『イントレランス』(1916)から『リリーのすべて』(2016)まで 2017年に観た映画
102本、年代順。
点数(10点満点)『映画タイトル』(制作年/制作国)監督名
(ほぼ全てネタバレをしているのでご了承ください。)
- 1.5『イントレランス』(1916/米)D・W・グリフィス
- 6.0『ナポレオン』(1927/仏)アベル・ガンス
- 6.0『下宿人』(1927/英)アルフレッド・ヒッチコック
- 7.0『マタ・ハリ』(1931/米)ジョージ・フィッツモーリス
- 4.0『若草物語』(1933/米)ジョージ・キューカー
- 5.0『孔雀夫人』(1936/米)ウィリアム・ワイラー
- 3.0『ステージ・ドア』(1937/米)グレゴリー・ラ・カーバ
- 7.0『汚れた顔の天使』(1938/米)マイケル・カーティス
- 6.0『我が家の楽園』(1938/米)フランク・キャプラ
- 10.0『風と共に去りぬ』(1939/米)ヴィクター・フレミング
- 8.5『哀愁』(1940/米)マーヴィン・ルロイ
- 8.0『いちごブロンド』(1941/米)ラオール・ウォルシュ
- 6.5『逃走迷路』(1942/米)アルフレッド・ヒッチコック
- 7.5『わが青春に悔なし』(1946/日)黒澤明
- 8.0『素晴らしき日曜日』(1947/日)黒澤明
- 8.0『破れ太鼓』(1949/日)木下惠介
- 7.0『花嫁の父』(1950/米)ヴィンセント・ミネリ
- 8.5『アフリカの女王』(1951/米・英)ジョン・ヒューストン
- 9.5『ケイン号の叛乱』(1954/米)エドワード・ドミトリク
- 7.5『心のともしび』(1954/米)ダグラス・サーク
- 7.5『追想』(1956/米)アナトール・リトヴァグ
- 8.5『喜びも悲しみも幾歳月』(1957/日)木下惠介
- 3.0『カビリアの夜』(1957/伊)フェデリコ・フェリーニ
- 8.0『裸の太陽』(1958/日)家城巳代治
- 8.5『北北西に進路を取れ』(1959/米)アルフレッド・ヒッチコック
- 2.0『勝手にしやがれ』(1959/仏)ジャン=リュック・ゴダール
- 3.0『殿さま弥次喜多 捕物道中』(1959/日)沢島忠
- 1.5『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(1960/米)ロジャー・コーマン
- 1.0『若者のすべて』(1960/伊)ルキノ・ヴィスコンティ
- 4.0『ろくでなし』(1960/日)吉田喜重
- 8.0『黒い十人の女』(1961/日)市川崑
- 1.0『女は女である』(1961/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
- 1.5『女と男のいる舗道』(1962/仏)ジャン=リュック・ゴダール
- 0.5『軽蔑』(1963/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
- 3.0『山猫』(1963/伊)ルキノ・ヴィスコンティ
- 1.0『はなればなれに』(1964/仏)ジャン=リュック・ゴダール
- 1.0『気狂いピエロ』(1965/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
- 8.0『飢餓海峡』(1965/日)内田吐夢
- 7.5『幸福』(1965/仏)アニエス・ヴァルダ
- 5.0『アルファヴィル』(1965/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
- 5.0『女のみづうみ』(1966/日)吉田喜重
- 0.5『中国女』(1967/仏)ジャン=リュック・ゴダール
- 1.0『ウイークエンド』(1967/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
- 4.0『エロス+虐殺』(1969/日)吉田喜重
- 1.5『煉獄エロイカ』(1970/日)吉田喜重
- 8.0『クロムウェル』(1970/英)ケン・ヒューズ
- 1.0『ラムの大通り』(1971/仏)ロベール・アンリコ
- 1.0『告白的女優論』(1971/日)吉田喜重
- 7.5『マーラー』(1974/英)ケン・ラッセル
- 9.0『バリー・リンドン』(1975/米)スタンリー・キューブリック
- 8.5『アデルの恋の物語』(1975/仏)フランソワ・トリュフォー
- 9.0『祭りの準備』(1975/日)黒木和雄
- 1.5『デルス・ウザーラ』(1975/ソ連・日)黒澤明
- 8.5『震える舌』(1980/日)野村芳太郎
- 8.5『遠雷』(1981/日)根岸吉太郎
- 7.5『ポゼッション』(1981/仏・西独)アンジェイ・ズラウスキー
- 8.5『幻の湖』(1982/日)橋本忍
- 7.5『愛と青春の旅だち』(1982/米)テイラー・ハックフォード
- 8.5『廃市』(1983/日)大林宣彦
- 10.0『インドへの道』(1984/英・米)デヴィッド・リーン
- 8.0『眺めのいい部屋』(1986/英)ジェイムズ・アイヴォリー
- 8.0『吉原炎上』(1987/日)五社英雄
- 8.0『マルサの女』(1987/日)伊丹十三
- 0.5『右側に気をつけろ』(1987/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
- 8.5『ダイ・ハード』(1988/米)ジョン・マクティアナン
- 8.5『異人たちとの夏』(1988/日)大林宣彦
- 8.0『カミーユ・クローデル』(1988/仏)ブリュノ・ニュイッテン
- 0.5『ヌーヴェルヴァーグ』(1990/スイス・仏)ジャン=リュック・ゴダール
- 8.5『ダイ・ハード2』(1990/米)レニー・ハーリン
- 7.0『レッド・オクトーバーを追え!』(1990/米)ジョン・マクティアナン
- 9.0『ふたり』(1991/日)大林宣彦
- 8.5『ハワーズ・エンド』(1992/英・日)ジェームズ・アイヴォリー
- 8.0『ぼく東綺譚』(1992/日)新藤兼人
- 7.5『エイジ・オブ・イノセンス』(1993/米)マーティン・スコセッシ
- 0.5『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994/米)ロバート・ゼメキス
- 6.5『ダイ・ハード3』(1995/米)ジョン・マクティアナン
- 0.5『ユージュアル・サスペクツ』(1995/米)ブライアン・シンガー
- 8.5『鳩の翼』(1997/英・米)イアン・ソフトリー
- 8.0『悪い女』(1998/韓)キム・ギドク
- 8.5『シックス・センス』(1999/米)M.ナイト・シャマラン
- 8.0『リトル・ダンサー』(2000/英)スティーヴン・ダルドリー
- 8.5『猟奇的な彼女』(2001/韓)クァク・ジェヨン
- 7.0『ゴーストワールド』(2001/米)テリー・ツワイゴフ
- 2.0『ビューティフル・マインド』(2001/米)ロン・ハワード
- 1.0『愛の世紀』(2001/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
- 1.0『青の稲妻』(2002/中・日・韓・仏)ジャ・ジャンクー
- 8.0『春夏秋冬そして春』(2003/韓)キム・ギドク
- 4.0『僕の彼女を紹介します』(2004/韓)クァク・ジェヨン
- 0.5『アワーミュージック』(2004/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
- 9.0『弓』(2005/韓)キム・ギドク
- 3.0『プラダを着た悪魔』(2006/米)デヴィッド・フランケル
- 8.5『卍』(2006/日)井口昇
- 9.0『アズールとアスマール』(2006/仏)ミシェル・オスロ
- 7.5『ブレス』(2007/韓)キム・ギドク
- 0.5『ノーカントリー』(2007/米)コーエン兄弟
- 7.5『カメレオン』(2008/日)阪本順治
- 3.0『四川のうた』(2008/中・日)ジャ・ジャンクー
- 3.0『そして父になる』(2013/日)是枝裕和
- 2.0『42 世界を変えた男』(2013/米)ブライアン・ヘルゲランド
- 0.5『さらば、愛の言葉よ』(2014/仏)ジャン=リュック・ゴダール
- 1.5『海にかかる霧』(2014/韓)シム・ソンボ
- 8.0『リリーのすべて』(2016/英・米・独)トム・フーパー
- 点数順(同点は年代順)
1.5『イントレランス』(1916/米)D・W・グリフィス
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でかいセットは迫力がある。しかしそれだけである。当時としては珍しく4つの物語を平行して描いているが、面白いかどうかは別の話である。全体が180分に膨らんでおり冗長になっている。しかも物語のそれぞれがユダヤ教やキリスト教に関わるもので、私には興味が出なかった。
6.0『ナポレオン』(1927/仏)アベル・ガンス
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中盤くらいまでは大河ドラマとして楽しめる。しかし、後半はナポレオンの勇ましさが実験的な映像で強調されるばかりで面白くなかった。ナポレオンが共和主義を裏切るところも、没落していくところも描かれない。再生時間は4時間あるが、半分にまとめてほしい。
6.0『下宿人』(1927/英)アルフレッド・ヒッチコック
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誰が犯人か分からない、というサスペンスの基本が既に現われている。ハッピーエンドなのもいい。ただ、娯楽性でいうと後続のサスペンスに乗り越えられている。
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第一次世界大戦中にスパイ容疑で処刑されたストリッパー、マタ・ハリをモデルにした映画である。グレタ・ガルボが美人で官能的でよい。病院にいる負傷した兵士たちも生々しく、戦争の息づかいが伝わる。ただ、マタ・ハリが映画にするほどの人物なのかどうかは疑問である。
4.0『若草物語』(1933/米)ジョージ・キューカー
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4人姉妹が主人公だが、姉妹でケンカをする場面もほとんどなくドラマがない。主人公のキャサリン・ヘプバーンが男の求婚を断る意味もピンとこない。また、キャサリンは作家を目指しているが、さして努力してるように見えないのに難なくデビューするのは唐突である。
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浮気っぽくて思慮がない妻が夫に捨てられる、いい気味だ!という話。女性蔑視的で、ラストも後味が悪い。ただ、貴族の母親が意地悪に描かれているのはいい。「息子は貴族として子孫を残さないといけないが、年上の妻に子供が産めると思えない」と、年増の女が結婚を拒否される場面は、身分制への問題提起として読める。
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女優を目指す女達の群像劇だが、それぞれの登場人物の描写が足りない。後半で、ある女優志望の女がキャサリン・ヘプバーンに役を奪われ自殺してしまう。しかし、その自殺がうまく物語に絡んでいない。だったら何も彼女を自殺させる必要は無く、キャサリンと喧嘩したのち仲直りする、くらいで良かっただろう。
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ギャングのキャグニーが主人公だが、基本的にはギャング更正映画である。神父(パット・オブライエン)はかつてキャグニーと親友だったが、双方がしっかり対立しておりドラマが生まれている。ラストの電気椅子のシーンもいい。ただ、私はギャングと宗教に興味がないから、もっと何か決め手が無いとこれ以上の点は付けられない。
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1938年アカデミー賞作品賞、監督賞受賞。軍事工場の社長が民家のある土地を買収しようとするが、金儲けよりも大事なことがあるんじゃないかと思いとどまり中止する。コメディとしてはまあまあ笑える。ただ、現実的ではない話なのだから、エンターテインメントだとしたらもっと楽しめないといけない。『メリー・ポピンズ』(1964年)では、銀行家の父が金儲けより大事なものがあるといって歌い出すシーンがあるが、ミュージカル映画という性質を十分生かしており面白い。後年の映画に乗り越えられている。
10.0『風と共に去りぬ』(1939/米)ヴィクター・フレミング
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まだ貴族社会の息苦しさが残る19世紀に、ヴィヴィアン・リーは持ち前の気の強さとたくましさで生き延びていく。女のくせに、という偏見をもろともせず突き進んでいくさまは痛快である。一昔前の献身的な女を演じるオリヴィア・デ・ハヴィランドも美人である。基本的に原作小説を忠実に再現しており、さらに終盤のゲーブルとの結婚生活は小説に比べうまくカットしている。もちろんこの映画に対して、黒人奴隷の描き方がステレオタイプだという批判はできる。しかし、この時代に人種をステレオタイプで描いていない映画を探す方が無理なので、減点対象にはしない。
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第2次世界大戦中の英国が舞台。序盤では、主人公ヴィヴィアン・リーの恋心が瑞々しく描かれる。ロバート・テイラーが家の前に現われた嬉しさで、彼女は自分が服を着てるのか来てないのか分からなくなる。恋に落ちた女性の取り乱すさまが面白い。まもなくテイラーが戦争に行くと、彼が死亡したという記事が新聞に載るが、これは誤報であった。しかし、ヴィヴィアンはそうとは知らず絶望し、友人を通じて売春を始める。強かなヴィヴィアンは美しいが、そこが泣ける。この時代に売春がテーマになる映画は珍しいのではないか。ただ、ヴィヴィアンが身を投げるというオチは可哀想である。責任は新聞の誤報にあるのだ。
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主人公のキャグニーが、かつて女や仕事のことで出し抜かれた男に復讐しようとする話。ストーリーも楽しめるし、結婚生活の現実とかゾッとすることも描かれている。ところでキャグニーの妻オリヴィア・デ・ハヴィランドは元々進歩的な女で面白かったのに、結婚後はただの平凡な女になってしまう。ハヴィランドの見せ場が減り残念。
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ロバート・カミングスは破壊工作員と間違われ、警察からも追われる。序盤からハラハラする展開が続き、引き込まれる。ただ、疑い深かったプリシラ・レインがカミングスを信用する気になった理由がよく分からない。心理描写が丁寧ではないのだ。また、戦争中の映画なので、ナチス批判だったりと説教臭いところはある。
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戦前から終戦までの日本が舞台。仲の良い友達同士が思想的に擦れ違い、疎遠になるという展開はベタだが面白い。また、私は小津安二郎の映画で原節子を見ても美人だと思ったことはないのだが、これは美人で驚いた。原には予測不能なところがあり、理由もなくイライラして男の同級生を土下座させようとする。そういうところに妙な色気がある。また、大人の社会のイジメや田舎の閉鎖性も描かれている。ただなにぶん、戦後すぐの映画なので説教臭さはある。
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前半のテンポは悪く少々退屈する。しかし、後半には感銘を受けるシーンがいくつもある。戦争の傷跡が残る町で、喫茶店を開く夢を語り合うカップルはいいし、野外ステージで指揮者の真似をするシーンも感動的である。こういうカップルは羨ましい。
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女性の自我や恋愛結婚観など、一つの家庭を舞台に近代の概念が初々しく語られる。親父の阪東妻三郎はいかにも家父長的な振る舞いをするが、阪東が若い頃北海道の開拓地で働いたシーンが登場するなど人物のバックボーンが分かるので憎めない。
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結婚を控えた花嫁の父親(スペンサー・トレイシー)を主人公に据える。結婚を待ち望む娘(エリザベス・テイラー)や妻(ジョーン・ベネット)とは違い、父親としての不安な心境が丁寧に語られる。対比がうまくなされていて面白い。ただ、肝心の花婿像が詳しく描かれていないのは勿体ない。あと、物語にわざとらしい事件が起こる必要はないのだが、起こらなすぎる。
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「アフリカの女王」とは、ハンフリー・ボガードが操縦する小型貨物船の愛称。第一次世界大戦下、ドイツの植民地だったアフリカから、ボガードとキャサリン・ヘプバーンはひっそりと脱出を試みる。キャサリンの気が強いところは面白いし、美男美女には見えない二人がいつの間にか惹かれあっていくのが微笑ましい。中年の恋愛映画としても楽しめた。
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ハーマン・ウォークの同名小説が原作。小説は小説で面白いが、映画は無駄がなく面白い。神経症的な船長(ハンフリー・ボガード)には凄みがあるし、その後の軍法会議でのやりとりも手に汗握る緊張感がある。小説とは違い、主人公ウィリーが彼女と結ばれて終わるのもいい。傑作である。
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金を持て余している男ロック・ハドソンは、毎日投げやりに生きている。しかしある日、ふとした事故でジェーン・ワイマンという知り合いの女性に怪我を追わせ失明させてしまう。ハドソンはこの事件をきっかけにまともに生きることを決意する。ハドソンは名を名乗らず、他人のふりをしてワイマンの世話をする。しかし、実はワイマンは彼がハドソンだということを何となく感づいていた、というシーンは感動的である。大人の男女の愛が美しく描かれている。ただ一方で、失明させられたワイマンや親族は、もっとハドソンに怒りを抱いていいのではないだろうか。そういう葛藤も描くとドラマも増えただろうに、惜しい。
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イングリッド・バーグマンがロシアの皇族の生き残りではないか、とユル・ブリンナーが探る。ユル・ブリンナーは最初は遺産目当てだったが、バーグマンのことが本当に好きになっていく。物語に派手さはないが、ベタな面白さがある。そして、ラストでは二人は駆け落ちする。バーグマンが本当に皇女だったのか分からない。しかし、たとえ家柄がどうだとしても二人は人間として愛し合う道を選んだ、という結末であるから良いオチである。1996年に、ディズニーによって『アナスタシア』としてリメイクされているが、そちらは王制への憧れが強くて嫌だった。
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灯台守の夫婦を通して、戦前や戦時中の日本がふり返られる。説教臭くないし、身近な人々が戦死するなど戦争を美化はしてもいない。『風と共に去りぬ』のような大河ドラマの趣がある。ただ、夫婦の物語であるわりに妻(高峯秀子)の存在感が足りない。
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娼婦のジュリエッタ・マシーナは良いが、恋愛描写のような情緒は無い。マシーナがひたすら男に翻弄されるだけの話なので、可哀想だし楽しくない。また、マシーナが神にすがり教会に行くシーンがあるが、私は神にすがったことがないので共感できなかった。
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『暴れ太鼓』のように、カップルを通して近代思想が瑞々しく描かれており面白い。ただ、終盤で仲代達矢の片思いの恋が明かされるが、仲代のバックボーンに時間が割かれていないのは物足りなかった。ここを広げればもっと面白くなったであろう。主題歌はポップで楽しい。
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観客を裏切る物語が冴えるし、飛行機が突っ込んでくるシーンには迫力もある。エヴァ・マリー・セイントが知的で美人なのも良い。ヒッチコックの代表作と言える。
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大学生の頃に初めて見たときは凄い映画なのかと思ったが、多少カットのつなぎにアイデアがあるだけで、見直すとたいしたことはない。主人公の男がマフィアに憧れているだけのチンピラなのが寒い。また、その男を裏切り警察に売った女が悪く描かれるが、むしろチンピラを擁護しないだけ立派な女である。
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殿様二人が身分を偽って旅に出る話だが、身分制自体を批判しているわけではない。女義賊である雪代敬子がキーパーソンのように語られるが、実際は全然活躍しないので物足りない。男同士の映画に過ぎなくなっている。
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主人公シーモアは、植物の餌のために歯科医を自分の手で殺すなど狂気染みしている。リメイク後のミュージカル映画(1986年)のほうが感情移入できて面白い。
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貧しい兄弟がボクシングをやったり、そのうちの一人が娼婦を殺したりと、粗野で乱暴で眉をひそめたくなる映画。こんな野蛮な人々は若者の一部に過ぎない。
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ヌーベルバーグのように退廃的な調子で、エネルギーが感じられない。津川雅彦が無責任な男で不快である。ただ、年上の女高千穂ひづるに色気があり、人間的に魅力もあるのはいい。
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一人の男に不倫をされていた女達が、共謀して男に復讐しようとする。殺人事件が起きているわけでもなのに、サスペンスとして引き込まれる。テレビ局に勤める岸田今日子が、封建的な男性プロデューサーに理論的に反論するシーンも格好いい。ただいかんせん、モテまくりで不倫しまくりの主人公船越英二に感情移入しかねる。
1.0『女は女である』(1961/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
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ハリウッドのミュージカル映画のオマージュをブツ切りでやっているわけだが、だから何だという話である。わざと音痴に歌ったりしている。映画評論家の蓮實重彦がベスト141のうちの1本に選んだりしているがまったく意味が分からない。ゴダールだというだけで高評価しているんだろう。
1.5『女と男のいる舗道』(1962/仏)ジャン=リュック・ゴダール
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冒頭のカメラワークだけちょっと面白い。主人公のナナがただかわいそうで、殺すことはないだろう。
0.5『軽蔑』(1963/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
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愛を裏切るのは女の方からだ!という典型的な女性蔑視映画である。こういう男の考えが私は嫌いである。あとは、米国人プロデューサーを陳腐な悪役にしているだけで、物語には工夫がない。
3.0『山猫』(1963/伊)ルキノ・ヴィスコンティ
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統一戦争時代のイタリアが舞台だが、大河ドラマとしての娯楽性は低い。ガリバルディが出てくれば面白いのに、出てこない。上映時間が3時間もありながら、貴族が舞踏会でダラダラするシーンばかりが目立つ。カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した作品だが、何で受賞したのか分からない。
1.0『はなればなれに』(1964/仏)ジャン=リュック・ゴダール
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「1分間の沈黙は長い」ということを示すために、映画を1分間無声にする演出があるが迷惑である。実験的な作品は古びるということが分かる。
1.0『気狂いピエロ』(1965/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
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ベルモンドは一児の父親だが、家族を捨てて先のまったく見えない逃避行をする。冒頭からまったく感情移入できない。その後も、女が男を裏切るなど女性蔑視的な展開である。ところで、この映画のタイトルは「きちがい」と読む。放送倫理に配慮して「きぐるい」と読んだり、原題のカタカタ読みとして「ピエロ・ル・フ」と言ったりすることもあるようだが、そういう言葉狩りは愚かである。
8.0『飢餓海峡』(1965/日)内田吐夢
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水上勉の同名小説が原作だが、小説よりはまとまっていて面白い。娼婦の左幸子の健気なところが泣ける。ただ、いかんせん無実の人間を二人殺す三國連太郎に感情移入はできない。
7.5『幸福』(1965/仏)アニエス・ヴァルダ
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「幸福」と書いて「しあわせ」と読む。仲睦まじそうな夫婦が主人公だが、実は夫は結婚生活に退屈していて不倫をする。ふとした弾みに出現する妻との不和が恐ろしい。一方、不倫相手の女はステレオタイプに描かれず、制作者側の女達への愛が感じられる。ただ、前半に見せ場が少ないのでそこは退屈した。
5.0『アルファヴィル』(1965/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
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ディストピアを舞台にしたSF作品。ストーリーがあるのでゴダールとしてはまともな方である。ただ、主人公が思想統制された都市に入り込んでいるにもかかわらず、見張りもなく自由に活動できているのが不自然である。また、この映画では論理や論理的であることが批判されているが、非論理的な犯罪者やテロリストがいることを思えば論理は大事である。そして皮肉にも、『アルファヴィル』はゴダールの作品において論理的な方である。
5.0『女のみづうみ』(1966/日)吉田喜重
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原作は川端康成の小説『みづうみ』だが、小説は群像劇のようで散漫としているので、主人公を絞っている映画の方がいい。女性も官能的に描けている。ただ、ヌーベルバーグの影響なのか、演出が間延びしている。もっと面白くできそうなのに、わざと娯楽性を排除しているきらいがある。
0.5『中国女』(1967/仏)ジャン=リュック・ゴダール
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文化大革命や毛沢東をスタイリッシュに取り上げているつもりらしい。私には全く興味が出ない映画である。文化大革命とは、政府が金属を集めて工場をたくさん作るために農民から農具を取り上げたら、農民が餓死しまくったというもので、悲惨であるが単純な話に過ぎない。ところで終盤、過激派の学生が哲学者に窘められるシーンがある。制作者側としては、左翼運動に諸手を挙げて賛成していない、ということを言いたいのだろうが、だったら尚更映画にする必要などない。最初から、左翼運動がテーマの映画など作らなければいいのである。
1.0『ウイークエンド』(1967/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
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今見ると別に実験的でもショッキングではない。ギャグも古くなっている。車が大渋滞するシーンは北野武の『みんな~やってるか!』でオマージュされているが、武の方がちょっと笑えるくらいである。
4.0『エロス+虐殺』(1969/日)吉田喜重
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大杉栄と共に殺された無政府主義者・伊藤野枝が主人公。序盤では、女性運動家としての初々しい正義感が語られて微笑ましい。しかし、なぜか現代を舞台にした学生達のエピソードが交代で挟まる。これではテーマが散漫になるだけである。また、野枝と大杉とその愛人逸子の三人が相争うシーンを期待したが、三人とも観念的な台詞を口にするだけでガッカリした。
1.5『煉獄エロイカ』(1970/日)吉田喜重
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ヨーロッパの前衛を真似しただけ。観客に理解させようという気がない。原子力を扱っているが、原子力に賛成かも反対かもよく分からない。伝えたいことがないのだろう。ただ、痩せた女性(木村菜穂)の裸には興奮した。
8.0『クロムウェル』(1970/英)ケン・ヒューズ
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クロムウェルは英国の政治家で、王制を倒して英国において初めて共和国を実現した。オーソドックスな伝記映画であるが、大河ドラマとして楽しめる。もっとも、クロムウェルが政権を奪取して以降は描かれないのでそこは物足りない。尺が足りなかったのか、クロムウェルの独裁者的な性格を描くのから逃げたのか…。
1.0『ラムの大通り』(1971/仏)ロベール・アンリコ
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ヤクザまがいの老いた船長が主人公。なぜかスター女優が男に惚れるが、惚れる要素などないから意味が分からない。男にも女にも感情移入はできない。そのくせ、女は別の男にくらんで主人公を捨てる。女の方から愛を裏切るという女性蔑視である。
1.0『告白的女優論』(1971/日)吉田喜重
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ヨーロッパの前衛に影響を受けたゲイジュツ映画。さも精神分析学で好まれるようなテーマを筋に当てはめているだけで工夫がない。登場人物も多いだけで、全く必要ない。
7.5『マーラー』(1974/英)ケン・ラッセル
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作曲家グスタフ・マーラーの伝記映画。奇抜な映像表現だが、ちゃんとマーラーの生い立ちやバックボーンが描かれるので感情移入できる。妻がミステリアスで良いキャラをしているのだが、それだけに妻のバックボーンも描いてほしいところであった。
9.0『バリー・リンドン』(1975/米)スタンリー・キューブリック
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原作はサッカレーの同名小説だが、小説より面白い。物語も工夫されているし、冗長な賭博のシーンも削られている。義理の息子との決闘シーンなどは息をのむほどドラマがある。主人公の従妹(ゲイ・ハミルトン)も美人ではないが色気がある。私が観たキューブリック作品の中で一番好きである。
8.5『アデルの恋の物語』(1975/仏)フランソワ・トリュフォー
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フランスの文豪ユーゴーの次女・アデルを描いた伝記映画。アデルはかつて一夜を共にした英国の中尉のことが忘れられない。カナダまで彼のあとを追ってきて熱い手紙を送るなど、その思いはストーカーじみていく。この女性の執念を、恐ろしいと言っていいのか美しいと言っていいのか分からない。しかし、この映画が人間の感情の予測不能さを捉えているのは間違いない。
9.0『祭りの準備』(1975/日)黒木和雄
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脚本家の中島丈博が育った高知県中村市が舞台である。中島の実体験からくるのであろう、田舎の息苦しさや粗野なところが生々しく描けてある。売春宿に勤めたあと頭がおかしくなってしまった女がいるのだが、主人公の祖父がその女を孕ませてしまう展開は唖然とした。登場人物が多く、もっと一人一人にスポットを当ててほしいという不満もあるが、しかしそこを差し引いてもかなり面白い映画である。
1.5『デルス・ウザーラ』(1975/ソ連・日)黒澤明
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大自然を賛歌し、近代文明を批判するだけの内容である。ロシアの探検家の人となりも描写されないので感情移入できるキャラがいない。女性も出てこない。この映画の主人公は「自然」なのだろうが、人間が主人公でない映画はつまらない、という当たり前の事実を再確認した。
8.5『震える舌』(1980/日)野村芳太郎
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原作は三木卓の同名小説。家の近くで泥遊びをしていた幼い娘が破傷風にかかり、壮絶な闘病を余儀なくされる。親夫婦は娘の命を気遣ったり、あるいは自分のせいだと自らを責めたり、喧嘩をしてしまう。しかし、そんな時にふと垣間見える絆は感動的である。ストーリーのテンポは悪いのだが、そのテンポの悪さが闘病の大変さや、何もできない親の無力感を表現しているとも思える。主治医の中野良子が頼りがいがあって格好良い。あと病院の中で皆が煙草を吹かしているのは興味深い。
8.5『遠雷』(1981/日)根岸吉太郎
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原作は立松和平の同名小説だが、農家や団地妻の生々しいエロスが小説以上に表現できている。永島敏行が年上の女(横山リエ)とビニールハウスでセックスをする場面はかなり興奮した。もしこういう女と実際に会ったら私も人生を狂わされてしまいそうである。ただ、永島の親友であるジョニー大倉のバックボーンが描かれないので、彼の起こした殺人事件について心を揺さぶられることは無かった。
7.5『ポゼッション』(1981/仏・西独)アンジェイ・ズラウスキー
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妻(イザベル・アジャーニ)が夫のことを毛嫌いするようになり、夫は怒りでストーカー化する。その後の展開を思うと、怪獣映画のようでもある。なぜか途中、バレエ教室でイザベル・アジャーニが少女を調教するシーンがあり、撫で回される少女に興奮した。後半の展開は飛躍していてほとんど意味が分からない。もっと若い頃に観ていれば衝撃を受けたかもしれないが、今の私では7.5点。
8.5『幻の湖』(1982/日)橋本忍
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主人公の南条玲子はソープ嬢で、愛犬とのランニングを日課にしている。南条にはエロさと素朴さとが奇妙に同居していて良い。ところがある日、愛犬が誰かに殺されてしまう。彼女は犯人を見つけるために奔走し、ついに犯人の男をあぶり出す。最終的に南条は男をナイフで刺して敵を討つが、このオチはやり過ぎだとも思う。もっと言うと、この映画は色々とやり過ぎである。ほとんど脈絡もないのに戦国時代の物語に飛んだり、南条が宇宙飛行士と交流したりする。にもかかわらず、面白い映画であるから謎である。
7.5『愛と青春の旅だち』(1982/米)テイラー・ハックフォード
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リチャード・ギアは父親を反面教師とし、真面目な軍人になろうと決心する。親子の対立というお膳立てがしっかり描かれるので、物語に入り込めやすい。ただ、基本的にはいかにもマッチョな男社会が描かれるので観ていて疲れる。男をだまして自殺に追いやってしまう女も出てくるが、わざわざこういうエピソードを挟むところに女性嫌悪を感じてしまう。リチャード・ギアとデブラ・ウィンガーの間にも、もう一ひねりドラマがほしかった。
8.5『廃市』(1983/日)大林宣彦
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福永武彦の短編小説「廃市」が原作で、映画は短編をうまく膨らましている。単純な不倫ではなく、誤解などが絡んでいる愛憎関係は面白い。峰岸徹の通夜に、姉妹がお互いの感情をぶつけ合うさまは劇的である。姉妹がただ相手のことを憎んでいるのではなく、相手のことを思いやった上でぶつかり合うから観客の心が揺さぶられるのである。ただ、序盤の見所が少ないところが惜しい。
10.0『インドへの道』(1984/英・米)デヴィッド・リーン
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植民地時代のインドを舞台に、英国人とインド人との交流が初々しく描かれる。フィールディング教授は近代思想を体現したような人物で共感できる。彼は周りの英国人の持つ偏見に挑戦するし、自分の家名が絶えることを気にしない。他方でインド哲学の宗教観にも疑問を呈すなどバランスが良い(宗教に批判的でなければ近代主義者ではない)。もちろん、フィールディングが友情を育んでいたはずのインド人アジズと擦れ違ってしまう展開も泣ける。原作はE.M.フォースターの同名小説であるが、小説よりもミス・クェステッドの扱いが良い。また、クェステッドとアジズとの和解のシーンもあり小説以上に感動的である。
8.0『眺めのいい部屋』(1986/英)ジェイムズ・アイヴォリー
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原作小説はE.M.フォースターの同名小説で、小説を忠実に再現している。身分を隔てた恋がなかなか進展しない様はベタだが引き込まれる。ただ、ヘレナ・ボナム=カーターの従妹役としてマギー・スミスは適切ではないだろう。二人の間には32歳差もあり、年を取り過ぎている。
8.0『吉原炎上』(1987/日)五社英雄
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吉原を美化せず、女にとってそこが生き地獄であることが生々しく描かれる。とくに、男に裏切られ気がふれてしまった仁支川峰子は恐ろしい。ただ、主人公(名取裕子)の生い立ちがちゃんと描かれないので感情移入しきれない。また、名取の心理描写も物足りず、飛躍している。おぼこだったはずの彼女が、いつの間にか花魁としてのプライドを持っているので違和感があった。
8.0『マルサの女』(1987/日)伊丹十三
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マルサとは国税局査察部の通称。頭が良くて正義感の強い税務署員・宮本信子は痛快である。脱税者を追い詰める勧善懲悪ものとして楽しめる。また一方で、山崎努の金儲けの哲学にもついつい頷いてしまう。ただ、宮本の一人息子や家庭環境・バックボーンが不明瞭である。そこが描かれればもっと宮本に感情移入できて面白くなったであろう。
0.5『右側に気をつけろ』(1987/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
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群像劇のようにしたいのか知らないが登場人物が多く、ミュージシャンらをメインにしたストーリーも挿入される。しかし丁寧に人間を描いていないので感情移入が出来ないしよく分からない。コメディかというと別に笑えない。
8.5『ダイ・ハード』(1988/米)ジョン・マクティアナン
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もちろんアクションには迫力があるが、何より登場人物のバックボーンや人間ドラマがしっかり描けていて面白い。また、ブルース・ウィリスは非番の警官だが、警官を美化していないし、わざと醜く描いてもいないのも冷静で良い。映画には娯楽が必要だ、ということがよく分かる。
8.5『異人たちとの夏』(1988/日)大林宣彦
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風間杜夫は子どもの頃に死んだはずの両親と再会する。本当は幽霊だと分かっていても、ついつい団欒してしまう。幸せな日常から、ふとした瞬間に垣間見える死の恐怖には身震いした。終盤ではブライアン・デ・パルマの『フューリー』を思わせるシーンがある。原作は山田太一の同名小説だが、映画の方がホラーとしての娯楽性が高まっていて面白い。
8.0『カミーユ・クローデル』(1988/仏)ブリュノ・ニュイッテン
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ロダンの弟子であり愛人でもあった彫刻家カミーユ・クローデルの伝記映画。クローデルは知的で行動力があり、周囲の人間に自己主張していくのは痛快である。ただ後半では、ロダンへの憎しみからクローデルは頭が変になってしまう。救いようもない展開になってからは観るのがキツくなった。
0.5『ヌーヴェルヴァーグ』(1990/スイス・仏)ジャン=リュック・ゴダール
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男は溺れている女を救うが、女は溺れている男をただ見捨てるという、女性を悪者にするテーマが不愉快である。あと、どこからどこまでが回想シーンなのか分からないように作っているのも観づらい。
8.5『ダイ・ハード2』(1990/米)レニー・ハーリン
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観客を何度も裏切るプロットで、前作同様に質の高い娯楽映画になっている。飛行機が墜落するかもしれないという恐怖もリアルで、飛行機に乗りたくなくなる。面白かった。
7.0『レッド・オクトーバーを追え!』(1990/米)ジョン・マクティアナン
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ソ連から米国に向かう潜水艦がある。米国に攻撃するためなのか、それとも亡命をしに来たのかと情報が錯綜する。サスペンスとして観ていられる。しかし、主人公と妻子の関係が中途半端にしか描かれないのは物足りない。『ダイ・ハード』に比べると主人公に感情移入しかねる。ところで、潜水艦の中で皆が煙草を吸っているのは興味深い。
9.0『ふたり』(1991/日)大林宣彦
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原作は赤川次郎の同名小説だが、小説だと主人公(石田ひかり)にイケイケの彼氏ができるのでムカつく。映画の方が、石田ひかりと死んだ姉や女友達の関係が丁寧に描かれており面白い。死んだ姉の彼氏との微妙な距離感もドキドキする。また、父親の浮気相手の女が夫婦の家を訪ねてくるシーンは迫力がある。ただ、石田ひかりが暴漢に襲われるシーンがあるが、なぜか石田にはトラウマが全く残らない。あんな経験をしたらフラッシュバックしそうなものだが、その後も明るく暮らしているのは違和感がある。
8.5『ハワーズ・エンド』(1992/英・日)ジェームズ・アイヴォリー
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ヘレナ・ボナム=カーターは、不貞の女性を家に泊めると家の価値が下がる、とか言われてしまう。英国の階級社会の意地悪さが分かる。ヘレナが労働者階級の男を救い出そうとして空回りしてしまうのは泣ける。ただまあ基本的に、成り上がりに厳しく上流階級には同情的な調子なので、納得しがたいところもある。原作はE.M.フォースターの同名小説で、映画はこれを忠実に再現している。
8.0『ぼく東綺譚』(1992/日)新藤兼人
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永井荷風の小説『ぼく東綺譚』を映画化するだけではなく、荷風の一生そのものを描いた伝記映画のようになっている。小説『ぼく東綺譚』はつまらなかったが、映画は面白かった。荷風は女にだらしなくて、若い女・墨田ユキと婚約(?)したのに裏切る。しかし、結局のところユキは年の離れた荷風と結ばれないほうがいい気もするから、女性への可哀想さは緩和されている。実際終盤では、ユキが戦後も強かに生きる、というシーンがあり安心する。
7.5『エイジ・オブ・イノセンス』(1993/米)マーティン・スコセッシ
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1870年代のニューヨークの閉鎖的な社交界が、自由な思想を持つミシェル・ファイファーの登場により動揺する。素朴な女性解放論者が前近代的なルールを切り崩していく様は面白い。ダニエル・デイ=ルイスとの友情のような関係性は美しいが、大恋愛には発展しないので娯楽性は低い。もっとミシェル・ファイファーが活躍すれば痛快なのだが。イーディス・ウォートンの原作小説の方が面白かった。
0.5『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994/米)ロバート・ゼメキス
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内気な主人公がすぐに女の子と仲良くなり、二人っきりで遊ぶようになるのはよく分からない。しかも主人公は足が速いと言うだけでラグビー選手として大学に入学できるなど、いつの間にかマッチョ男になっており腹が立つ。男の一途な愛や寛容さが強調され、女の方が愛を裏切るという女性蔑視な展開もあり嫌である。中途半端に政治問題や反戦思想が絡んでいるのもダメである。いかにも「評論家さん誉めてください」というあの寒さである。
6.5『ダイ・ハード3』(1995/米)ジョン・マクティアナン
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ストーリーは退屈ではない。しかし、前作まであったブルース・ウィリスと妻子との関係が無くなりドラマが減っている。女性キャラもとくに出てこない。あと、カーチェイスのシーンが多くブルース・ウィリスが危険運転をするが危ない。
0.5『ユージュアル・サスペクツ』(1995/米)ブライアン・シンガー
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容疑者が法螺話を駆使して警察から逃げおおせる、という話で共感できない。あと、わざとストーリーを分かりづらくしているのもイライラする。女性もほぼ全く出てこない。
8.5『鳩の翼』(1997/英・米)イアン・ソフトリー
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原作はヘンリー・ジェイムズの同名小説。ヘレナ・ボナム=カーターは、ジャーナリストのライナス・ローチを愛している。しかし彼には金がない。そこでヘレンは、遺産があるが重い病気を患う女友達(アリソン・エリオット)と、自ら進んで三角関係に陥る。人を愛するあまり残酷な振る舞いをする、という人間の不可解さが表現されている。ただ、これは原作小説でもそうなのだが、アリソンの心情がいまいち分からない。もっと、ヘレンとアリソンとの友情を描くと完璧なのだが。
8.0『悪い女』(1998/韓)キム・ギドク
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娼婦のジナと、貞淑で頭の良いヘミは従妹同士である。ヘミは体を売るジナを軽蔑していたが、徐々に友情が育まれるのが美しい。女性の色気や官能性も生々しくて興奮する。ただ、ジナの身の上が描かれないので感情移入できない。また、終盤でヘミが男に体を売るのだが、突然な展開であり納得できない。
8.5『シックス・センス』(1999/米)M.ナイト・シャマラン
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ホラーとしても楽しめるが、それぞれの幽霊にバックボーンがあるのがいい。人間ドラマとして作られているので、質の高い娯楽映画になっている。大オチは今となっては真新しくないが、それでもうまく物語を締めている。
8.0『リトル・ダンサー』(2000/英)スティーヴン・ダルドリー
- 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
- 発売日: 2015/06/24
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主人公の少年は、父親に無理矢理ボクシングをやらされている。しかし、本当はバレエを踊ってみたいと思っている。「男は男らしく」というジェンダーへの押しつけに刃向かっていく少年は応援したくなる。また、父と兄は炭鉱に務めているが、ストを続けるかスト破りをするかという葛藤もありドラマが冴えている。ところでこの映画には、認知症の祖母を除くと基本的に女性は出てこない。劇中に同性愛者の少年は出てくるので、恐らく監督がゲイなのだろう。基本的に私は同性愛的な映画には共感できないのだが、『リトル・ダンサー』は登場人物のドラマがしっかり描けているので私にも楽しめた。
8.5『猟奇的な彼女』(2001/韓)クァク・ジェヨン
- 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
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正義感が強く義憤にあふれる女性チョン・ジヒョンが痛快である。そうかと思えば、ジヒョンが彼氏に聞こえない声量で本音を言うシーンもあり感動的である。ただ、ジヒョンとその保守的な両親との葛藤がいまいち描かれないのは物足りない。オチももう一ひねりできる気がする。
7.0『ゴーストワールド』(2001/米)テリー・ツワイゴフ
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スクールカーストが低そうなオタクの女子ソーラ・バーチと、オタクの中年ブシェミが何となく惹かれあうのが面白い。オタクを嫌う女友達とバーチとの間にズレが生じるのもベタだが引き込まれる。ただ、オチがよく分からない。シュールなのかバッドエンドなのか。ブシュミとの仲がどうなったのかが有耶無耶にされていており、物語から逃げてしまった。ちなみに原作はアメコミで(未読)、原作では中年男は出てこないらしいが、これは絶対に出てくる方が面白い。
2.0『ビューティフル・マインド』(2001/米)ロン・ハワード
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天才数学者ジョン・ナッシュの伝記映画。しかしナッシュは本を読まず、すべてを支配する理論を考えたいというから文系の私には共感できない。また、ナッシュは女心が分からないのに、美人の女学生に食事を誘われたりキスをされるなどムカつく。後半はナッシュの精神状態が悪化し、鬱々とした映画になっていて疲れた。
1.0『愛の世紀』(2001/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
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海と人間が二重写しになる映像は確かに美しいが、それだけである。映画じゃなくて音楽のPVにでもした方がいい。コソボ紛争とか政治を扱えばいいんだろう、みたいなゴダールの姿勢が鼻につく。
1.0『青の稲妻』(2002/中・日・韓・仏)ジャ・ジャンクー
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杜撰な計画で銀行を襲おうとする不良が主人公。ただでさえ登場人物に共感できないのに、ストーリーもダラダラしていて面白くなかった。
8.0『春夏秋冬そして春』(2003/韓)キム・ギドク
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人里から隔離された場所に、老僧と少年が生活している。かなり変わった映画だが、少女が寺を訪れてから面白い。少年が少女に対して募らせる性欲の描き方が生々しい。また、子供を捨てる親など、目を背けたくなるような人間の行動が描かれている。ただ、人間の内面に迫っているわけではない。成長した少年は殺人沙汰を起こすが、ちょっとついていけなかった。
4.0『僕の彼女を紹介します』(2004/韓)クァク・ジェヨン
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チョン・ジヒョンは美人だが、所詮『猟奇的な彼女』の二番煎じである。ジヒョンが彼氏の仕事場に乗り込むなどやり過ぎで、恋愛描写に風情がない。あとやたら銃撃戦が多い。
0.5『アワーミュージック』(2004/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
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序盤は実際の戦争の映像が繋ぎ合わされているだけ。中盤はユダヤとイスラムの話題になるが私には関心が無い。ラストは登場人物が天国にいるシーンだが、オカルトである。
9.0『弓』(2005/韓)キム・ギドク
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船の上で二人きりで暮らす老人と少女がいる。少女が17歳になったら老人は彼女と結婚するつもりでいるが、少女は釣り客の青年と恋に落ちる。少女の自我がちゃんとテーマになっていて面白い。物語もいい意味で観客を裏切ってくれる。音楽もいい。強いて言うなら、釣り客の青年のバックボーンが分からず感情移入できないのだけ不満だった。
3.0『プラダを着た悪魔』(2006/米)デヴィッド・フランケル
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オシャレにより人間に階層が生まれる、というテーマは分かる。しかし、そもそも私はファッションに興味が無いので、意地悪なファッション雑誌編集部の人々には腹が立ってくるだけである。新人アン・ハサウェイは結局仕事を辞めるが、職場でしごかれたことを良い思い出としてまとめているので、モラハラやパワハラを肯定的に描いているような気もする。あとメリル・ストリープの良さが分からない。
8.5『卍』(2006/日)井口昇
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原作は谷崎潤一郎の同名小説だが、小説より面白い。女性同士のセックス描写にふざけたところがない。秋桜子に恥じらいがあり、エロティックで良い。ただ、終盤では「死のうか」「うん」と退廃的で、観音様に手を合わせるなどオカルト色も強くなる。
9.0『アズールとアスマール』(2006/仏)ミシェル・オスロ
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フランスのアニメ。アズールは白人の金持ちの息子で、アスマールはアズールの乳母の息子でアラブ人である。子供の時はお互い何も気にせず遊んでいたが、いつしか人種という壁が立ちはだかる。白人に差別されるアラブ人、アラブ人に差別される白人という双方からの視点で描かれており、よく考えられている。冒険談としても楽しめる。『インドへの道』もそうだが、素朴な正義感を持つ異文化の人間が接触する映画は面白い。
7.5『ブレス』(2007/韓)キム・ギドク
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夫の浮気の復讐に、妻はテレビで知った死刑囚と面会するようになる。実際にはあり得ないようなストーリーだが、人間の愛の不可解さが表現されているとも思える。しかし、夫婦のバックボーンを描くシーンが足りないので共感はしづらい。評価に困る映画だが、一見の価値はある。ちなみに死刑反対的なメッセージはなさそうである。
0.5『ノーカントリー』(2007/米)コーエン兄弟
ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
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無差別殺人犯が罰せられず逃げおおせる話。グロテスクさや狂気が優先され、人間ドラマはないがしろにされる。アカデミー賞で4冠、キネマ旬報2008年1位(ふうん)。
7.5『カメレオン』(2008/日)阪本順治
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政府要人の拉致現場を目撃した藤原竜也らが謎の組織に命を狙われる。明らかに撃たれた水川あさみが生きているなどよく分からないところも多いが、基本的にストーリーもアクションも楽しめる。結婚詐欺をやっている塩谷瞬が、騙すつもりの女性のことを本当に好きになっている、というシーンも面白かった。
3.0『四川のうた』(2008/中・日)ジャ・ジャンクー
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前半は記録映画で後半はフィクションとなっている。閉鎖される軍需工場に勤めた人々が自分の経験を語っていく。ある女性は自分が18歳の時、14年ぶりに母が帰郷した時のことを話す。またある女性は、港で子供とはぐれたが、軍の命令で子供を捜索できないまま船に乗らなくてはならなかったという。ただ、後半のフィクションがどうも面白くない。それによく考えると、前半の工員の話も嘘なんじゃないかと思えてきてしまう。
3.0『そして父になる』(2013/日)是枝裕和
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成り上がりの福山雅治家と庶民的なリリー・フランキー家との間で取り替え子が起こる。それぞれの家の経済格差が描かれているのでそこは面白い。しかし、その後はずっと庶民のリリー家に味方するような物語の運びとなる。福山雅治だって別に悪いことをして金を稼いだのではなく、ちゃんと仕事をしているわけだから、「金を稼ぐ=悪い」みたいな安易な図式には辟易した。また、福山がファザコンであることは劇中で批判されるが、リリーが自分の父に教わったように田舎的な暮らしをするのは批判されないどころか美化されている。福山のファザコンは駄目で、リリーのファザコンは何でいいのか。リリーはリリーで自らのファザコンについて葛藤すべきであり、そうしないと物語に奥行が出ない。
あとは、双方の少年が上品すぎる。男子は小さいころから性欲があるはずだが、女子や女性に見向きもしない。
2.0『42 世界を変えた男』(2013/米)ブライアン・ヘルゲランド
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黒人米国人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの伝記映画。しかし、物語はジャッキー・ロビンソンがいきなりドジャースのGMリッキーと契約するところから始まる。登場人物のバックボーンが描かれないので物足りない。また、キリスト教の説教臭さが強い。リッキーが「右の頬を殴られたら左の頬を差し出」すように差別を受けても我慢しろ、とロビンソンに言ったり、「死んだあと神様の前で黒人を差別したことを後悔するな」と他球団の監督に言ったりする。しかし、人間は生れで差別してはいけないというのは合理的考えから引き出せるのであり、キリスト教などわざわざ持ち出すことはないのだ。
0.5『さらば、愛の言葉よ』(2014/仏)ジャン=リュック・ゴダール
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ゴダールの3D映画ということで当時の私はわざわざ映画館に観に行った。3Dメガネをかけても、わざとピントが合わない作りの映像になっている。80歳を超えたゴダールの嫌がらせである。実験的な作品が面白いという時代は終わったのだ。
1.5『海にかかる霧』(2014/韓)シム・ソンボ
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最初は、船による密入国を描いた真面目な映画だと思ったのに、どんどんスプラッター映画みたいになってしまう。船長や船員が平気で人を殺すのだ。オチもなぜか男女が結ばれないというバッドエンドだし、密航者の女性が行方不明の弟を探すという展開さえどうでもよくなっている。ドラマを蔑ろにする映画は面白くない。
8.0『リリーのすべて』(2016/英・米・独)トム・フーパー
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世界で初めて別適合手術を受けたリリー・エルベの伝記映画。リリーは男だった頃、画家である妻のモデルの代役として女装すると、みるみる女装にハマっていった。状況は次第にエスカレートし、女装してパーティに出席したりもする。ここでの、男であることがバレるかもしれない、という演出はスリリングである。また、妻も最初は夫の女装を面白がっていたのに、「夫が必要なの」と泣き出して夫に女装をやめるように言うのはいい。女性の心の動きも丁寧に描写しているから、異性愛者の私にも楽しめた。ただ、手術を受けるシーンは痛ましく目を覆いたくなった。
点数順(同点は年代順)
10.0『風と共に去りぬ』(1939/米)ヴィクター・フレミング
10.0『インドへの道』(1984/英・米)デヴィッド・リーン
9.5『ケイン号の叛乱』(1954/米)エドワード・ドミトリク
9.0『バリー・リンドン』(1975/米)スタンリー・キューブリック
9.0『祭りの準備』(1975/日)黒木和雄
9.0『ふたり』(1991/日)大林宣彦
9.0『弓』(2005/韓)キム・ギドク
9.0『アズールとアスマール』(2006/仏)ミシェル・オスロ
8.5『哀愁』(1940/米)マーヴィン・ルロイ
8.5『アフリカの女王』(1951/米・英)ジョン・ヒューストン
8.5『喜びも悲しみも幾歳月』(1957/日)木下惠介
8.5『北北西に進路を取れ』(1959/米)アルフレッド・ヒッチコック
8.5『アデルの恋の物語』(1975/仏)フランソワ・トリュフォー
8.5『震える舌』(1980/日)野村芳太郎
8.5『遠雷』(1981/日)根岸吉太郎
8.5『幻の湖』(1982/日)橋本忍
8.5『廃市』(1983/日)大林宣彦
8.5『異人たちとの夏』(1988/日)大林宣彦
8.5『ダイ・ハード』(1988/米)ジョン・マクティアナン
8.5『ダイ・ハード2』(1990/米)レニー・ハーリン
8.5『ハワーズ・エンド』(1992/英・日)ジェームズ・アイヴォリー
8.5『鳩の翼』(1997/英・米)イアン・ソフトリー
8.5『シックス・センス』(1999/米)M.ナイト・シャマラン
8.5『猟奇的な彼女』(2001/韓)クァク・ジェヨン
8.5『卍』(2006/日)井口昇
8.0『いちごブロンド』(1941/米)ラオール・ウォルシュ
8.0『素晴らしき日曜日』(1947/日)黒澤明
8.0『破れ太鼓』(1949/日)木下惠介
8.0『裸の太陽』(1958/日)家城巳代治
8.0『黒い十人の女』(1961/日)市川崑
8.0『飢餓海峡』(1965/日)内田吐夢
8.0『クロムウェル』(1970/英)ケン・ヒューズ
8.0『眺めのいい部屋』(1986/英)ジェイムズ・アイヴォリー
8.0『吉原炎上』(1987/日)五社英雄
8.0『マルサの女』(1987/日)伊丹十三
8.0『カミーユ・クローデル』(1988/仏)ブリュノ・ニュイッテン
8.0『ぼく東綺譚』(1992/日)新藤兼人
8.0『悪い女』(1998/韓)キム・ギドク
8.0『リトル・ダンサー』(2000/英)スティーヴン・ダルドリー
8.0『春夏秋冬そして春』(2003/韓)キム・ギドク
8.0『リリーのすべて』(2016/英・米・独)トム・フーパー
7.5『わが青春に悔なし』(1946/日)黒澤明
7.5『心のともしび』(1954/米)ダグラス・サーク
7.5『追想』(1956/米)アナトール・リトヴァグ
7.5『幸福』(1965/仏)アニエス・ヴァルダ
7.5『マーラー』(1974/英)ケン・ラッセル
7.5『ポゼッション』(1981/仏・西独)アンジェイ・ズラウスキー
7.5『愛と青春の旅だち』(1982/米)テイラー・ハックフォード
7.5『エイジ・オブ・イノセンス』(1993/米)マーティン・スコセッシ
7.5『ブレス』(2007/韓)キム・ギドク
7.5『カメレオン』(2008/日)阪本順治
7.0『マタ・ハリ』(1931/米)ジョージ・フィッツモーリス
7.0『汚れた顔の天使』(1938/米)マイケル・カーティス
7.0『花嫁の父』(1950/米)ヴィンセント・ミネリ
7.0『レッド・オクトーバーを追え!』(1990/米)ジョン・マクティアナン
7.0『ゴーストワールド』(2001/米)テリー・ツワイゴフ
6.5『逃走迷路』(1942/米)アルフレッド・ヒッチコック
6.5『ダイ・ハード3』(1995/米)ジョン・マクティアナン
6.0『下宿人』(1927/英)アルフレッド・ヒッチコック
6.0『ナポレオン』(1927/仏)アベル・ガンス
6.0『我が家の楽園』(1938/米)フランク・キャプラ
5.0『孔雀夫人』(1936/米)ウィリアム・ワイラー
5.0『アルファヴィル』(1965/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
5.0『女のみづうみ』(1966/日)吉田喜重
4.0『若草物語』(1933/米)ジョージ・キューカー
4.0『ろくでなし』(1960/日)吉田喜重
4.0『エロス+虐殺』(1969/日)吉田喜重
4.0『僕の彼女を紹介します』(2004/韓)クァク・ジェヨン
3.0『ステージ・ドア』(1937/米)グレゴリー・ラ・カーバ
3.0『カビリアの夜』(1957/伊)フェデリコ・フェリーニ
3.0『殿さま弥次喜多 捕物道中』(1959/日)沢島忠
3.0『山猫』(1963/伊)ルキノ・ヴィスコンティ
3.0『プラダを着た悪魔』(2006/米)デヴィッド・フランケル
3.0『四川のうた』(2008/中・日)ジャ・ジャンクー
3.0『そして父になる』(2013/日)是枝裕和
2.0『勝手にしやがれ』(1959/仏)ジャン=リュック・ゴダール
2.0『ビューティフル・マインド』(2001/米)ロン・ハワード
2.0『42 世界を変えた男』(2013/米)ブライアン・ヘルゲランド
1.5『イントレランス』(1916/米)D・W・グリフィス
1.5『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(1960/米)ロジャー・コーマン
1.5『女と男のいる舗道』(1962/仏)ジャン=リュック・ゴダール
1.5『煉獄エロイカ』(1970/日)吉田喜重
1.5『デルス・ウザーラ』(1975/ソ連・日)黒澤明
1.5『海にかかる霧』(2014/韓)シム・ソンボ
1.0『若者のすべて』(1960/伊)ルキノ・ヴィスコンティ
1.0『女は女である』(1961/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
1.0『はなればなれに』(1964/仏)ジャン=リュック・ゴダール
1.0『気狂いピエロ』(1965/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
1.0『ウイークエンド』(1967/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
1.0『告白的女優論』(1971/日)吉田喜重
1.0『ラムの大通り』(1971/仏)ロベール・アンリコ
1.0『愛の世紀』(2001/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
1.0『青の稲妻』(2002/中・日・韓・仏)ジャ・ジャンクー
0.5『軽蔑』(1963/仏・伊)ジャン=リュック・ゴダール
0.5『中国女』(1967/仏)ジャン=リュック・ゴダール
0.5『右側に気をつけろ』(1987/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
0.5『ヌーヴェルヴァーグ』(1990/スイス・仏)ジャン=リュック・ゴダール
0.5『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994/米)ロバート・ゼメキス
0.5『ユージュアル・サスペクツ』(1995/米)ブライアン・シンガー
0.5『アワーミュージック』(2004/仏・スイス)ジャン=リュック・ゴダール
0.5『ノーカントリー』(2007/米)コーエン兄弟
0.5『さらば、愛の言葉よ』(2014/仏)ジャン=リュック・ゴダール