1945年-1959年のミュージカル映画(100本)
点数(10点満点)『映画タイトル』(制作年/制作国)監督名
(同年の映画は点数順に並んでいます。
ネタバレもしていますがご了承下さい。)
- 6.0『アメリカ交響楽』(1945/米)アービング・ラッパー
- 6.0『錨を上げて』(1945/米)ジョージ・シドニー
- 5.0『ステート・フェア』(1945/米)ウォルター・ラング
- 2.0『今宵よ永遠に』(1945/米)ヴィクター・サヴィル
- 1.0『アラスカ珍道中』(1945/米)ハル・ウォーカー
- 1.0『ヨランダと盗賊』(1945/米)ヴィンセント・ミネリ
- 7.0『ブルー・スカイ』(1946/米)スチュアート・ヘイスラー
- 6.5『南部の唄』(1946/米)ハーブ・フォスター、ウィルフレッド・ジャクソン
- 4.0『雲去り行くまで/雲流るるはてに』(1946/米)リチャード・ウォーフ、ヴィンセント・ミネリ
- 2.0『マルクス捕物帖』(1946/米)アーチー・メイヨ
- 1.5『ハーヴェイ・ガールズ』(1946/米)ジョージ・シドニー
- 1.5『ジョルスン物語』(1946/米)アルフレッド・E・グリーン
- 1.5『ジーグフェルド・フォーリーズ』(1946/米)ヴィンセント・ミネリ
- 1.0『夜も昼も』(1946/米)マイケル・カーティス
- 7.0『地上に降りた女神』(1947/米)アレクサンダー・ホール
- 6.5『ポーリンの冒険』(1947/米)ジョージ・マーシャル
- 2.5『愛の調べ』(1947/米)クレランス・ブラウン
- 1.5『虹を掴む男』(1947/米)ノーマン・Z・マクロード
- 1.5『ニューオーリンズ』(1947/米)アーサー・ルービン
- 1.0『ダニー・ケイの牛乳屋』(1947/米)ノーマン・Z・マクロード
- 0.5『南米珍道中』(1947/米)ノーマン・Z・マクロード
- 8.0『踊る海賊』(1948/米)ヴィンセント・ミネリ
- 8.0『皇帝円舞曲』(1948/米)ビリー・ワイルダー
- 6.0『イースター・パレード』(1948/米)チャールズ・ウォルターズ
- 2.0『レディース・オブ・ザ・コーラス』(1948/米)フィル・カーソン
- 2.0『ヒット・パレード』(1948/米)ハワード・ホークス
- 1.5『赤い靴』(1948/英)マイケル・パウエル 、エメリック・プレスバーガー
- 1.5『ワーズ&ミュージック』(1948/米)ノーマン・タウログ
- 8.0『水着の女王』(1949/米)エドワード・バゼル
- 6.5『踊る大紐育』(1949/米)スタンリー・ドーネン
- 4.0『グッド・オールド・サマータイム』(1949/米)ロバート・Z・レナード
- 3.0『踊る龍宮城』(1949/日)佐々木康
- 2.5『ブロードウェイのバークレー夫妻』(1949/米)チャールズ・ウォルターズ
- 2.0『ラヴ・ハッピー』(1949/米)デヴィッド・ミラー
- 2.0『私を野球に連れてって』(1949/米)バスビー・バークレー
- 1.5『虹の女王』(1949/米)デヴィッド・バトラー
- 5.0『二人でお茶を』(1950/米)デヴィッド・バトラー
- 3.0『サマー・ストック』(1950/米)チャールズ・ウォルターズ
- 2.0『土曜は貴方に』(1950/米)リチャード・ソープ
- 1.5『アニーよ銃をとれ』(1950/米)ジョージ・シドニー
- 1.0『シンデレラ』(1950/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
- 0.5『ジョルスン再び歌う』(1950/米)ヘンリー・レビン
- 7.0『恋愛準決勝戦』(1951/米)スタンリー・ドーネン
- 3.0『巴里のアメリカ人』(1951/米)ヴィンセント・ミネリ
- 3.0『ムーンライト・ベイ』(1951/米)ロイ・デル・ルース
- 3.0『銀の靴』(1951/英)ブルース・ハンバーストーン
- 2.0『底抜け艦隊』(1951/米)ハル・ウォーカー
- 1.5『歌劇王カルーソ』(1951/米)リチャード・ソープ
- 1.5『ふしぎの国のアリス』(1951/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
- 0.5『ショウ・ボート』(1951/米)ジョージ・シドニー
- 7.0『百万弗の人魚』(1952/米)マーヴィン・ルロイ
- 6.5『栄光何するものぞ』(1952/米)ジョン・フォード
- 2.0『ベル・オブ・ニューヨーク』(1952/米)チャールズ・ウォルターズ
- 1.5『雨に唄えば』(1952/米) ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
- 1.0『わが心に歌えば』(1952/米)ウォルター・ラング
- 10.0『リリー』(1953/米)チャールズ・ウォルターズ
- 9.5『カラミティ・ジェーン』(1953/米)デヴィッド・バトラー
- 9.0『雨に濡れた欲情』(1953/米)カーティス・バーンハート
- 3.0『バンド・ワゴン』(1953/米)ヴィンセント・ミネリ
- 2.5『銀色の月明かりの下で』(1953/米)デヴィッド・バトラー
- 2.5『紳士は金髪がお好き』(1953/米)ハワード・ホークス
- 2.0『ピーター・パン』(1953/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
- 0.5『キス・ミー・ケイト』(1953/米)ジョージ・シドニー
- 2.0『ホワイト・クリスマス』(1954/米)マイケル・カーティス
- 2.0『略奪された七人の花嫁』(1954/米)スタンリー・ドーネン
- 2.0『喝采』(1954/米)ジョージ・シートン
- 1.5『グレン・ミラー物語』(1954/米)アンソニー・マン
- 1.0『スタア誕生』(1954/米)ジョージ・キューカー
- 1.0『ショウほど素敵な商売はない』(1954/米)ウォルター・ラング
- 1.0『フレンチ・カンカン』(1954/仏)ジャン・ルノワール
- 0.5『ブリガドーン』(1954/米)ヴィンセント・ミネリ
- 0.5『ナポリの饗宴』(1954/伊)エットレ・ジャンニーニ
- 0.5『カルメン』(1954/米)オットー・プレミンジャー
- 9.5『マイ・シスター・アイリーン』(1955/米)リチャード・クワイン
- 5.5『足ながおじさん』(1955/米)ジーン・ネグレスコ
- 3.0『わんわん物語』(1955/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
- 2.0『野郎どもと女たち』(1955/米)ジョゼフ・L・マンキーウィッツ
- 1.5『愛情物語』(1955/米)ジョージ・シドニー
- 1.5『オクラホマ!』(1955/米)フレッド・ジンネマン
- 1.0『七変化狸御殿』(1955/日)大曾根辰夫
- 1.5『王様と私』(1956/米)ウォルター・ラング
- 1.5『上流社会』(1956/米)チャールズ・ウォルターズ
- 1.5『ベニイ・グッドマン物語』(1956/米)ヴァレンタイン・デイヴィース
- 1.0『回転木馬』(1956/米)ヘンリー・キング
- 7.5『野ばら』(1957/独)マックス・ノイフェルト
- 5.5『パジャマ・ゲーム』(1957/米)ジョージ・アボット、スタンリー・ドーネン
- 5.0『パリの恋人』(1957/米)スタンリー・ドーネン
- 3.0『監獄ロック』(1957/米)リチャード・ソープ
- 3.0『絹の靴下』(1957/米)ルーベン・マムーリアン
- 2.5『渇き』(1957/印)グル・ダット
- 1.0『夜の豹』(1957/米)ジョージ・シドニー
- 0.5『嵐を呼ぶ男』(1957/日)井上梅次
- 0.5『女はそれを我慢できない』(1957/米)フランク・タシュリン
- 7.0『恋の手ほどき』(1958/米)ヴィンセント・ミネリ
- 4.0『南太平洋』(1958/米)ジョシュア・ローガン
- 3.5『ひばり捕物帖 かんざし小判』(1958/日)沢島忠
- 1.5『くたばれ!ヤンキース』(1958/米)スタンリー・ドーネン
- 4.0『お染久松 そよ風日傘』(1959/日)沢島忠
- 3.0『5つの銅貨』(1959/米)メルビル・シェイブルスン
- 1.0『眠れる森の美女』(1959/米)ケン・ピーターソン
- 参考文献
6.0『アメリカ交響楽』(1945/米)アービング・ラッパー
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作曲家ジョージ・ガーシュウィンの伝記映画で、『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』(1942年)が大変な成功を収めたのでワーナーが続けて発表した伝記映画だが(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』145p)、『アメリカ交響楽』は主人公のことを幼少期から丁寧に追っており面白い。
ただ全体的に演奏するシーンが多すぎて物語が希薄になっている。恋愛描写も丁寧でないのに、それでいてガーシュウィンが二人の女に惚れられるので感情移入は出来なかった。
6.0『錨を上げて』(1945/米)ジョージ・シドニー
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フランク・シナトラのなよなよした感じが面白く、140分近くあるがそんなに飽きなかった。ただ警察が水兵を連行するなど強引な展開は多いので完成度は高くはない。
ところで『錨を上げて』は戦争中中の1945年7月に公開されたミュージカル映画だが、日本の戦時中の映画は『五人の斥候兵』(1938年、田坂具隆監督)など禁欲的なイメージがあるが、米国の戦争プロパガンダ映画はエンターテイメント精神を忘れておらず、『錨を上げて』なんて休暇を貰えた水兵がウキウキとデートする話なのだから、戦争に勝つ国の余裕が見えた。
5.0『ステート・フェア』(1945/米)ウォルター・ラング
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ジーン・クレインは美人だと思うがプレイボーイな新聞記者がキザすぎて二人の恋愛が楽しめなかった。またジーン・クレインの弟役のディック・ハイムズのモテない感じは面白いが、最終的にハイムズとヨリを戻し結婚することになった元恋人は、一体どういう人物なのか劇中で一切描写がないのでガッカリした。
2.0『今宵よ永遠に』(1945/米)ヴィクター・サヴィル
(イメージ無し)
戦意高揚のためのバッドエンド
「団結していることを世界に知らせるため」という歌詞が歌われるように、映画の力点が戦意高揚に置かれている反面、物語や人間を描いておらず物足りない。リタ・ヘイワースの友人たちが空襲で死に、最後に彼女が泣きながら歌を歌うのは、あえてバッドエンドにすることで観客に怒りを催させる戦意高揚の仕掛けであろうが、それまでの人物像がイマイチなので急に死なれても悲しみや怒りはこみ上げなかった。
1.0『アラスカ珍道中』(1945/米)ハル・ウォーカー
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珍道中シリーズ第四作。ナレーション自体がどんどんボケてくるがほとんど笑わなかった。
1.0『ヨランダと盗賊』(1945/米)ヴィンセント・ミネリ
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前まで修道院にいたヨランダ(役;ルシル・ブレマー)は、莫大な遺産を継いだ後も夜な夜な守護天使像に話しかけるほど心神深い。そんな習慣につけこんだ盗賊のアステアは、ヨランダに電話をかけて自分のことを守護天使だと偽り、「神の姿のままでは会えないから旅行者の格好で行く」と伝えると彼女は喜ぶ。しかし、いくら信心深いとはいえ少女でもないのにそんなことを信じるのだろうか。設定にリアリティが感じられず、ヨランダの狂信的とも言える宗教心に私はついていけず気味が悪かった。終盤で「本物の」守護天使が登場し、ヨランダとアステアを結婚させるために大水で橋を流したり電車をバックさせたりするが、他の人にはいい迷惑である。
7.0『ブルー・スカイ』(1946/米)スチュアート・ヘイスラー
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片思いをするアステアは面白く、共感できた。全体的に静かなトーンで、それは別にいいのだが、友人とはいえ恋敵であるはずのクロスビーに対してアステアが理解がありすぎると思った。一度くらいは両者が激しくぶつかりあう場面があればもっと良かった。
6.5『南部の唄』(1946/米)ハーブ・フォスター、ウィルフレッド・ジャクソン
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制作費を減らすためにアニメのシーンを減らして俳優に演じさせた結果(ボブ・トーマス『ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯 完全復刻版』p222)、ディズニー初の本格的な実写映画が生まれた。黒人リーマスおじさんと少年との交流は面白く、本国では黒人に対して人種差別的だと批判されているようだが全然そうは思わなかった。ただ、挿入されているアニメーションではキツネのデフォルメされた嫌なやつっぷりがしつこいし、ウサギもあまり可愛いくない。
4.0『雲去り行くまで/雲流るるはてに』(1946/米)リチャード・ウォーフ、ヴィンセント・ミネリ
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作曲家ジェローム・カーンの伝記映画。ジェローム・カーンは「アメリカで生れ、アメリカ的な曲を書いた最初の作曲家であり、ガーシュインやロジャースに影響を与えたという点で、カーンを現代ミュージカルの創始者とするのに異論を唱える人はいない」(芝邦夫『ブロードウェイ・ミュージカル事典』、p35)というが、どんなに重要な人物だとしても映画としての面白さとは別であるので冷静に内容を判断する。
冒頭からドキュメンタリーのように「ショウ・ボート」の舞台が流れる。140分と長いわりに物語は淡々としていて、カーンも恋人とあっさり結婚するので盛り上がらない。ジュディ・ガーランドやフランク・シナトラが歌うシーンもあるが、今ひとつマニア向けの映画であることを脱し切れていない。ただ、カーンは自分の師匠の娘サリーがショウに出るからといって特別扱いせず、そのためにサリーと喧嘩になるシーンにはドラマがあり良かった。
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『カサブランカ』のパロディで、原題は『A Night in Casablanca 』である。しかし私にとって元ネタの『カサブランカ』をどれだけ引用できているかはあまり関係の無い話で、終盤のクローゼットでのギャグを除くとあまり笑えなかった。
1.5『ハーヴェイ・ガールズ』(1946/米)ジョージ・シドニー
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結婚相手を探すためにオハイオ州から電車で西部にやってきたジュディ・ガーランドは、酒場で粗野なごろつきに嫌がらせをされたので、仕返しに拳銃を二丁携えて再び酒場に乗り込み発砲するが、ガーランドは一見大人しそうに見えるのに行動が思い切りすぎていてついて行けなかった。また、ガーランドは結局ゴロツキの酒場のオーナーにキスをされることで二人の間の距離は一気に縮まってしまうが、キャラにも合わないし恋愛の描写もすっとばしているしで面白くない。もっと人間の葛藤や心の道筋が観たかった。ラストでは、ガーランドがならず者たちに「あなたたちに偏見があったかもしれない」と謝るが、拳銃を持ったゴロツキ達に偏見を持つのは当たり前だから謝る必要は全くないだろう。
ただ西部にやってきた人々の胸の高揚が歌と踊りにうまく表現されているとは思った。
1.5『ジョルスン物語』(1946/米)アルフレッド・E・グリーン
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歌手アル・ジョルスンの伝記映画であるが、「映画はジョルスンとその3番目の妻ルビー・キーラーのロマンスを重要なテーマにしているが、話としては最初の妻とし、名前もジュリー・ベルスンに変え」(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』153p)ているなど、伝記としての誠実さに欠ける。ストーリーは『ジャズ・シンガー』(1927年)に似ているが、親との対立はあまりなく平和である。歌を歌う場面が多く、ストーリー自体に起伏がなくて面白くない。
1.5『ジーグフェルド・フォーリーズ』(1946/米)ヴィンセント・ミネリ
(イメージ無し)
マニア向け
舞台のプロデューサーであるジーグフェルドにゆかりのあるミュージカルスター達のオムニバスであり、大きな話の筋はないので基本的に退屈で、ギャグも笑えない。フレッド・アステアやジュディ・ガーランドやレナ・ホーンが見たいマニア向けである。
1.0『夜も昼も』(1946/米)マイケル・カーティス
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作曲家コール・ポーターの伝記映画だが、彼はバイセクシャルなのにそこが描かれていないので誠実さに欠ける。淡々としたストーリーで、妻とも相思相愛の一目惚れなので恋愛映画としての面白さもない。同じくコール・ポーターの伝記映画である『五線譜のラブレター』(2004年)では彼がバイセクシャルであることが描かれるが、しかしこちらの映画も面白くない。
7.0『地上に降りた女神』(1947/米)アレクサンダー・ホール
(イメージ無し)
オチに不満
女神テレプシコラ(役;リタ・ヘイワース)は、舞台監督のラリー・パークスが自分を下品な女神として描いていると怒り下界に降りてくる。ラリー・パークスと交流するうちにリタ・ヘイワースは「女神でなく人間でいたい」と人間の存在を肯定するので、カルト宗教的な内容ではなく無神論者の私にも楽しめる。とくに、リタ・ヘイワースが女神に戻ってしまい、人間達に話しかけても気付かれなくて無視される場面は『素晴らしき哉、人生!』(1946年)を彷彿とさせて泣ける。
ただ、神の裁量で人の仕事を奪ったり競馬の勝敗を左右させたりするシーンでは、神が現実を変えていいのか?と疑問に思った。またオチだが、リタ・ヘイワースとパークスが天国で再会するシーンは宗教色が強く感動しなかった。私にとってはリタ・ヘイワースが人間となることを選び、パークスと一緒になるというラストの方が絶対に良かった。
6.5『ポーリンの冒険』(1947/米)ジョージ・マーシャル
(イメージ無し)
リアリズムがなく惜しい
サイレント映画女優パール・ホワイト(1889-1938)の伝記的な映画で、彼女を演じるベティ・ハットンは生き生きとしていて、スタント無しでカーアクションや馬から列車に飛び乗ったりとかしていて凄い。ただ、パールが撮影の手違いで気球に乗ったまま遭難するというシーンがあって、これは映画のために用意された嘘のエピソードだと思うが、普通気球で遭難したらタダでは済まない。また、舞台での事故で落下し脊椎を損傷したパールは、恋人と約束したからとその日にデートをして映画にも行くが、重傷とは思えぬほど元気そうなので痛がるそぶりや表情くらいはしてほしい。伝記的映画にするならもっとリアリズムと誠実性が必要だと思う。
2.5『愛の調べ』(1947/米)クレランス・ブラウン
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音楽家シューマン夫妻の伝記映画。クララ役のキャサリン・ヘプバーンが父親にシューマンとの結婚に反対されるのも束の間、序盤であっさり二人は結婚できるので、もっと時間を割いてドラマを増やしてほしかった。またキャサリン・ヘプバーンの役がいかにも古い貞淑な母といった感じで、キャラクターに奥行きが感じられなかった。
1.5『虹を掴む男』(1947/米)ノーマン・Z・マクロード
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出版社で校正係をしているダニー・ケイは妄想するのが好きなのだが、運転中に妄想して事故を起こしそうになるので、運転に集中しろと思った。また、妄想だか現実だか分からなくなった、という展開もコメディにしては笑いは弱いし、ドラマにしては人間が描かれない。原作の「虹をつかむ男」(ジェイムズ・サーバー著)は文庫本で12ページほどの短編にすぎなくてつまらなかったが、つまらない原作を無理矢理膨らましたところでつまらない映画にしかならないのが分かる。
1.5『ニューオーリンズ』(1947/米)アーサー・ルービン
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ルイ・アームストロングやビリー・ホリデイなどが出演して歌う、ジャズの入門映画みたいなものだが、ジャズに興味の無い人に訴えかけるほど物語やキャラクターが面白くない。ジャズ好きが見ればいい映画、という枠に収まっている。
1.0『ダニー・ケイの牛乳屋』(1947/米)ノーマン・Z・マクロード
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牛乳配達員ダニー・ケイの恋愛喜劇かと思いきや、ボクシングの世界チャンピオンを偶然KOしたということで脚光を浴び、ボクシング界に参戦するという突飛な展開になる。牛乳屋の設定が生かされていないし、ギャグもとくに笑えない。ちなみに私は人を殴るのは正当防衛に限ると思っていて、スポーツだとしても私は人を殴ろうと思わないから、ボクシングの面白さがそもそもよく分からない。
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珍道中シリーズ5作目で、ビング・クロスビーとボブ・ホープは出演していたショウをめちゃめちゃにして火事も起こしたが、そのままブラジルに逃げるので犯罪者である。国際指名手配をした方がいい。その後も「催眠術」などオカルトに頼って筋を進めるので捻りがなく、コメディとしても笑えなかった。
8.0『踊る海賊』(1948/米)ヴィンセント・ミネリ
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時は19世紀、持参金のない孤児であるジュディ・ガーランドは、噂に聞くマココという海賊のことを密かに思っている。そんな彼女に惚れたジーン・ケリーは彼女の気を惹くために自分が海賊マココなのだと嘘をつくが、彼が気の強いジュディ・ガーランドをものにできない様子は面白いし、さらにジーン・ケリーは国王代理や警察に本当に海賊だと思われ捕まるなど、物語の起伏もはっきりしていて楽しめる。私は海賊というマッチョな犯罪者に憧れる心にそもそも共感出来ないのだが、最終的にガーランドは海賊でないジーン・ケリーと結ばれる訳だから、彼女の犯罪者への幻想は打ち消されたと読めば納得できる。
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「私たちは一般大衆と違うの」と言う高邁な貴族のジョーン・フォンテーンに、市民階級のセールスマンであるビング・クロスビーが「おなじ血ばかりかけあわせているからおかしくなるんだ」などとかみついていくのは面白い。支配階級の皇帝もクロスビーとの対比が明確で、「我々と君たちは違う」とクロスビーを説き伏せる場面でも台詞に人間性が表われていた。ラストでジョーン・フォンテーンが「君主制 そんなものどうでもいいわ」と歌い上げクロスビーと結ばれるのは感動的だが、しかしもしこのままクロスビーが婿養子になるなら彼も貴族階級の仲間入りになるわけで、それでもなお彼らが君主制を批判するのか疑問である。最終的に身分を捨てたのかどうかは濁されスッキリしなかった。
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ダンサーのフレッド・アステアは、自分とコンビを組んでいた女(アン・ミラー)が一方的に抜けてしまった復讐に、安っぽい踊り子(ジュディ・ガーランド)を自らの手でスターにしようと企てる。ガーランドが「私の人生を利用されるのは嫌」とアステアに怒るなど人間同士の対立やドラマが描かれていて良かった。しかしアン・ミラーが男を裏切った嫌な奴として描かれ、一方でアステアが可哀想な人として描かれるので女性嫌悪が伝わってきてそこは嫌であった。
2.0『レディース・オブ・ザ・コーラス』(1948/米)フィル・カーソン
(イメージ無し)
母と娘が対立してほしい
60分ほどの低予算映画。マリリン・モンローは母親と共に踊り子としてショーをやっているが、二人ともかなり年が近いように見えるのでキャスティングに無理があると思った。序盤でモンローが「私はもう子供じゃないの」と母親に主張するので、母から独り立ちする娘の話かと思ったが、その後もずっと母を頼りにしているし喧嘩もしないので拍子抜けした。また、モンローに求婚した男に母が直接会って「バーレスクの女だと知ったらあなたの周囲は反対するのでは?」などと先回りして心配するが、これは逆に母親自身がバーレスクの女は恥ずかしい身分だということを告白してしまっている。自分のしている仕事にプライドがあればそんなことは言わないはずである。そんな母の矛盾を突いてモンローが母と対立すれば物語は面白くなるのだがそんな展開はない。
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女慣れしていないダニー・ケイがヤクザの女であるヴァージニア・メイヨを好きになる様子は面白いが、結局はダニー・ケイが女に利用されているという構図なので、観客は「男が可哀想」で「女が悪い」という印象を受けるので女性蔑視的で不快である。ラストでは、ダニー・ケイ達は音楽を演奏することでマフィアを撃退するのだが、楽観的すぎてギャグだとしても笑えなかった。
1.5『赤い靴』(1948/英)マイケル・パウエル 、エメリック・プレスバーガー
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恋愛はダメだとバレエのプロデューサーに忠告されている中、プリマドンナと作曲家の男が惹かれあっていくのだが、出会ってからしばらくは他人同士に見えていたのに、途中でいきなり恋に落ちているのは違和感があり、もっと丁寧に心の変化を描いてほしかった。ラストでプリマドンナに起こった事故は童話「赤い靴」のように悲劇にしたとしても、彼女にとってはあまりにも残酷で、しかもなぜ女性だけが酷い目に遭わなければいけないのか可哀想だし怒りを覚える。ダンスシーンには迫力があるが、内容が駄目すぎると思う。
1.5『ワーズ&ミュージック』(1948/米)ノーマン・タウログ
- 出版社/メーカー: ジュネス企画
- 発売日: 2016/01/25
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作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートの伝記映画であるが、ロジャースもハートもたいした恋愛のプロセスも無いまま女性と相思相愛になっていて私には楽しくない。またロレンツ・ハートはアルコールが手放せなくて「酒の飲み過ぎが原因で仕事への意欲を失ってしま」ったが(芝邦夫『ブロードウェイ・ミュージカル事典』、p30)、そういう描写は無くなぜ彼は若くして死んでしまったのかよく伝わってこない。伝記として中途半端で、それをカバーする面白さもない。
ジュディ・ガーランドやレナ・ホーン、ジーン・ケリー、ヴェラ=エレンなどスターが本人役で出てくるが、だからどうしたという感じで、ミュージカルマニア以外に訴えかける決め手がない。
8.0『水着の女王』(1949/米)エドワード・バゼル
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男をかわすエスター・ウィリアムズの振る舞いや、彼女に言い寄るリカルド・モンタルバンとの歌の掛け合いが面白い。また、冴えないレッド・スケルトンの滑稽な感じも面白く、そんな彼をベティ・ギャレットは(『踊る大紐育』や『私を野球に連れって』のように)積極的にものにしようとするが、ベティはそんなに美人ではないから許せる。レッド・スケルトンが身の上を偽っていたのを白状した時も、それでもベティは彼のことを好きで居続けるなど健気である。ただ、エスターが2回も仕事をすっぽかしてデートに行ったのにもかかわらず、職場からペナルティが無いなどリアリズムに欠けるところは冷めた。
6.5『踊る大紐育』(1949/米)スタンリー・ドーネン
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- 発売日: 2015/12/16
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それまでスタジオ撮影が多かったミュージカル映画において、大規模なロケ撮影を行った先駆的な作品。ベティ・ギャレットはそんなに美人ではないからフランク・シナトラに惚れても見ていて楽しいのだが、美人な人類学者アン・ミラーに一目惚れされたジュールス・マンシンにはムカついてしまう。唯一恋愛がうまくいかない役割のジーン・ケリーも、相手のヴェラ=エレンと同郷だということで一気に距離が縮まってしまうし、実はヴェラ=エレンが見世物小屋の踊り子にすぎないことが判明した際もジーン・ケリーは変わらず彼女を愛し続けるという展開も、男の方が懐が深いのが伝わるだけでヴェラ=エレンの魅力が伝わらない。曲やダンスやギャグは楽しめるが、登場人物が多いためにそれぞれの人間性にまで迫れていない。
ちなみにこの時は既に、フランク・シナトラの人気はマフィアとの付き合いなどで落ちており、「MGMは配役の順列を変え、ジーン・ケリーの名をフランクの上に掲げ」た(キティ・ケリー『ヒズ・ウェイ』180p)。
4.0『グッド・オールド・サマータイム』(1949/米)ロバート・Z・レナード
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本人達は知らないが、実は一緒の職場で働いているヴァン・ジョンソンとジュディ・ガーランドはペンフレンドで、先にヴァン・ジョンソンがそのことに気付くのだが、ジュディ・ガーランドに知らせないまま女の恋心を試すので性格が悪いと思う。またヴァン・ジョンソンは色男なのだが、ガーランドとの恋の話に絞れば良いのに、なぜわざわざ別の女性を出してヴァン・ジョンソンがモテることを鑑賞者に伝えなければいけないのか理解できない。バスター・キートン扮する冴えない男の方が好感が持てた。
3.0『踊る龍宮城』(1949/日)佐々木康
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龍宮城という設定も踊りもダサく、運動会の出し物を見ている気分になる。が、浦島太郎が現代にやってきて時代の変貌に驚く様が描かれるので、過去の時代にとどまる狸御殿シリーズよりは見ていられる。当時12歳の美空ひばりが歌を歌うシーンがある。
2.5『ブロードウェイのバークレー夫妻』(1949/米)チャールズ・ウォルターズ
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仲の良い芸人夫婦かと思いきやすぐ喧嘩する様は成瀬巳喜男の『鶴八鶴次郎』(1938年)を彷彿とさせるが、こちらはコメディがメインの明るい話でハッピーエンドである。途中で夫婦が別居するが、原因が妻の浮気なので、女性に非があるような脚本にしているのは少し気分が悪い。アステアが電話で演出家の振りをしてロジャースに演技指導をするとき、アステアの方が優れていてかつ心が優しいように描かれていて不公平な気がした。
靴が勝手に踊りアステアが踊らされる、というダンスはうまい。
2.0『ラヴ・ハッピー』(1949/米)デヴィッド・ミラー
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マルクス兄弟のグルーチョ、ハーポ、チコの兄弟最後の共演作品(DVDの「スタッフ・キャスト」より)。グルーチョ・マルクスは解説役としてナレーションをするだけだし、ナレーション自体も面白くない。ストーリーも女ボスが催眠術を使って宝石の場所を聞き出そうとするなどオカルトに頼っていて捻りがない。唖のハーポの動きのボケだけ笑った。
2.0『私を野球に連れてって』(1949/米)バスビー・バークレー
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ジーン・ケリーもフランク・シナトラも現役の野球選手なのに当然のようにショウに出演しステージで歌って踊っている。ジーン・ケリーは練習嫌いでデートばかりしていたところ、ショウのスカウトにダンスを見込まれ、野球のシーズン中に踊ってくれと言われるいるが、そんなことはありえないので冷めてしまう。野球チームの新しいオーナーが若い女性のエスター・ウィリアムズになったり、喧嘩に弱いシナトラの女が苦手な感じは面白いが、すぐエスターとシナトラは良い雰囲気になるので恋愛描写をサボっていると思った。
1.5『虹の女王』(1949/米)デヴィッド・バトラー
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舞台女優、マリリン・ミラーの伝記映画だが、物語に起伏が少なく心が揺さぶられない。また、彼女が「家名を汚すことになるわ」と自分のショウの出来に不安になるシーンがあるが、「家名」にこだわるというのは前近代の発想だから近代的価値観に重心を置く私には共感できない。人間を家名で、つまり生まれで判断してはいけないと思う。第一次世界大戦も表面的に絡んでいるだけで面白くない。
5.0『二人でお茶を』(1950/米)デヴィッド・バトラー
- 作者: 洋画
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ドリス・デイはショウの資金を手に入れるために48時間質問に「ノー」とだけ答え続けるという賭けをし、以後彼女は全ての質問に「ノー」と答えていく、という設定は面白い。が、逆に言うとそれだけで、もっと物語に展開がほしかった。また、性格の悪いフィアンセだった男が身を崩してタクシードライバーに転落するというオチだが、これは当時の制作者達がタクシードライバーを見下したからこそ成立するオチだから良い気分はしない。
3.0『サマー・ストック』(1950/米)チャールズ・ウォルターズ
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ジュディ・ガーランドは農家の娘で、気の強いしっかり者の役柄が彼女にあっている。妹は劇団員で、劇団のリーダーのジーン・ケリーと恋仲になっているが、ケリーは妹から姉のガーランドの方に乗り換える。しかしこれは普通に妹が可哀想である。ケリーを失った妹はガーランドの許嫁だった男と結婚することになるが、妹はあれほど頑張っていた舞台の仕事を姉に譲りあっさりやめてしまうのも不可解である。妹は自分の人生に悔いはないのか、葛藤はないのか、姉に何か言いたくないのかと疑問である。
2.0『土曜は貴方に』(1950/米)リチャード・ソープ
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芸人のフレッド・アステアは、怪我をしている間に妻に養われていると思われたくない、という見栄で芸人のパートナーであるヴェラ=エレンのプロポーズを断るが、ヴェラ=エレンのような美人の求婚を断るのはどうかしていると思うから共感できなかった。全体的にコメディタッチの映画だがそんなに笑えるわけでもない。バート・カルマーとハリイ・ルビイという実在するダンサーとミュージシャンの伝記映画とのことだが、伝記の良さや面白さがあるわけでもないし、そもそもモデルが伝記にするほど面白い人物ではなかったのかもしれない。
1.5『アニーよ銃をとれ』(1950/米)ジョージ・シドニー
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射撃の名手アニー(ベティ・ハットン)は読み書きが出来ず粗暴で、冒頭で薄汚い格好で登場してモテない女の悲哀を歌うのは面白い。そんなアニーが序盤で簡単に男(ハワード・キール)に一目惚れして、一気に乙女みたいになるのは茶番である。もっと男を好きになるまでのプロセスを描写するべきである。ふつう男並みに射撃が上手ければ男をライバル視するから、簡単に恋に落ちないほうが自然である。アニーはその後、ショウの一座に加わって一気に汚い身なりからめかし込むが、それについての彼女の感想は省かれ物足りない。また、ショウで成功したアニーは王女や貴族から勲章や宝石を貰って嬉しがっているが、身分制への批判的意識がまったく欠けている。元々貧乏だったアニーは、低い階級出身の人間としてのプライドはないのか、自分の生まれが貧しいことからくる怒りはわかないのか、と疑問である。冒頭は面白いがどんどん尻すぼみする映画であった。
ちなみに実際にアニーという女射撃手がいたのだが、「ストーリーは特に史実に忠実というわけではない」(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』173p)から伝記の価値も無い。
1.0『シンデレラ』(1950/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
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シンデレラが普通に動物たちと会話が出来ていて世界観が掴めなかった。全編通してトムとジェリーのようなネズミ達と猫の追いかけっこのシーンが長く、もっと人間性を描いてほしかった。トムとジェリーはワーナー・ブラザーズのアニメで、ディズニーも真似したかったのか知らないが、これではほとんどネズミと猫の映画である。舞踏会では、王子はたくさんの美女からアプローチされるのに、王子本人は目当ての女がおらず飽き飽きしてあくびをするので、私には意味が分からず女性を見慣れている人間にムカついた。また、王子とシンデレラは一目惚れをして恋に落ちるだけだから特に恋愛描写もない。最後、「夢を信じ続ければ いつか必ず夢はかなう」という歌で締めくくられるが、シンデレラは元々家柄が悪くないし何より美人だから夢が叶ったのだろうし、一般人が夢を叶えるには努力や勉強をしたほうがいいのであって信じるだけではダメだろう。あと私は金髪の女性にフェチを感じないので、「良い性格の女性の髪は金髪で、意地悪な女性(継母や姉)が黒髪や赤毛」という設定には感心しない。
0.5『ジョルスン再び歌う』(1950/米)ヘンリー・レビン
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前作『ジョルスン物語』(1946年)のラストシーンの続きから始まる。ジョルスンは「結婚は1回してる」というが、史実ではすでに2回結婚しているのは前項で述べた。新しい女性とすぐ相思相愛になり結婚するので恋愛描写がなく機械的なストーリー展開で楽しくない。また、ジョルスンが復活して人前で歌うと思ったらすぐ仕事をやめるしで、全然ドラマになっていない。自伝映画の中で自伝映画を撮るというメタ的な展開にもなるがこれも蛇足で、続編を作るほどでもなかった。
7.0『恋愛準決勝戦』(1951/米)スタンリー・ドーネン
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原題は「Royal Wedding」(皇室の結婚)で、ダンサーの兄妹であるフレッド・アステアとジェーン・パウエルは王様と王女という演目を踊るシーンから始まる。アステアはサラ・チャーチル(ウィンストン・チャーチルの娘)に惚れるが、なかなか恋が上手くいかない様子は楽しく、椅子や壁や天井で踊るシーンは彼の片思いの心境が表現されていて心を揺さぶられる。今のところ私が見たミュージカルのダンスの中で一番面白い。ただ、アステアは「ぼくは結婚するタイプではない」と言い出してサラ・チャーチルとの結婚を一旦は諦めるものの、女王の結婚パレードを見て感動して結局結婚することに考え直すが、これは身分制を称えるプロパガンダに過ぎないから私は嫌である。
3.0『巴里のアメリカ人』(1951/米)ヴィンセント・ミネリ
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ジーン・ケリーはパリで画家を目指しているのだが、貧乏だと言っているわりに格好が綺麗だし芸術家のわりに暗いところがないし不自由ない生活をしていておかしい。彼はその後金持ちのマダムに惚れられてパトロンになってもらうが、ケリーがもっと汚くないと対比にならないし楽しくない。また、ケリーはフィアンセがいるレスリー・キャロンに惚れ振り向いてもらおうとするが、恋愛がうまくいかない側だとはいえケリーは洗練されていて格好よすぎるので私は今ひとつ感情移入しきれなかった。最終的に二人は結ばれるのだが、レスリーがフィアンセとどうけじめをつけたのかなども描かれずドラマとしても物足りなかった。
3.0『ムーンライト・ベイ』(1951/米)ロイ・デル・ルース
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男に混じって野球をするなど活発なドリス・デイは面白いが、序盤ですぐドレスを着てしまうので持ち味が殺されている。また彼女は中盤で足を骨折して松葉杖をつくことになるが、これも活発なキャラクターが死んでしまっている。野球が好きという設定もその後は雪合戦で雪を投げるくらいしか生かされていない。ゴードン・マクレーと恋に落ちるのも早すぎるが、さらに腹立たしいことにこの男は「結婚制度には反対だ」「結婚は女性には奴隷 男には墓場だ 愛してるからって因習に縛られることはない」などとドリス・デイの求婚を断ったりする。自分がモテる男だからこそ言える高見からの台詞である。私としては、ドリス・デイに求婚されながら結婚を渋るゴードン・マクレーより、彼女片思いをしながら全然報われないジャック・スミスの方が感情移入できたが、彼はドリス・デイに全く相手にされないし、彼女の弟に帽子を破壊されるなど陰湿なイタズラを受けるしで可哀想であった。
3.0『銀の靴』(1951/英)ブルース・ハンバーストーン
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ヴェラ=エレンの婚約者が大富豪だというデマを舞台関係者達が信じ、踊り子に過ぎなかったヴェラ=エレンが主役に抜擢される。そんな噂を聞きつけた大富豪本人がヴェラ=エレンに会いにくると、本当に惚れてしまうという話。しかしその勘違いだけで100分の映画を持たせようとするのは退屈で、ギャグとしてもあまり笑えなかった。
ちなみに『恋をしましょう』(1960年)も似た筋だが、『恋をしましょう』の方が大富豪の人となりがしっかりと描かれていたのでこちらの方が面白かった。
2.0『底抜け艦隊』(1951/米)ハル・ウォーカー
(イメージ無し)
話が散漫
ジェリー・ルイスのなよなよした感じはいいが、ほかの役者がジェリー・ルイスで笑っているので冷めてしまった。ディーン・マーティンもただの説明役になっていてコンビネーションが感じられない。話の筋も、入隊したかと思ったら上陸してボクシングをやったり、女優とキスできるかどうか賭けをしたりと散漫であった。
1.5『歌劇王カルーソ』(1951/米)リチャード・ソープ
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実在するオペラ歌手エンリコ・カルーソの伝記映画だという。歌手になりたいカルーソは、義理の父の会社を手伝う約束を破り妻と別れることになるが、私としては妻がそれをどう思うのか、別れることに賛成なのか反対なのか知りたいのにそういうシーンは省かれており、妻の扱いが悪く可哀想だと思った。その後のカルーソはとんとん拍子にスターになっていくだけで面白くないし、病気で死ぬところも、カルーソが魅力的な人間として描けていないので私は悲しいと思わなかった。
1.5『ふしぎの国のアリス』(1951/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
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原作小説(ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』)同様ストーリーはなく夢オチで終わり、今の私には退屈だった。アリスは今までのディズニーアニメの絵からすると可愛いが、あまりにも子供すぎて思春期的な片鱗がなく、異性のことをどう思っているかも分からないから色気もなく私には興味が出なかった。また、「花」の女達がアリスをいじめる場面は、大人の女性のイメージを醜悪に描く女性嫌悪が感じられて嫌だった。一方でアリスの行動原理は「ウサギがどこに行くのか知りたい」しかなく、しかもその好奇心によって道に迷い途方に暮れ、「好奇心だらけの私はいつもバチが当たる 私はこれからはちゃんとしていくわ」と泣いて歌うので、好奇心を持つことが悪く描かれている。しかし好奇心を持つことは全く悪くないし、知識を身につけることによって大人になることは私は素晴らしいことだと思う。ここには「女性が好奇心を持つのは良くない」という、無垢な処女を賛美するメッセージ性がある気がするが、私は大人の女性の方が好きなので共感できない。
0.5『ショウ・ボート』(1951/米)ジョージ・シドニー
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『ショウボート』(1936年)のリメイクだが、相変わらず黒人女性役を白人がやっている。ギャンブルに溺れ妻子を捨てた男が、すぐに妻と愛を取り戻すがそんなことはありえないし、そこからどう家庭を再構築していくかが問題なのに一切触れずに強引にハッピーエンドで終わらしていて納得できない。再映画化した意味が分からない。
7.0『百万弗の人魚』(1952/米)マーヴィン・ルロイ
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水泳選手で女優だったアネット・ケラーマンの伝記映画で、エスター・ウィリアムズ彼女を演じる。エスターがボストンの海を泳いで渡ろうとした際、彼女の露出度の高い水着が市民の間で問題となる。「(従来のスカートのような)水着では長距離を泳げない」とエスターが主張するも、結局企画は中止となり、「偽善者!」と怒る彼女は的を得ていて格好良い(ただ皮肉にも、現代では水着の面積が多い方が泳ぎやすいということになっているが)。終盤彼女は、自分を愛している興行師の男から贈られた指輪をせず、別の男と会ってから映画撮影に臨むと、撮影中事故に遭い危うく命を落としそうになる。しかしこれでは彼女が指輪をせず男を裏切ったために罰が当たったように見えるので、こういう迷信じみた演出には私は反対である。
6.5『栄光何するものぞ』(1952/米)ジョン・フォード
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映画『栄光』(1926年)のミュージカル化(1926年版は未見)。第一次世界大戦中のフランスが舞台で、米軍が駐留している。戦火は一旦おさまっており大尉のキャグニーと曹長のダン・デイリーは同じ女をめぐって争うなど前半はコメディに近い。後半になると彼らも戦線に出て行き過酷な任務をこなしていくが、戦争を美化せず平和主義過ぎずありのままに描いていて良いし、フィアンセが死んだことを悟ったフランス人女性の顔にも引き込まれる。ただし、ミュージカル要素は全くなくなる。その後、任務を果たしたキャグニーとダン・デイリーはどちらが女と結婚するかでまた揉めだし、一触即発になったと思ったのも束の間、中隊に新たな命令が下る。女のことは忘れられ、キャグニーとダン・デイリーが連れだって戦線に戻っていく様は、女には可哀想なことではあるが、戦争とはそういうものであるから別に女性蔑視的な内容ではないと思う。
ただ、「軍人という職業には何か分からぬが信仰に通ずるものがある」というキャグニーの発言があるが、宗教に関心の無い私にはどういうことなのかよく分からなかった。
2.0『ベル・オブ・ニューヨーク』(1952/米)チャールズ・ウォルターズ
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モテて仕方のないアステアは女を侍らせており婚約者もいるが、救世軍として歌っているヴェラ=エレンに惚れる。彼女はまじめなので相手にしない…と思いきや、ほとんど一目惚れのようにアステアを意識するのでガッカリする。すげなくアステアを振るからこそ、そこからどうやってヴェラ=エレンと結ばれるのか観客は気になってハラハラするのに、全く分かっていないと思った。また、アステアやヴェラ=エレンが恋をしたことにより空を飛べるようになるというファンタジー要素があるが、空中を只歩くだけで工夫がなかったので『恋愛準決勝戦』(1949年)の方が面白い。
1.5『雨に唄えば』(1952/米) ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
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映画スター役のジーン・ケリーが半生をふり返るが、映画出演もすぐ決まり女とすぐ相思相愛になるなどモテ男で、特に挫折のない人生を淡々と語っているだけでつまらない。しかもジーン・ケリーは恋人リナ(ジーン・ヘイゲン)を大切にしないで浮気をし、最終的に恋人を乗り換えるのでリナが可哀想である。それについてリナが意見を発したり弁明するシーンもなく不公平である。また、サイレントからトーキーへの移行期の話が軸になるなど映画マニアのための映画という感じで、一般の人が観て楽しめるかは分からないし、声が変でトーキー映画に生き残れないリナを笑い者にするボケばかりで辟易した。もっと人間のドラマが見たいのに、なんとなくコメディ風にして流している映画であった。
ちなみに「Singin' in the rain」という曲も『ハリウッド・レヴィユー』(1929年)で用いられた曲をカバーしているに過ぎない(『ザッツ・エンターテイメント』1974年より)。
1.0『わが心に歌えば』(1952/米)ウォルター・ラング
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歌手ジェイン・フロマンの半生を描いた映画で、冒頭に「この物語は実話である」と出るが、主人公はとんとん拍子で仕事も恋愛も成功していくだけでムカついてくる。米兵を慰問する途中、飛行機事故で右足を複雑骨折し、不自由な脚のまま慰問の旅を再開するが、これはあからさまな美談で面白くない。その後も表面的な慈善が展開されるだけで、慰問先の兵士たちも明るすぎて違和感がある。歌手が慰問したくらいのことで傷ついた兵士たちの心が癒えるとは思えない。人間を描こうという気概もが見えず、かなり表面的に戦争を扱っていて、見終わっても印象に残らない映画である。
10.0『リリー』(1953/米)チャールズ・ウォルターズ
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原作のポール・ギャリコの短編小説「七つの人形の恋物語」も面白いが、映画では主人公のレスリー・キャロンに主体性が与えられはっきり自分の意見を述べていて魅力的だし、人形使い役のメル・フェラーの性格もキツすぎず人間味が加わっていて感情移入ができる。また原作では人形使いが一人だけで何体も人形を動かしているというありえない設定だったが、こちらではメル・フェラーの仕事のパートナーとしてカート・カズナーが登場しリアリズムが付与されており、加えてカズナーはレスリーとフェラーの間もうまく取り持っている。長さは82分であるが無駄なく十分に人間が描けており、減点するところが見当たらない傑作である。
ちなみに人形使いのメル・フェラーはオードリー・ヘプバーンの最初の夫である。
9.5『カラミティ・ジェーン』(1953/米)デヴィッド・バトラー
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ドリス・デイの男っぽいガンマン姿はハマり役で、『ムーンライト・ベイ』(1951年)や『銀色の月明かりの下で』(1953年)などの出演作に比べても、圧倒的に長いあいだ性別にとらわれない魅力を生き生きと発揮している。中盤ではドリス・デイは都会から来たアリン・アン・マクレリーによってオシャレを教えてもらい家も改装し、好きな男に振り向いて貰おうとする。ほどなく男が家を訪ねて来て、さぞドリス・デイがオシャレに変身したのかと思えばドレスが泥で汚れていたりと、彼女の洗練された姿がうまく遅延され焦らされている。ここで焦らすことにより観客は余計洗練されたドリス・デイが見たくなり、終盤での美しいドリス・デイにカタルシスを感じるのである。細かい演出もうまいし、その一つ一つが登場人物の感情を申し分なく表現しており傑作である。
ただ一つ気になるのは、ドリス・デイがすぐ拳銃をぶっ放しすぎるところで、特に友人から恋敵になったアリン・アン・マクレリーに発砲するところは女の嫉妬というものを醜く大げさに描いていると思った(もっとも西部劇に「拳銃をぶっ放しすぎる」と指摘するのもおかしいのだが)。ほぼ満点。
9.0『雨に濡れた欲情』(1953/米)カーティス・バーンハート
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原作はサマセット・モームの短編小説「雨」だが、原作よりかなり面白い。戦後、リタ・ヘイワースが海軍の駐留する南の島に立ち寄るとたちまち兵士達の間で人気者になるが、彼女はすぐには男になびかず気丈に振る舞っているのが格好良い。後に宣教師ホセ・ファーラーによって島から米国に強制送還されそうになった時も、リタ・ヘイワースは論理的に総督やホセ・ファーラーと話して対決をするのも良い。原作では同性愛者のサマセット・モームらしく女性を悪役にしていたが、この映画では全く逆に女性が魅力的に描かれていて、対照的に宣教師ホセ・ファーラーのカルトぶりを摘発しているので面白かった。ホセ・ファーラーは『ケイン号の叛乱』(1954年)での有能な弁護士役も良かったが、『雨に濡れた欲情』での理想が高すぎてカルト化した宣教師という悪役も見事にはまっている。
ところで劇中で、リタ・ヘイワースにはいかがわしい店で歌っていた過去があるのだが、それを知っていたホセ・ファーラーに「売春婦だ」と言われ彼女が激怒する場面がある。リタ・ヘイワースが本当に売春していたのかどうかは別として、「売春婦だ」と言われて怒るということは彼女も売春婦を下に見ているということである。性産業があることで世の中はある程度のレイプを防げており、風俗嬢は社会貢献をしているはずだから、私は売春婦を下に見てはいけないという思いからここは減点した。ちなみに日本では売春は違法だが(口で性行為をするピンサロなどの準売春は合法)、「ヨーロッパ諸国ではエイズの出現以後、性病の蔓延を防ぐ目的もあり、オランダ、ドイツ、フランス、英国等で、漸次売春は非犯罪化されていった」ため日本でも売春を「合法化し、しかるべき規制によって性病の広まりを抑えるのが現実的な方向性だ」(小谷野敦『日本売春史――遊行女婦からソープランドまで』p211)とする小谷野の主張に私はなるほどと思った。
3.0『バンド・ワゴン』(1953/米)ヴィンセント・ミネリ
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フレッド・アステアとシド・チャリシーの恋愛のゆくえはわりと丁寧に描かれている。歌や踊りも個別で楽しめるが、しかし一つ一つのショウにつながりがないので長篇らしさがなく物足りない。実在の映画俳優などの名前がたくさん出てくるし、アステア達が行うショーのモチーフが「現代版ファウスト」であるなどキリスト教の知識も出てくるので、インテリ層や映画マニアの内輪ウケを狙った映画であり私にもよく分からず、一般の人が見てもピンとこないと思う。
2.5『銀色の月明かりの下で』(1953/米)デヴィッド・バトラー
- 出版社/メーカー: ジュネス企画
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『ムーンライト・ベイ』(1951年)の続編。機械工のように車を修理するドリス・デイは面白いが、これも前作同様すぐ花嫁姿になってしまう。前作ではドリス・デイとゴードン・マクレーの結婚は親の了承を得てハッピーエンドという締め方だったのに、ゴードン・マクレーは脳がリセットされたかのように結婚を渋るし、「女性が男の世界に踏み入ることは許されない 政治もね」などと大学のインテリだったはずのキャラに合わないことを言う。
一方で、七面鳥を飼っている弟に、この鳥は食べられる運命なんだよということを両親が伝えられない、と葛藤する場面は面白かったが、弟が七面鳥を逃がして以降このことは話題にならなくなったので物足りず、せめて終盤で再度七面鳥を登場させればいいのにと思った。また父親が浮気をしていると家族が早とちりするが、誤解を引っ張りすぎていてリアリズムに欠けており、コメディとしても飽きた。ドリス・デイに片思いをしながら全然報われないジャック・スミスも出てくるが、最後のカットには登場すらさせて貰えないなど前作以上に扱いが悪い。全体的に、前作を繰り替えてしているだけだった。
2.5『紳士は金髪がお好き』(1953/米)ハワード・ホークス
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)
- 発売日: 2012/08/03
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マリリン・モンローのミュージカル初主演作品(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』191p)。金持ちの男が好きなマリリン・モンローと、愛があればお金はいらないというジェーン・ラッセルの女コンビなのだが、ジェーン・ラッセルは「スポーツ選手が好き」とマッチョな男が好きなようだから私は共感しない。しかも「オリンピック選手が好き」とも言っており、オリンピック選手が貧乏なわけないのだから「お金はいらない」という宣言と矛盾しており、マリリンとのキャラの対比も明確でない。また、マリリンが窃盗したと誤解され訴えられた時、頭の切れるジェーン・ラッセルが金髪のカツラを被ってマリリンになりすまし裁判を切り抜けるなど強引な展開が多い。ただ、原作の小説(アニタ・ルース『紳士は金髪がお好き』)よりは楽しめるとは思うので2.5点にした。
2.0『ピーター・パン』(1953/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
- アーティスト: オリヴァー・ウォレス
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- 発売日: 2003/05/23
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ウェンディに母性がありすぎて年頃の少女らしさがない。また、ティンカーベルはかわいいのだが出番は少なく、ウェンディに焼き餅を焼くという設定がしつこい。もっとも原作小説(ジェイムズ・バリ『ピーター・パン』)でも出番が少ないし嫉妬してばかりしているなど扱いが悪いのだが。海賊との闘いもピーターパン以外は活躍しないので、登場人物が多いだけで個人が描けておらず、設定を持て余しているという印象を受けた。
0.5『キス・ミー・ケイト』(1953/米)ジョージ・シドニー
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2003/07/04
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別れた男(ハワード・キール)と女(キャサリン・グレイスン)はなおも劇団員同士で、仲が悪いのかと思いきや、開始早々楽屋で一緒に歌を歌うだけで昔のような恋心が復活するので意味が分からない。また、妻に平手打ちされたことに怒った男が妻のお尻を何度も叩きまくるシーンがあり、椅子に座れないほど彼女は痛がるが、ギャグだとしても趣味が悪いと思った。最終的に前妻は「主人の足下に手を置くのです 従順の証として」と歌い男に跪いて終わるので、ヨリを戻してもまた男に殴られるんだろうなあと思った。ちなみに原作はシェイクスピアの『じゃじゃ馬馴らし』で、こちらも夫が妻を「調教」するために食事を与えず眠らせないなどのシーンがあり嫌である(『じゃじゃ馬馴らし』ちくま文庫、p138、p149)。
2.0『ホワイト・クリスマス』(1954/米)マイケル・カーティス
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- 発売日: 2007/11/22
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ダニー・ケイが女性にいきなり「君達は家庭や子供に興味ある?」と質問するのは怖いが、彼女たちも「YES」と普通に答えていて変である。クロスビーも「家庭や子供を持つ気のない女」を批判しており、家庭的な女性を賛美するメッセージがクドい。また、ダニー・ケイは色男で今までヴェラ=エレンの手を握ったりしていたくせに、彼女に迫られた途端にウブになるのもキャラが定まっていない。戦時中1500人の部下がいた将軍が失業軍人として落ちぶれていたりとか、いい味を出す脇役はいるが、主人公達に感情移入できず楽しめなかった。
2.0『略奪された七人の花嫁』(1954/米)スタンリー・ドーネン
掠奪された七人の花嫁 スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]
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一足先に結婚できた長男のアドバイスで、弟6人は古代ローマ人のように略奪結婚をする。もちろん、過去に略奪結婚で幸せになった夫婦もいるのだろうが、それは古代の話であるし、19世紀とはいえ6組全ての略奪結婚がハッピーエンドになるのはおかしい。ここには女は無理矢理ものにしてしまえばいいというマッチョな思考を感じて気分が悪くなった。私は近代的価値観は基本的に守った方が良いと思っているから、前近代のやり方を美化する人々には共感できない。また、主要登場人物が単純計算で14人居るがそれぞれの人間性を浮き彫りにしているとは思えない。
2.0『喝采』(1954/米)ジョージ・シートン
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酒に溺れた落ち目のスター俳優ビング・クロスビーが主人公。彼は自動車事故で息子を失っているが、息子の思い出は劇中では短くフラッシュバックされるだけで物足りない。もっと当時のことを長尺で振り返り、息子がどういう子供だったのかを描写してもらわないと感情移入が出来ない。また、クロスビーから酒を遠ざけようとする妻(グレース・ケリー)を、舞台演出家が「なぜ(夫の)底まで管理したい」のだと非難し、「(あなたは)怪物に見える」とまで言うが、これはアル中の夫の妻としてむしろ手ぬるいくらいで、妻を責める演出家に腹が立った。終盤でようやく演出家が妻に心を開くが、彼は事情が分かったとたん妻にクロスビーを世話するよう頼むなど都合が良く、しかも彼女のことを「怪物に見える」と言ったことへの謝罪はない。またなぜか演出家は妻にキスをするが、妻は妻でキスをされて「女として見られたのは久しぶり」と急にしおらしくなるのでこのシーンはバカが考えたと思う。ラストはクロスビーがアル中から抜け出してハッピーエンドというものだが、現実にはアル中がそんな簡単に治るはずがないのは吾妻ひでおの『アル中病棟』などで伺える。
1.5『グレン・ミラー物語』(1954/米)アンソニー・マン
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スウィング・ジャズの代表的なミュージシャンであるグレン・ミラーの伝記映画だが、物語が凡庸である。ミラーの恋人(役;ジューン・アリスン)も気が強いのかと思ったら自分を主張することが全然なく魅力的じゃないし、恋愛描写も物足りないまま二人は結婚する。ミラーが戦争協力をしたり(それ自体が悪いとは言わない)、戦争中に消息を絶ったりしたことを称えるために映画に過ぎないのではないか。実際、映画が盛り上がるのは最後の悲劇しかない。
1.0『スタア誕生』(1954/米)ジョージ・キューカー
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1.0『ショウほど素敵な商売はない』(1954/米)ウォルター・ラング
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芸人一家ドナヒュー家の伝記映画だが、戦争を挟んでいるとは思えないほど華やかで苦労を描くシーンがほとんどない。家族愛をそれっぽく描いているだけで面白さが分からなかった。
1.0『フレンチ・カンカン』(1954/仏)ジャン・ルノワール
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ジジイの色男ジャン・ギャバンは、ショウの才能のある洗濯女を自分のものにするため、彼女のパウロという若い恋人から奪った。しかしギャバンは用が済んだら洗濯女を捨てるので可哀想だが、その洗濯女はパウロの元にも返らないので、パウロも可哀想である。全体的に、権力を持つモテジジイが人の人生をかきまわす話で不愉快だった。ギャバンは開き直り、「俺は平穏には暮らせない、そんなことをしたらダメになる」と自分が女に酷い扱いをするを正当化する台詞を吐くなど腹立たしい。他にも、女に振られて拳銃で自殺未遂をした中東らへんの王子が、すぐに回復して女とデートしているのはリアリズムに欠けているし面白くない。またダンスシーンでは、女達がスカートをめくって踊るフレンチカンカンで映画を盛り上げようとしているが、今を忘れて踊り狂えば良いというようなヤケクソなメッセージに読めるから得るものが無い。
0.5『ブリガドーン』(1954/米)ヴィンセント・ミネリ
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村人が一人でも外に出ると消滅してしまうという村が舞台で、外の世界に出て行こうとした村人を殺してハッピーエンドになるというかなり酷い話である。米国からやってきた旅行者ジーン・ケリーも、近代社会を捨てて200年前の暮らしをする楽園の住人となることに同意するが、これは現実逃避的な後ろ向きの決心である。前近代的な息苦しいムラ社会を肯定している反動的な内容で全く共感できない。
0.5『ナポリの饗宴』(1954/伊)エットレ・ジャンニーニ
(イメージ無し)
オムニバス形式の典型的な失敗
ナポリにまつわる伝説や民話を10分強で繋いでいくオムニバス構造だが、個々の短編が面白い訳でもないし、それが響き合って長編として面白いということも全くない(そもそもオムニバス映画が長篇として面白いことなどほぼ全くありえないと思うが)。第一次大戦や第二次大戦など、むりやり政治を絡めようとしている姿勢も面倒臭い。
0.5『カルメン』(1954/米)オットー・プレミンジャー
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メリメの小説『カルメン』自体が私には面白くないので、映画化しても退屈だった。原作同様、「女なんてもんは男の人生を狂わせるんだ」という女性への嫌悪感が伝わってきて楽しくないし、ラストで男が女を殺すシーンもただ女が可哀想なだけに見えた。オール黒人キャストということだが、政治的な主張も特に見られないので何のために黒人を使っているのか分からない。ちなみに奇妙なことに、オール黒人映画であるが色の薄い黒人と色の濃い黒人のうち、悪役は色の濃い黒人達が務めているからそれはそれで差別である。
9.5『マイ・シスター・アイリーン』(1955/米)リチャード・クワイン
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ベティ・ギャレットはこれまで『水着の女王』(1948年)、『私を野球に連れてって』(1949年)、『踊る大紐育』(1949年)など美人ではないが男に積極的にアタックして結婚を勝ちとる強かな女を演じていたが、このベティ・ギャレットはモテなくて男性不信になるなど哀愁があり、思わず応援したくなるほどはまり役である。自分のことが好きらしいと感じているジャック・レモンにさえベティがつれない態度をするのは、彼女の繊細な心情が表現できている証であり面白い。また、ギャレットの妹役ジャネット・リーに惚れるボブ・フォッシーの冴えないおどおどした感じも面白いし、始めは全然気にかけなかったジャネット・リーだが次第にフォッシーの気持ちに気付いていく所も魅力的に描かれている。音楽や歌も楽しめるし、人間の心情や葛藤も丁寧に描かれているし、あまり知名度がない映画のようだが傑作である。
ただ一つ納得できないことに、ベティ・ギャレットが港で取材しようとした水兵達が家までついてきて姉妹の部屋に押し寄せててんやわんやの騒ぎになるシーンがあるが、まったく強引な展開で笑えもしないし、物語とも関係なく無駄であった。なぜ今までいい雰囲気だったのにそれを壊すようなシーンを挟んだのか理解に苦しんだ。そこがなければ満点でも良かった。
5.5『足ながおじさん』(1955/米)ジーン・ネグレスコ
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億万長者で、34の会社の社長であるフレッドアステアは「恋に鈍くなった男」を自称していて、孤児のレスリー・キャロンが自分に惚れていると確信が持てずに部屋をウロウロする所は好感が持てる。書簡形式である原作小説(ウェブスター『足ながおじさん』)とは違い、足ながおじさんことアステアの人となりが描かれていて共感しやすかった。ただレスリーを大学にやったあと、アステアがそのことを忘れているのは不自然だと思う。レスリーはたくさんアステアに手紙を送っているのに、アステアが初めて読んだのは2年後で、足ながおじさんというあだ名が付けられているのもそこで知ったというが、関心がなさ過ぎるし酷いのではないか。また、終盤のレスリーが夢の中で踊るバレエは、あからさまな精神分析の焼き回しで、大げさで野暮ったく見えた。
3.0『わんわん物語』(1955/米)ジャクソン、ラスク、ジェロニミ
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雌犬レディが可愛いし、昔「店」で歌っていたという別の雌犬にも色気がある。そんなレディが路地裏で猛犬に追い回された時、野良犬トランプが助けに来て猛犬たちを追い払うが、その方法が単純に喧嘩なのは捻りがないしマッチョ過ぎる。私としては頭を使いながら敵を追っ払う場面もほしかった。一方で保健所の中にいる犬たちが悲しい歌を歌う場面は良かったが、その後その野良犬たちどうなったのかは一切描かれていないので拍子抜けした。またレディにはエゴがなく自分を主張しないし、彼女が歌う場面も少なくて存在感がないので、全体的に物足りない映画だという印象を受けた。
ちなみに『わんわん物語』を作るまでの経緯だが、ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』(1951)は当時興行的に失敗していて、さらに批評家にはルイス・キャロルの原作小説を再現していないと批判されたので、ウォルト・ディズニーは自分の思うように脚色できない作品には手を出すまいと誓い、『わんわん物語』など原作のないアニメ映画を作るに至った(ボブ・トーマス『ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯 完全復刻版』p237)という。
2.0『野郎どもと女たち』(1955/米)ジョゼフ・L・マンキーウィッツ
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不良やヤクザを更生させようとする救世軍の女軍曹サラはかわいいと思うが、物語に起伏がないので90分くらいならともかく2時間半は長い。キリスト教により大人のヤクザ達が改心するというのも現実にはありえない平凡な宗教プロパガンダであり、宗教で救われた経験の無い私には共感できなかった。
1.5『愛情物語』(1955/米)ジョージ・シドニー
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エディ・デューチンという実在する音楽家を主人公にしているが、彼は資産家の姪の目にとまり、仕事も恋愛もとんとん拍子に上手くいくだけで楽しくない。また、エディにピアノを教えて貰った(おそらく)フィリピン人の4・5歳の子供が、自分の方からエディにキスをする場面があるが、アジア人でそんなことをすることはあり得ないと思う。終盤、エディは別居していて何年も会っていなかった息子と一緒に生活するようになるが、当初そこには溝が出来てギクシャクしていたのに、音楽で交流したりするうちにすぐに溝が埋まってしまう。いくら主人公が音楽家だとはいえ、人間関係の修復が簡単に音楽でなされるわけはなく、音楽を過大評価した機械的な展開でドラマがない。最後エディは白血病で早死にすることが匂わされるが、所詮お涙頂戴ものに過ぎないという印象をうけた。
1.5『オクラホマ!』(1955/米)フレッド・ジンネマン
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主人公カーリー(ゴードン・マクレー)は、なぜかヒロインのローリー(シャーリー・ジョーンズ)の一族とは「結婚しない」と冒頭で明言したと思ったら、カーリーとローリーはすぐ2人で楽しそうに歌うので情緒不安定なのかと思った。また、カーリーはモテ男で三角関係となり、ローリーに嫉妬されるが、バックボーンが描かれない人物の三角関係を見ても共感できないし、男が嫌な奴という印象しかない。また、ローリーをめぐってカーリーとジャッドが戦う夢の中のバレエシーンがあるが長く、退屈に感じた。
『オクラホマ!』は、その後多くの傑作を生み出すことになる作曲家リチャード・ロジャースと作詞家オスカー・ハマースタイン2世の初顔合わせ(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』213p)という歴史的なミュージカルを映画化したものだが、つまらないものはつまらないとしか言えない。
1.0『七変化狸御殿』(1955/日)大曾根辰夫
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木村恵吾の『狸御殿』シリーズと同様に『シンデレラ』を模したメルヘンで、主役は美空ひばりだが、放射能の雨にやられないようにするという政治的なテーマが絡んできてストーリーがゴチャゴチャしているし、また何となくリベラルっぽいことを言っているだけで実のある政治的な意見があるわけでもなくてつまらない。カタコトの言葉をしゃべるキャラも何人か出てきて聞き取りにくくイライラした。加えて、狸族に理解のある女コウモリのお誘が父親に斬り殺されるのは可哀想である。
1.5『王様と私』(1956/米)ウォルター・ラング
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英国から家庭教師にやってきたデボラ・カーは、タイの王様に男女の平等を唱えるが、しかし王制や身分制には触れず身分の平等は唱えない。目先の差別にだけ噛みつき、大元の身分差別を無視するのはエセフェミニズムの典型である。また、家庭教師に感化された王は「奴隷制は良くない」というが、では王制はどうなのか。奴隷だけやめたところで王族がある限り身分制は存続するので偽善である。加えて英国の家庭教師は、偉そうなことを説く前に英国が世界中を植民地化したことを反省したほうがいいのではないか。
1.5『上流社会』(1956/米)チャールズ・ウォルターズ
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1940年の映画『フィラデルフィア物語』のミュージカル版だが、これは1940年版のキャサリン・ヘプバーンの方が格好良くていい。ルイ・アームストロングが狂言回しのように観客に語りかけるが、物語に絡んでこないのでジャズファンのためのサービス程度の意味しか見いだせない。1940年版を下回っていると私は思うが、1956年の映画で興行成績が1位だった(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』221p)というのは信じられない。クロスビーやシナトラの顔合わせが話題になったのだろうか。
1.5『ベニイ・グッドマン物語』(1956/米)ヴァレンタイン・デイヴィース
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ベニー・グッドマンの伝記映画だが、筋は平凡。彼は良家の娘アリスと付き合うが、母に反対される…と思ったらすんなり結婚を許す。対決をちゃんと描かないのでドラマもなくつまらない。この時代に量産された音楽家の伝記映画の駄作の一つである。
1.0『回転木馬』(1956/米)ヘンリー・キング
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回転木馬の呼び込みをやっている主人公ゴードン・マクレーは、「俺には女が何人もいるんだぞ」と自慢をする嫌な色男だが、そんな男になぜか大した理由もなくシャーリー・ジョーンズが惚れるので序盤からもうついていけない。シャーリーはゴードンの昔の女の思い出を嬉しそうに聞きたがるのだが、そういう事って普通女性は聞きたくないのではないかと疑問に思った。また原作の戯曲『リリオム』でも同様に、ゴードンは暴力的なところがあるが、ぶたれた妻や娘が「(愛している人にぶたれるのは)痛くない」と嬉しそうに言っているのは怖い。この映画は128分あり、主人公に魅力を感じなかった私にはかなり長く感じた。原作小説もつまらなかった。
7.5『野ばら』(1957/独)マックス・ノイフェルト
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ウィーン少年合唱団の寮母のマリアが何と言っても美人で、難民の少年ト二とシュミットという若い先生がそれぞれ彼女に思いを寄せていくさまは楽しめた。トニに役を奪われた少年が、はじめは意地悪だがだんだん和解していくプロセスもしっかり描かれている。私は女性が好きだから美少年達の寮生活に関心は無いのだが、人間ドラマに重点を置いていているので共感できた。もっとも、トニが橋から落ちて意識を失ったとき、皆が宗教音楽アヴェ・マリアを歌うことでトニが回復するというオチは宗教プロパガンダなので納得できない。
5.5『パジャマ・ゲーム』(1957/米)ジョージ・アボット、スタンリー・ドーネン
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すぐに恋愛感情を認めないドリス・デイはいいが、「愛にもてあそばれたことはない」というモテ男の主任シドはムカついたし、その主任に嫉妬するナイフ投げの男が社内でナイフを投げてくるギャグがしつこく笑えなかった。また、パジャマ工場で働く従業員達が賃上げを要求してストを行い、要求が通るか通らないかという駆け引きが話の軸になり、最終的に会社は「賃上げは認めるが過去はさかのぼらない」という妥協案を示し、それを聞いて従業員達は「勝ったのよ」と喜んで踊るが、私には最終的に勝ったのは会社だと思うから従業員達が白々しく見えた。
5.0『パリの恋人』(1957/米)スタンリー・ドーネン
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冴えないが知的な本屋の女性オードリー・ヘプバーンはいいのだが、カメラマンのフレッド・アステアが恋人でもないのにすぐオードリーにキスをするのが腹立つし、年上の洒落た男が冴えない若い女をたぶらかしているだけに見える。また、オードリーがハマっているという「共感主義」という哲学は学問でも何でもないパチ物で、英語の出来ないフランス人に英語で話しかけて「言葉が分からなくても声の調子などで共感できれば分かる」とかいうレベルのもので、もちろんそんなことは不可能でオカルトである。ただ、「共感主義」を唱えたフロストルという教授にオードリーが実際会ってみると、彼女のことを狙う思慮の浅い男だったことが分かり失望するというオチはオカルト批判に読めるので良い。
ところでこの映画の原題は「ファニー・フェイス」(変な顔)で、アステアも「オードリーは変な顔だがかわいい」という歌詞を歌うなどオードリーが美人でないことを前提としている映画なのだが、私はオードリー・ヘプバーンは普通に美人だと思うから共感できなかった。
3.0『監獄ロック』(1957/米)リチャード・ソープ
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エルヴィス・プレスリーの映画初出演作品で、瑞々しいながらも存在感があり、この後彼がたくさん映画に出ることになったのも納得する。プレスリーは喧嘩をふっかけてきた相手を殴り殺して服役するが、強盗で先に服役していた歌手の男に「前科コンビは話題になる」と持ちかけられタッグを組む。しかし、前科を逆手にとって売れようとする考え方には共感できない。その後もしばらくは、彼らが更正するようなシーン、反省するシーンは描かれないので不快に思った。ただ、最終的にはプレスリーは更正するので『シカゴ』(2002年)のような最後まで殺人を反省しない反社会的なミュージカル映画よりはマシだろう。ところでこの映画でも、男が女に無理矢理キスをしすることで、自分に気のなさそうだった女が一気に男に夢中になるシーンがあるが、キスをしとけば女は落ちるに違いないという考えは女性蔑視で嫌である。
3.0『絹の靴下』(1957/米)ルーベン・マムーリアン
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『ニノチカ』(1939年)のミュージカル化。つまらなくはないが原作の『ニノチカ』の方が無駄がなくて面白いしグレタ・ガルボの方が格好良いと思えるから『絹の靴下』は見劣りする。また、アステアの自信満々でプレイボーイのような役柄があっていない。ただ、『絹の靴下』というタイトルなだけあって下着とストッキングで踊る姿はエロくそこは良かった。
2.5『渇き』(1957/印)グル・ダット
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『渇き』は評論家の蓮實重彦が誉めすぎていて評価がおかしくなっている。蓮實は「グル・ダットは天才であり、『渇き』は傑作である。この歌謡映画を見て背筋に震えが走らなければ、あなたは映画とは無縁の存在だ」(「季刊リュミエール12 1988夏」)と言っているが、蓮實に媚びたい人々は彼に「あなたは映画とは無縁の存在だ」などと絶対に思われたくないので、つまらなくてもこの映画を誉めないといけないと思い忖度して過大評価してしまうのだ。
いや確かにこの映画には楽しい曲はあるし(ジョニー・ウォーカーの曲など)、1950年代のインド映画の職人性を表しているが、メッセージ性に問題がありすぎる。この映画は世間から理解されない詩人が主人公で、監督のグル・ダット自らが演じているが、芸術の価値を分かろうとしない世の中の方が悪いと逆上し、「こんな世界を得てもいったい何になる この世を燃やせ吹き飛ばしてしまえ 燃やしてしまえ」とラストで歌い上げるところなどは宗教テロリストと同じである。グル・ダットは実際に芸術至上主義者っぽくて、この映画を取り終えた7年後に39歳で自殺するが、まさに『渇き』は芸術をこじらせた人間が死にたくなっているだけの暗い映画であり、私が20歳くらいなら凄いと思っただろうが27歳の今では全く心に響いてこなかった。また、主人公の価値観は詩が一番ということになっているから、女は出てきても「男の詩を理解する」という役目しかなく主人公の添え物に過ぎず、女キャラが生き生きしていなくて恋愛映画としても楽しめなかった。
1.0『夜の豹』(1957/米)ジョージ・シドニー
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キム・ノヴァクはシナトラを嫌っている風だったのに、ショーの出し物としてシナトラに抱きつかれながら愛の歌を歌われただけで「素敵」と惚れるのは意味が分からない。また、クラブの資金を得るためにリタ・ヘイワースに金目当てで近づき口説くと、彼女もシナトラに惚れていくという展開になり頭が痛くなった。
0.5『嵐を呼ぶ男』(1957/日)井上梅次
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石原裕次郎は喧嘩っ早く、ギターを振り回して物をぶっ壊すが、それをみた女達が「いい男」と感動していてのっけから腹立たしい。裕次郎は「(ドラムの)スティック持ってると喧嘩してる時みたいにウキウキするんだ」と言うが、喧嘩をするとウキウキするという脳はヤバいだろう。彼の歌う歌詞も「おいらはヤクザなドラマー」「浮気なドラマー」と耳を疑う。またこの映画は美人マネージャーの北原三枝に「女って近くに居る男の人をすぐ好きになるものなのよ」と言わせているが、私は近くに居る女性に全然好かれないのでここも全く共感できない。ラストで裕次郎は、音楽活動にずっと反対していた母親となんとなく和解するが、裕次郎自身がこの映画を通して何か反省や成長をしたとは思えず、この後も暴力を振るい続ける犯罪者予備軍だとしか思えない。
0.5『女はそれを我慢できない』(1957/米)フランク・タシュリン
再起を図るギャングを見たくない
落ちぶれたギャングの親分と部下だった男が、美女をスターに仕立て上げることでもう一度金儲けを企む話だが、ギャングに再起を図られたらたまらないので不快である。しかも美女がギャングの部下に惚れるが、ギャングという犯罪者達の何がいいのかさっぱり分からない私には何も共感する要素がない。最終的にヤクザ達は幸せになるが何の感動もしない。また、ロック歌手がショーで歌う場面が多いが、そういう歌を聴きたい人向けの映画である。ところで、ジェーン・マンスフィールドの、胸が強調されすぎておっぱいが前方に突き出ている服が奇妙であった。
7.0『恋の手ほどき』(1958/米)ヴィンセント・ミネリ
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恋愛に積極的ではなかったレスリー・キャロンの内面に、恋心が芽生え育っていく過程が丁寧に描かれている。レスリーが有名人のルイ・ジュールダンに求婚されたときも、彼のことが好きではあるが有名人の妻になることに抵抗がある、という葛藤がまた面白い。ただ、原作は短編小説でありあっさりしているからか(コレット「ジジ」)、後半は物語に起伏がなく単調である。終盤でルイ・ジュールダンがレスリーに冷たくなるシーンがあるが、なぜ冷たくなったのか説明がなく共感できなかった。
4.0『南太平洋』(1958/米)ジョシュア・ローガン
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有色人種の女が白人男にすぐ惚れるように出来ていておかしい。中尉のジョン・カーがバリ・ハイ島にやってきて、リアットという現地の娘と急に抱き合いキスをするのも意味が分からない。私は白人だからといって特別惹かれないので、彼女たちが簡単に白人に惚れる心理には全然共感できない。ただ白人看護婦ネリーが、人種差別は良くないと頭では分かっていても白人がポリネシア人と結婚していたと知ってショックを受けるというシーンは、人種差別や偽善に悩む白人の姿がリアルに描かれていてそこは良かった。
3.5『ひばり捕物帖 かんざし小判』(1958/日)沢島忠
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美空ひばりが格好良くて、浪人の東千代之介にも簡単になびかないから、どう恋愛が展開されるのかとワクワクしたが、物語は殺人事件の事件解明に重きが置かれているため後半はほとんど恋愛描写はなくなり、最終的に二人が結ばれたのかどうかも分からないからガッカリした。ひばりは姫という身分なので、浪人と結ばれるラストを描くのが面倒でやめたのかもしれないが、だったら最初からひばりの身分を下げてくれと思った。また、ひばりの手下の堺駿二が大名に扮したとき、「頭が高い」と平民達をひれ伏せさせて悦に浸り喜んでいるのも気持ちが悪いと思った。人間を生まれで差別することがそんなに嬉しいことな訳がない。
1.5『くたばれ!ヤンキース』(1958/米)スタンリー・ドーネン
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冒頭の野球狂の夫とそれを嘆く妻の掛け合いの歌は面白いが、悪魔と契約し女が誘惑しに来るなど、物語はただのファンタジーである。また、マッチョな男性のヌードが観たくて球場に来た女性記者がいるが、男の肉体の良さが分からない私としては少々気味が悪い。というか、この映画はマッチョな男が自分の欲望を映像化しているだけなんじゃないかと思った。悪女が男を誘惑するシーンなどもよくある女性嫌悪の展開であり嫌である。
4.0『お染久松 そよ風日傘』(1959/日)沢島忠
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美空ひばりと里見浩太朗はすぐには恋仲にならず、恋愛への過程が丁寧に描かれているのでいい。ただ、この映画では美空ひばりが一人二役だが、里見浩太朗の恋人が美空ひばりで、里見の田舎の許嫁も美空ひばりという全く理解できない配役で、別の女優が演じれば良いし、そもそも許嫁など出さなくてもひばりと里見との身分の違いによる恋の話に焦点を当てて話を作ればいいのでこのやりとりは丸々いらないと思う。またこの映画の冒頭とラストには、キャストが人前で芝居をするというメタフィクション的なシーンがあるが、面白くないので蛇足である。
3.0『5つの銅貨』(1959/米)メルビル・シェイブルスン
(イメージ無し)
家庭を離れることを悪いように描く
コルネット奏者レッド・ニコルズ(役;ダニー・ケイ)の伝記映画だが、無名の時代からすぐ女とイチャイチャでき、ボビーという女と恋に落ちるので私にはついて行けない。彼らが家庭を持った後、娘を親元から離して寄宿学校(寮)に通わせていると娘が小児麻痺にかかるのだが、「寮に入れなければ病気にならずに済んだのに」とあたかも家庭を離れた罰を受けたかのように描いている。もちろん、その寮では子供の面倒をちゃんと見ずに放任していて、雨の日でも外で遊ばせていたようだから非はあるが、それはその寮がたまたま悪かっただけで〈寮=悪〉という一般論にはならない。またもしレッド・ニコルズ夫婦が自宅で娘を育てていたとしても小児麻痺になったことは十分考えられる。このシーンは明確に「家庭が一番」というイデオロギーを体現しているが、一番可哀想なのはイデオロギーに小児麻痺を利用されている娘本人ではないか。
ところで、幼少期の娘ドロシーは可愛くて、病気が本当に辛そうだし、父親と対立して関係がギクシャクするところもちゃんと描かれているから面白かったが、成長してからのドロシーがあまり父と喧嘩しなかったので物足りないまま終わった。
1.0『眠れる森の美女』(1959/米)ケン・ピーターソン
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姫は生まれてから全く画面に登場せず16年経過し、そのあと王子と出会ったと思ったらすぐ悪の女王に眠らされてしまうので、姫が全然活躍しないし彼女の人間性が伝わってこない。王子は王子で全然喋らないので心境が分からない。この映画の主人公は結局のところ3人のおばさんの妖精で、王子を助け出すのも悪の女王にとどめを刺すのもおばさんの妖精である。
ところでおばさん妖精は、魔法で街の人々を全員眠らせるが、悪の女王よりそっちの方が恐ろしいと思う。