメージ無し)
 昔モテたオヤジに共感できない
 若い娘マチルダ・メイが、かなり年取ったイヴ・モンタンの大ファンだという設定にまず無理があるように思う。オヤジの欲望を映像化しているだけで、私には全然共感できない。また、老け込んでるイヴ・モンタンがミュージカル公演の海外ツアーをするという展開も信じられない。この映画は、今までのミュージカル映画の古典をフランス人の目からふり返るようといったマニア向けのもので、一般の人に訴えかける要素がない。『シェルブール』といい『ロシュフォール』といい『ロバと王女』といい、ジャック・ドゥミが監督したミュージカル映画はどれも私には合わないことが分かった。
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1.0『ムーン・ウォーカー』(1988/米)コリン・チルバース、ジェリー・クレイマー

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 何も考えていない
 序盤にマイケル・ジャクソンのドキュメンタリーが流れるかと思えば、急にアニメーションのキャラクターがマイケルを追いかけるシーンになるなど何も考えていない構成である。間違っても、荒唐無稽なところが逆に面白いという訳ではない。マイケルのレコードを聴けばいい。


3.0『リトル・マーメイド』(1989/米)ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

リトル・マーメイド スペシャル・エディション [DVD]

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 アリエル自体はかわいいが、序盤ですぐ王子はアリエルに惚れられるので恋愛描写は物足りない。私は基本、簡単に美女に惚れられる男にムカつくので、二人にはずっと共感できなかった。アリエルの声を盗んで海の魔女が王子を誘惑するという展開は面白いが、その後の戦闘シーンは凡庸であった。
 ところで、海の魔女アースラは悪いように描かれるが、実は王子と結婚するための足を与えてくれるキッカケをくれるから全然いいやつである。


0.5『三文オペラ』(1989/米)メナハム・ゴーラン

(イメージ無し)
 原作小説を再現しているだけで、しかもすでに映画にもなっているのにわざわざリメイクした理由が分からない。ブレヒトの原作戯曲が面白くないのだから、いくら舞台や美術を作りこんでも「はあ、頑張りましたね」としか思えない。


参考文献

新井潤美『階級にとりつかれた人びと』中公新書、2001年
新井潤美『不機嫌なメアリー・ポピンズ イギリス小説と映画から読む「階級」』平凡社新書、2005年
・小谷佳楠『アメリカ映画とキリスト教 120年の関係史』キリスト新聞社、2016年
・芝邦夫『ブロードウェイ・ミュージカル事典』劇書房、1984
スラヴォイ・ジジェク『暴力 6つの斜めからの省察中山徹訳、青土社、2010年
瀬川裕司『「サウンド・オブ・ミュージック」の秘密』平凡社新書、2014年
・パトリック・デニス『メイムおばさん』上田公子訳、角川文庫、1976年
・チャールズ・ハイアム『オードリー・ヘップバーン 映画に燃えた華麗な人生』柴田京子訳、近代映画社、1986年
・萩尾瞳他『プロが選んだ初めてのミュージカル映画』近代映画社、2008年
・ウェンディ・リー『ライザ・ミネリ 傷だらけのハリウッド・プリンセス』蒲田耕二訳、音楽之友社、1998年