大類浩平の感想

匿名(氏名非公開)の人の議論には応じない場合があります

1927年-1944年のミュージカル映画(99本)

採点方針
ミュージカル映画であっても私にとって一番重要なのは映画としての内容であり、いくら歌や音楽が良かったり過去の作品の引用がしっかりしているとしても内容がつまらなければ減点しています。
・登場人物に自分が共感できるかどうかも重視しているので、主人公がモテまくる映画・女性嫌悪の強い映画・ヤクザや犯罪者や不良を美化している映画・宗教的すぎて難解な映画などは減点しています。
・政治的な思想が右や左に偏りすぎていると思った映画も減点しています。

※反論がある方は本名を出して書き込んで貰えると助かります。匿名の批判は無視します。
 私は本名を出してやっているのでフェアにやりましょう。




点数(10点満点)『映画タイトル』(制作年/制作国)監督名
(同年の映画は点数順に並んでいます。
 また、ほぼ全てネタバレをしているのでご了承ください。)

6.0『ジャズ・シンガー』(1927/米)アラン・クロスランド

 オーソドックスだが宗教色が強い
 歌のシーンだけトーキー(音声あり)であり、地の台詞は字幕で表示される。
 ジャズ・シンガーのアル・ジョルスンの家は五代続くユダヤの聖唱の歌い手であり、父親には「芸人を目指すとは何事か、この家系で神に背く最初の者だ」と怒られる。話の筋はオーソドックスで、父親の演技も迫力があって良い。しかしジョルスンが「僕ら芸人にも独自の信仰があります」と父親に反論するように、宗教そのものには全く反対する映画ではない。このように宗教上の倫理や対立がテーマになるシーンでは無神論的な日本人の私にはピンとこないことも多かった。また終盤でジョルスンは、自分の大舞台の日程と教会で賛美歌を歌う日が被り、彼が迷った末に教会で歌うことを選ぶが、それはそれで親孝行になるとしても、大舞台をフイにしたら業界から干されると思うが、ジョルスンが芸能界で苦労するような様子は全く無いまま大舞台にカムバックするのでおかしく思った。


3.0『ラヴ・パレード』(1929/米)エルンスト・ルビッチ

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 陰湿なのにモテる男
 エルンスト・ルビッチ監督初のトーキー映画であり、1920年代にして既にミュージカル映画の枠組みができあがっている。歌のタイミングや掛け合いが心地よく、現代と遜色ない。
 しかし、伯爵役であるモーリス・シュバリエが序盤ですんなりと女王と結婚できるので、そこに至るまでの恋愛描写が物足りない。また、シュバリエは女王の夫になったのにもかかわらず政治に対して何の決定権や口出しも与えられないが(そんなことはありえないと思うのだが)、そんな女王に対抗するためにシュバリエは女王のことを無視して口をきかないなどの仕打ちをしていて、陰湿な復讐をする嫌な男だと思った。
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2.0『ブロードウェイ・メロディー』(1929/米)ハリー・ボーモント

 姉がずっと可哀想
 世界初の全編トーキーによるミュージカル作品であり、「その後長い間ハリウッド製ミュージカルの中心を成すバックステージものの先駆けとなった作品」で、「アメリカ国内のほとんどの人が見た最初のトーキー映画といえる」(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』p19)という。だが芸術の分野では、「記念すべき作品」イコール面白い作品だとは私は思わない。
 本編はというと、姉の恋人の男が妹の方に惚れるというだけで映画を100分持たせようとしているので退屈である。姉は結局彼氏に振られ、身を落ち着けられずコーラスガールとして貧乏なまま放浪し続けることになり、全く姉が可哀想だと思った。


0.5『ハレルヤ』(1929/米)キング・ヴィダー

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 説教と女性蔑視
 白人のキング・ヴィダー監督によるオール黒人キャスト映画で、昔ながらの黒人の労働風景が描かれるが、実は黒人差別的な内容である。なぜなら、映画の中で白人が出てこないことには人種間での差別が浮かび上がらず、白人が彼らを働かせていたということを観客が忘れてしまうからである。また不気味なことに、黒人達は皆嬉しそうに労働しているが、労働がそんなに楽しかったはずはなくて、辛かったからこそ彼らは歌を歌いながら日々をやり過ごしてジャズやブルースなどの音楽を生み出したのである。こういった描き方は、過去の白人の行いを美化し正当化しているだけだろう。
 また、この映画は全編通してキリスト教的な説教臭さに満ちていて、女が男を誘惑して堕落させるシーンもアダムとイヴの発想である。また女性の方が男の愛を裏切って浮気するエピソードが出てくるが、これも観客に「女というのは悪いものだ」という説教をするための女性蔑視的なメッセージである。最終的に主人公の男が女を撃ち殺すが、何も殺すことはないわけで、全く女が可哀想である。


4.0『けだもの組合』(1930/米)ビクター・ヒアマン

 喜劇は今観て笑えるかどうかが重要
 マルクス兄弟はドイツ系米国人の兄弟で、元々舞台でドタバタ喜劇をやっていた。『けだもの組合』は彼らの映画出演二作目で、「舞台の忠実な再現」である(ポール・D・ジンマーマン『マルクス兄弟のおかしな世界』p57)。
 眼鏡と髭がトレードマークの三男グルーチョ・マルクスの失礼極まりない毒舌トークなどが人気を博したが、今観ると笑えないジョークもある。マルクス兄弟の映画は物語や人間ドラマを見せるものではないので、笑えないのであれば致命的である。メインの物語は画家と娘の恋愛だが、ギャグの前振りでしかないのでストーリーに捻りがない上に、二人ともまじめな歌を歌うので笑いがそもそも介入せずつまらない。
 ひと言も喋らない次男ハーポは面白いので4点にした。
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2.0『ガソリン・ボーイ三人組』(1930/独)ビルヘルム・ティーレ

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 美女に求婚されて怒るヤバい男
 簡単に言うと、貧乏でもカッコいい男なら、実家が金持ちの美人に惚れられて成り上がれるという話。ただ中盤で、主人公の男はなぜか美人にプロポーズされたのに断り、逆上して女を非難する。じゃあ結婚しないのかというと、考え直して結婚するのだから意味が分からない。「女は騙すが男同士は連帯」という歌詞を主人公が歌うように、女性を下に見ているから変な男のプライドが働いたのだろうか。男の連帯を歌うようなマッチョ志向は私は苦手である。ただ曲は楽しめたので2点にした。


8.0『會議は踊る』(1931/独)エリック・シャレル

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 ナチスに葬られたために高い点を付けたのではない
 この映画はお色気ギャグなどが多いため、ナチスに退廃芸術とみなされ1933年から上映を禁止されたが、私は別にナチスに葬られたからといってそのカウンターで点数を上乗せしたくはない。あくまで冷静に内容を判断した上での8点である。
 リリアン・ハーヴェイの演技が細かくてかわいい。花屋の娘である彼女は皇帝にあこがれを抱いている少女で、日本で例えると皇室にあこがれを抱く女性のようなものだが、結局少女の皇帝への夢は破れるので単純に貴族制を賛美している訳ではないと読めるから良い。音楽も楽しめる。


5.0『突貫勘太』(1931/米)エドワード・サザーランド

(イメージ無し)
 まあまあのコメディ
 工場で働く女達が体操しているシーンが冒頭から続くが、ちょっと何を見せられているのか分からない。女の体操服姿に興奮する性癖のある人が演出をしているのだろうか。インチキ予言者が人々を騙して金を巻き上げていく様は、オカルト批判と読めるのでまあいいかと思った。最後はエディ・カンターが長身の女と結ばれてハッピーエンドになるが、これは女が美人でないから嫉妬することなく微笑ましく思えた。まあまあ観られるが、しかしコメディ映画ならもっと笑えないとダメだろうと思った。
 ちなみに冗談みたいだが、主演がエディ・カンターなので「勘太」である。


4.5『ル・ミリオン』(1931/仏)ルネ・クレール

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 冴えない男の不満の顕在化
 フィアンセが居るのにモデルの女とイチャつく絵描きの男(ルネ・ルフェーブル)が主人公で、周囲の人々に金を借りまくって返さないでいると偶然宝くじが当たって儲かるというドタバタ喜劇だが、そういう男に私は全く感情移入できない。むしろ、冴えない友人ルイ・アリベールの方が良かった。宝くじが当選したことで、親友だったはずのアリベールのモテ男への不満が顕在し、彼と駆け引きをしていく様は面白かった。


1.5『三文オペラ』(1931/独)G.W.パプスト

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 原作と共に疲れる作品
 原作の戯曲『三文オペラ』もそうなのだが、ヤクザとか腐敗した警察署長とか嫌な人しか出てこないので感情移入をさせてくれず観ていて疲れる。現実の世の中には良い人はいるのであり、作者の左翼系のイデオロギー(資本主義への批判)を正当化するために人々をデフォルメして描いているに過ぎない。ブラックユーモア作品ならばもっと笑えないといけないのだが、全体的にギャグも弱い。


1.0『陽気な中尉さん』(1931/米)エルンスト・ルビッチ

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 身分制への反動的な憧れ
 中尉役のモーリス・シュバリエはとにかくモテる男で、バンドリーダーの女とすぐ相思相愛になるかと思えばフラウゼンタウムという架空の国の王女にも惚れられる。恋愛描写もないまま男女が勝手に惚れ合うので全く共感できない。しかもシュバリエは結局バンドリーダーより王女を選ぶので、この映画には共和国(身分制がない国)の貴族制への憧れや反動が垣間見られる。もちろん、作品に貴族や王や天皇が出てくることは全く構わないのだが、あまりにも身分制に批判意識のない映画は私は苦手である。
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7.5『今晩は愛して頂戴ナ』(1932/米)ルーベン・マムーリアン

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 このモーリス・シュバリエは面白い
 前半は登場人物が多く分かりづらくて退屈である。後半では平民のモーリス・シュバリエを軽蔑する貴族やその召使い達の振る舞いや嫌がらせが容赦ないが、身分制への批判意識が垣間見られて面白い。違う身分との結婚について、貴族の娘の父は「平民と結婚するなら爆弾を落としたい」などと言うのも凄い話である。街の物音が呼応し合い音楽になっていく冒頭のシーンなど、映像表現も工夫されている。
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7.5『我輩はカモである』(1933/米)レオ・マケアリー

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 戦争風刺映画を過大評価してはいけない
 この映画はナチスを風刺しているということで評価されやすい。ポール・D・ジンマーマンは、マルクス兄弟は『我輩はカモである』によって、戦争や恐慌の悲惨に対し「人間の創造的なエネルギーが、たとえ誤りだらけの不完全なものであっても、結局は勝利をしめるという自由のファンタジーでもって答えた」(ポール・D・ジンマーマン『マルクス兄弟のおかしな世界』p106)と言っている。しかし現代では夢想過ぎるというか、いざ戦争が始まったら人間の創造的なエネルギーでは戦争を終わらせられるわけがない(しかもそのエネルギーが誤りだらけだったらダメだろう)。
 この映画で重要なことは、単純に笑えるか笑えないかである。私は、他のマルクス兄弟映画に比べて笑ったから7.5点にした。序盤でなかなか主役が登場しないなど天丼を引っ張りすぎて退屈になる所はあるが、68分にまとまっているからマルクス兄弟はとりあえずこれを観ておけば良いのではないか。
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7.0『ゴールド・ディガーズ』(1933/米)マーヴィン・ルロイ

(イメージ無し)
 キャラが立っている
 ショーガールの女と名家の男ディック・パウエルがその階級差にもかかわらず結婚しようとし、パウエルの兄が「家族の名誉を汚す」と反対してくるのもベタだが面白い。女達が喋る台詞も人間性が伝わってきて楽しい。ただ、結局パウエルの兄までもショーガールの女と結ばれることになるが、なんでそこまで心変わりが出来たのかという描写が足りないのが残念。


7.0『ダンシング・レディ』(1933/米)ロバート・Z・レナード

 簡単に相思相愛にならないからこそ面白い
 主人公(ジョーン・クロフォード)が簡単に男になびかないのが良くて、恋愛のもどかしさが楽しめる。ただジョーン・クロフォードのダンスがそんなに巧いと思えないのに周りの大人達が「彼女には才能がある」と感心しているのは共感できなかった。ちなみにフレッド・アステアが映画に初出演した作品だが、周りの出演者と比べてやはり彼のダンスはレベルが高いと思った。
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7.0『空中レヴュー時代』(1933/米)ソーントン・フリーランド

 アステア&ロジャースの原型
 音楽もダンスも楽しい。フレッド・アステアは男前ではないので簡単にモテないのが良い。アステアとジンジャーロジャースは以後9作品で共演し踊るが、ダンスにしろ恋愛模様にしろこの原型と『コンチネンタル』(1934年)くらいを見ておけばいい気がする。ただこの作品はアステア&ロジャースが主演ではなく、メインのカップルの恋愛は平凡な三角関係で物足りない。終盤では飛行機の羽根に女性達をくくりつけて飛ばすという非常識なショーが行われるが、男性陣は地上にいて安全であるのに女性陣にだけ危ない目に遭わせているので不愉快には思った。
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3.0『四十二番街』(1933/米)ロイド・ベーコン

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 振り付けの面白さと映画の面白さは別だと思う
 『四十二番街』は戦前のミュージカルとして評価の高い映画で、私は三回視聴している。初めて見たときはバスビー・バークレイの万華鏡のような踊り子の配置や振り付けが面白いと思ったが、今の私はそういういものは映画として面白いかどうかとは別問題だと思っている。いくら殺陣シーンが格好良くても、物語や人間ドラマが面白くなければ私はいい時代劇とは思わないが、それと同じ理由である。
 途中で演出家がギャングにショーの出資を頼むのにもかかわらずハッピーエンドで終わるため、たいしてギャングの恐ろしさが描かれておらず不満である。また女のダンサー同士の嫉妬によるデフォルメされた争いが出てきて、男目線から描いた女性の醜態なので嫌だが、一応その女同士は仲直りするから後味は悪くないと思った。


3.0『羅馬太平記』(1933/米)フランク・タトル

(イメージ無し)
 雑な展開をカバーする笑いがない
 美術館で勝手に寝ていたエディ・カンターは、何のきっかけもなく歩いているだけで古代ローマにタイムスリップする。暴君に耐えられなくなり逃げ出そうとする王女たちが出てくるが、最後彼らが無事に脱出できたのか分からないまま現代に戻り、なぜかハッピーエンドの流れにるのでついていけない。雑な展開をカバーする笑いが必要だが特に笑えない。ただ、この映画では毒味で死ぬ奴隷が描かれていて身分というのは酷い物だと読めるから、奴隷を茶化しているだけの映画『ローマで起こった奇妙な出来事』(1966年)よりはマシである。


2.0『フットライト・パレード』(1933/米)ロイド・ベーコン

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 映画史的に重要だとしても…
 芝居小屋のオーナー(役:ジェームズ・キャグニー)に恋する秘書(役:ジョーン・ブロンデル)は美人過ぎなくて可愛いが、しかしキャグニーがずっと一途に思われるだけで、身近な女性に惚れられることがない私には見ていて楽しくはない。共同経営者が金をごまかしたり、キャグニーの前妻や次の婚約者などが金を請求してきたりするが、人物のバックグラウンドが分からないので、ただ物語を動かすための言い訳にしか見えずこれも面白くない。
 振付師のバスビー・バークレイによる水着の女達の奇天烈なシーンによってこの映画は『四十二番街』と並んで映画史的に重要な位置づけがなされているが、やはり振り付けの面白さと映画の面白さは私は別だと思う。
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8.5『輝く瞳』(1934/米)デイヴィッド・バトラー

 面白いが詰め込みすぎ
 主人公のシャーリー・テンプルは米国を代表する子役で、世界恐慌後の暗い雰囲気を忘れたい米国民によってたちまちスターに押し上げられたが、無邪気で可愛くもありながらませた所も伝わってきて面白かった。また、テンプルをいじめる役の少女も熱演で、彼女と車椅子の偏屈な老人との掛け合いや喧嘩も笑える。テンプルの母親が車に轢かれるシーンなどは生々しく、観客に非情な現実を突きつける効果を果たしている。テンプルとパイロットが大陸横断飛行を果たせないのもリアリズムを反映していると思う。
 ただ、登場人物が多くて個々の人間性を描き切れていないところがあるのが惜しい。とくにパイロットのフィアンセである女の出番が少なく、もっとパイロットと女のドラマを見たかった。


7.0『コンチネンタル』(1934/米)マーク・サンドリッチ

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 アステアとロジャースは良いが…
 アステアとロジャースの二人に焦点を合わせており、アステアの片思いがしっかり描かれていて面白い。ただ筋には強引なところがあり、「離婚屋」に依頼者の女性の名前を教えないまま仕事をさせる、などはありえないだろう。ギャグだとしたらもっと笑えなければいけない。終盤の、ロジャースが離婚したい相手がなかなか部屋にやって来ないというギャグが延々と繰り返される展開もクドい。もっと真面目な恋愛映画にすればいいのにと思った。
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5.0『イギリス物語-ミュージカル「永遠の緑」-』(1934/英)ヴィクター・サヴィル

(イメージ無し)
 設定が変すぎる
 ミュージカルスターだった女の娘が母親になりすまし、「スターのカムバック」ということでショーに出る、というちょっとありえない設定。母親を演じることの娘の葛藤など、娘の心情を表す描写があればもっと面白いのだが、そういうシーンは見られなかった。歌や音楽は楽しめるので勿体なかった。


4.0『はだかの女王』(1934/仏)マルク・アレグレ

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 脚本をもっと練ればいいのに
 アフリカ系アメリカ人の女性歌手・ジョセフィン・ベーカーが主人公を務める。義理の兄弟という設定のジョン・ギャバン(白人)とベイカーは腕を組んで外を出歩くが、変な目で見られたり人種差別を受けることはないので逆に違和感がある。人種差別がない国フランスということを宣伝したいのではないかと深読みしたくなる。また、ジャン・ギャバンが無実の罪で現行犯逮捕されたとき、なぜか「俺じゃない」と強く否定しないのはおかしい。ジャン・ギャバンは終盤はずっと刑務所に入っているので恋愛描写が減って物足りず、オチで裏切られるベイカーも可哀想である。ただ、ベイカーが簡単に兄の女に嫉妬しないのは良い。女性蔑視的な作品は、すぐ女が女に嫉妬させたがるからだ。脚本によってはもっと面白くなり得ただけに残念である。
 ちなみに監督のマルク・アレグレは美青年で、作家アンドレ・ジッドの同性愛の相手である(猪俣良樹『黒いヴィーナス ジョセフィン・ベイカー 狂乱の1920年代、パリ』p27)。
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1.0『メリイ・ウィドウ』(1934/米)エルンスト・ルビッチ

(イメージ無し)
 性格が悪いのにモテる男
 王室の将校役のモーリス・シュバリエは、例によって独身を満喫しているモテ男である。しかし性格は悪く、振られた途端「孤独の世界にもどって一人でお休みなさい」と女に大声で嫌みを言う。ギャグが多いが別に笑えないし何を面白いと思えばいいのか分からない。
 もちろんエルンスト・ルビッチの監督作品が嫌いだから低い点数にしているわけではなく、例えば彼の『ニノチカ』(1939年)は面白いと思っているが、どうも私はルビッチのミュージカルは合わないようである。
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5.0『踊るブロードウェイ』(1935/米)ロイ・デル・ルース

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 エレノア・パウエルはいいが…
 私はエレノア・パウエルの知的な感じが好きで、歌やタップダンスもとても格好良いと思う。しかし他の登場人物は、大嘘をつく記者やモテモテの演出家など嫌な感じである。また、恨んでいる演出家を困らせるために記者が存在しない架空の女優をラジオで宣伝して演出家を騙すなど、現実的にありえない展開も多くついていけない。
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4.0『オペラは踊る』(1935/米)サム・ウッド

マルクス兄弟 オペラは踊る [DVD]

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 今見ると斬新ではない
 狭い船室で人がごった返すシーンは笑ったが基本的に今見るとイマイチである。ダリなど当時の芸術家に影響を与えたというが、今見ると斬新な笑いをやっているという印象はない。斬新な笑いほど古くなるのは当然のことだが、まあプラスに考えると、今のお笑いはだいぶ進歩しているということである。
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2.5『トップ・ハット』(1935/米)マーク・サンドリッチ

トップ・ハット [DVD]

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 ダンスが良くても内容がだめ
 アステアがホテルの部屋で踊るとその部屋の真下にいたロジャースが「うるさい」と憤慨して怒りに行くが、すぐにアステアのステップの虜になり、部屋に帰ったあとアステアのステップを聴きながらスヤスヤ眠るなど描写がおかしい。相思相愛になる展開が早すぎて拍子抜けする。他にも、アステアが停めてある馬車に勝手に乗ったりと、『コンチネンタル』よりリアリズムに乏しくそれが笑いにもなっていない。そして何と言ってもロジャースがアステアを既婚者だと誤解し続けたまま話が進むのはしつこかった。ダンスがいいからということでアステア&ロジャースの最高傑作だとも言われるが、ダンスが良くても内容が良くないとダメだろう。
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2.0『浮かれ姫君』(1935/米)W.S.ヴァン・ダイク

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 身分制への批判的意識が読み取れない
 ルイ王朝期のフランスの姫が身分を偽ってニューオーリンズに入って地位のある男と結婚するだけの話で、何が言いたいのかよく分からない。そこに身分制への批判的意識が読み取れれば良いが、そうとは思えない。ただ、船を襲ってくる海賊は非情で容赦なく人を殺すので、悪人を美化していなくてそこは良いと思った。
 ちなみにこの映画ではニューオーリンズをフランスの植民地としているが、18世紀後半はまだスペインの植民地である(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』58p)。


1.5『ロバータ』(1935/米)ウィリアム・A・サイター

ロバータ [DVD]

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 結局身分がほしいのか
 ケント(役;ランドルフ・スコット)という男は婚約者がいるのに美人の亡命貴族の女性とすぐいい仲になるなど、私には理解しがたい内容である。しかもケントは女を突き飛ばすようなことをしても全然女に嫌われないので謎である。また、最後ケントは婚約者ではなくロシアの亡命貴族のステファニーを選ぶので、結局身分がほしいんだなと思った。アステアも、本当は彼女がいるのにロジャースを騙して付き合っていて、ロジャースが可哀想である。DVDの解説で「35年度の興収ベスト・スリーに輝いた」とあるが信じられない。
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7.0『桑港』(1936/米)W.S.ヴァン・ダイク

桑港 (サンフランシスコ) [DVD]

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 説教臭すぎるが迫力がある
 はっきり言うとキリスト教の説教映画で、暗黒街だったサンフランシスコに大地震という天罰が下り、神父が被災者を励ますうちにヤクザ男のクラーク・ゲーブルも改心して神に感謝する、という話である。しかし地震を天罰と捉えるのは問題で、死んでしまった無辜の市民はどうなるんだ、彼らは悪人だったのかと言いたくなる。また、クラーク・ゲーブルがメアリーという真面目な女と結婚することを、ゲーブルの友人の神父が「結婚をだしにメアリーを利用してゲーブルが選挙資金などを稼いでいる」と批判するが、神父は被災後に地震をだしに宗教を広めている訳だから、人のことは言えないんじゃないか。
 ここまで批判して7点付けたのは、この映画は人間ドラマがしっかり描けているし、また1936年とは思えないくらい地震の怖さを表現できているからである。地震で建物が崩壊するシーンは今見ても迫力があるし、一度おさまったと思ったら余震が来てまた人が死んでしまうのも恐ろしい。略奪の罪で射殺されたという死体が道端に晒されていたりもする。評価が難しいが思わず見入ってしまう映画である。


6.5『巨星ジーグフェルド』(1936/米)ロバート・Z・レナード

 名演技だが可哀想な奥さん
 ジーグフェルド(役;ウィリアム・パウエル)はかなりモテていて、「女は皆ハエトリ紙にすいよせられるハエだ」と言ったり、「米国は王位制だよ」と自分が貴族であるかのように振る舞ったりしてムカつくものの、演技はうまい。先妻役のルイーゼ・ライナーも名演技で、ジーグフェルドと別れたあとの情緒不安定な振る舞いには目を見張った。しかし、だからこそルイーゼ・ライナーが可哀想で、せめてもっと彼女の出番を増やしてほしいと思った。ジーグフェルドがプロデュースするショーが展開される場面では、観客を飽きさせない工夫がされていて楽しめる。


4.0『踊るアメリカ艦隊』(1936/米)ロイ・デル・ルース

踊るアメリカ艦隊 [DVD]

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 エレノア・パウエルが見たい人向け
 序盤の、ジェームズ・スチュアートとエリノア・パウエルの恋愛がすぐに上手くいかない感じは面白いと思ったら、トントン拍子で夫婦になってしまうので物足りない。もっと上手くいかないかんじを引っ張ってほしかった。また、スチュアートが新聞にガセネタを報じさせてルーシーという女をショーの主役から引きずり下ろして妻のパウエルを主役にさせるのだが、それはそれでルーシーが可哀想である。観客が納得するような大人の解決してほしい。エレノア・パウエルの歌やダンスが見たい人向けの映画である。
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2.0『ショウボート』(1936/米)ジェームズ・ホエール

ショウボート [DVD]

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 逃げた夫を歓迎していいのか
 メインの男女は結婚するが、ギャンブラーの男は借金をこさえ妻と娘を捨て、散々辛い思いをさせながらも最後は母子の元に戻ってきて歓迎を受ける…という話なのでおかしい。夫として、親としての責任を放棄した人間がどうやってけじめをつけるのか、ということが描かれていない。また、白人が黒人と結婚してはいけない法律などが出てくるなど、白人に反省を迫る批判的な内容も出てくるが、肝心な黒人女性役を白人が演じていて説得力が無い。


2.0『有頂天時代』(1936/米)ジョージ・スティーブンス

スイング・タイム<有頂天時代> [DVD]

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 コメディとしても笑えない
 アステアは婚約者を隠してロジャースと親しくするが、婚約者の女性が実は他の男と結婚することになりました、みたいな都合の良い展開が唐突に起こっていくだけで面白くない。またオチは、ロジャースがロメロという男と結婚するのをやめさせるためにアステアはロメロのズボンを取り上げて結婚式に出られないようにする、という馬鹿馬鹿しいもので、コメディとしても笑えなかった。
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1.0『艦隊を追って』(1936/米)マーク・サンドリッチ

艦隊を追って [DVD]

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 教養のある女が好きである
 教養のある女がモテない世界になっているが、私はそういう女性が好きだからまず共感できない。「女が田舎に引っ込めば家庭はなくなり男は飢え死にだ」という歌詞が出てくるなど、女性の社会進出に否定的であることを隠そうとしていないので観るのがキツい。また、アステアがこっそりコップに重曹をいれて女にそれを飲ませ、オーディションを落とさせるなど女性の扱いも酷い。
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9.0『オーケストラの少女』(1937/米)ヘンリー・コスター

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 演出も演技も良い
 楽団員を失職した父親が、娘(ディアナ・ダービン)を心配させないように嘘をついて接するところは泣ける。また全体的に演出や演技の質が高く、仕事を失った音楽家達で作られたディアナ・ダービン率いる楽団が成長し、指揮者のストコフスキー(本人役)を驚かせるまでになるというベタな展開であるはずなのに飽きずに観ることができる。人間の描き方に心を揺さぶられる。
 ただ、場所代を払わせようとするガレージの持ち主がしつこいなど、ギャグが空回りしていてイライラする所はあったのでそこだけ減点した。
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5.0『陽気な街』(1937/米)ロイ・デル・ルース

 アリス・フェイの歌はいい
 「高級住宅街を冷やかそう」、上流社会の「あの人たちと私たちどこが違うの」という歌詞に表われているように、階級への批判意識はあるから庶民の私が見ても楽しい。アリス・フェイの歌は哀切があってこれも良かった。ただ話の筋は、主人公の演出家の男が金持ちの令嬢と舞台女優(アリス・フェイ)の二人に惚れられて板挟みになっているというもので、そんな状況にあったことの無い私は共感できないしムカついた。
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4.0『白雪姫』(1937/米)デイヴィッド・ハンド

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 王子さまの人間性が全く分からない
 ディズニーアニメ初の長編映画だが、初の長篇映画とは思えないほど絵が綺麗だと率直に感じた。井戸を覗きこんだ白雪姫の顔が波紋で揺れるところはどうやって描いているのか私には分からなかった。
 物語は、継母の女王に城を追放された白雪姫が森に逃げこむと、七人のこびとの家にたどり着くというものだが、ストーリーはほとんどなくこびとが手を洗うだの洗わないだののコメディがメインで正直しつこかった。また、王子さまの人間性が全く分からないので、白雪姫をキスで目覚めさせるシーンではドラマが感じられないのもダメだろうと思った。ただ、女嫌いなこびと「おこりんぼ」が、白雪姫と会ったことで動揺し、彼女に惹かれていくのは面白かった。


3.0『踊る騎士』(1937/米)ジョージ・スティーブンス

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 貴族批判をしたのに自分が貴族になる
 アステアは「伯爵とは先祖が貧乏人を騙した結果じゃないか」「海賊だ」と発言し、良いことを言うなと思ったが、結局は貴族の身分の女と結ばれるので、自分が貴族になったことに対しどう思っているのか考えを述べてほしい。また、ゆがんだ鏡などを使ってダンスシーンを工夫しようとしているが、人が縮んだり伸びて見えたりするからといって別にどうってことはない。終盤でドラムセットを足で蹴りながら踊るシーンも地味で、アステアの体が生かされていないと思った。同じくドラムを使ったダンスでも『イースター・パレード』(1948年)のアステアの方が面白かった。
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2.5『マルクス一番乗り』(1937/米)サム・ウッド

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 マルクス兄弟が好きな人だけ観れば良い
 病院を経営する若い女性が、病院を乗っ取られないようにマルクス兄弟と組む。物語自体に無理があるが(当たり前だが)、あまりギャグで笑えないので得るものが少ない。結局はマルクス兄弟が好きな人が観れば良い映画である。
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2.0『踊る不夜城』(1937/米)ロイ・デル・ルース

 キャラも設定も生かされていない
 エレノア・パウエルは馬の調教師の役で、序盤の気丈な感じが良かったのに、ロバート・テイラーと会った瞬間しおらしくなっていてキャラがブレてつまらなくなった。また、途中から競馬の調教師という設定がどうでもよくなっている。
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2.0『踊らん哉』(1937/米)マーク・サンドリッチ

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 人間を描いていない
 ロジャースに惚れたアステアは、勝手に自分がロジャースと結婚したと周りに嘘を言う。それを知ったロジャースは怒るが、いつしかアステアを好きになっていて…という強引な筋書きで、ドタバタしてるだけで人間を描いていない。どうして彼女はアステアを好きになるのか分からないので、急に嫌だった男を好きになるチップでも頭に埋め込まれているのかと思った。アステア&ロジャースのダンスやガーシュウィンの音楽が聴きたい人向けだろう。
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1.5『ワイキキの結婚』(1937/米)フランク・タトル

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 前近代の暮らしには戻りたくない
 誰かがハワイの原住民から真珠のネックレスを持ち出したが、クロスビー達が疑われて原住民に半ば誘拐される。しかしどうもコメディのような演出が多く楽観的で、緊迫感が伝わってこない。そこには、「原住民の生活っていいもんだよ」と前近代的な生活を美化しユートピアを見いだそうとする意図があるのかもしれないが、私にとっては昔の暮らしは不便だし人間同士のつながりが強すぎて戻りたくないので共感できない。サスペンスとしてもファンタジーとしても中途半端になってしまっている。
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1.5『キャグニー、ハリウッドに行く』(1937/米)ヴィクター・シャーツィンガー

(イメージ無し)
 モテるスターの贅沢な悩み
 キャグニーは新人として映画に出演することになるが、思いのほか喧嘩シーンがウケてすぐスターになる。若いときの苦労が語られないから物足りないし、そもそも喧嘩がウケてスターになるという発想が幼稚だと思う。キャグニーには婚約者がいるが、彼は女性の観衆にとってのスターなので会社から独身でいろと迫られるなど、一般人とはかけ離れた贅沢な悩みを突きつけられていて共感できない。ヘコヘコおじぎをする日系人のイトーという人物が出てくるのも笑えないし不快である。
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0.5『フットボール・パレード』(1937/米)デヴィッド・バトラー

(イメージ無し)
 体育会系の嫌なところが凝縮されている
 手違いで弱いラグビー部が強豪校と戦うことになったという話だが、開始早々ラグビー部の男が彼女を連れてきてベタベタするという嫌なシーンを見せられる。また、部員達は自分たちの力だけでは相手に勝てないことを悟り、ラグビーがうまい農家の男をチームに引き入れることにするが、彼は大学生では無い。そこで彼らは、共産主義っぽいガリ勉の学生H.ヴァン・ダイクをけしかけて銀行のガラスを割らせ、警察に通報し学籍を奪ったところで農家の男をH.ヴァン・ダイクに仕立て上げ学籍を与える、というとんでもないことをする。もちろん過激な共産主義はおかしいがそれは別問題で、やっていいことと悪いことがあり、ラグビー部の男たちの性格が悪すぎる。最終的に弱小チームが勝つが、汚い手を使って勝って楽しいのだろうか。実は学生でない人間を雇っていたということもバレることはなく、反省もせず、周りから選手は賞賛される。体育会系の嫌なところが凝縮されている。
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8.0『アヴェ・マリア』(1938/米)ノーマン・タウログ

(イメージ無し)
 脚本が惜しい
 アヴェ・マリアというタイトルだが宗教色もそんなに強くなくて楽しめた。クラスメイトに父親が居ないことを隠しているディアナ・ダービンが、駅で皆がいる手前、列車から降りてきた面識のない男性をとりあえず父親として迎え入れてしまう。話の展開は多少強引だが面白い。ただ、学校でダービンがいじめられるシーンがあるのに、最終的にいじめっ子となんとなく仲直りしていて、何で和解したのかという理由が有耶無耶にされているのは不満である。いじめを有耶無耶にして得をするのはいじめっ子の方なのだからこれは許せない。脚本をもっと練ったら傑作になりそうなのに惜しい。
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7.5『恋する水兵』(1938/米)エリオット・ニュージェント

(イメージ無し)
 ブスな女性を応援したくなる
 戦争映画だがギャグが主体で、モテない男と女の悲哀が描けている。どちらがどちらと結婚するのかは最後まで分からず、結構ハラハラできる。ラストでは、料理が得意なブスな女(マーサ・レイ)と料理の仕方が分からない美女(ベティ・グレイブル)では、料理のできるブスのほうがハッピーエンドになるので、ここには家庭的な女を推奨するメッセージを感じるものの、しかし現実では美女は料理ができなくてもモテるはずだから、ブスな女がハッピーエンドになってよかったねと素直に思えた。
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6.0『華麗なるミュージカル』(1938/米)ジョージ・マーシャル

(イメージ無し)
 マンジューはいいが蛇足が多い
 偏屈な映画プロデューサー役のアドルフ・マンジューが、若い女に片思いしているところは恋愛のもどかしさを表現できていている。しかもその思いは「私の方が人間的だ」などと狂気じみたものとなり、女性に詰め寄っていくのでハラハラさしてくれる。ところで、結局マンジューは女に振られるのだが、ちゃっかり別の女優と結婚できるので拍子抜けした。また、腹話術師など狂言回しが何人かいるがはっきり言って蛇足で、115分もあるなら主人公マンジューの恋をもっと丁寧に描いたらよかったのにと思った。


1.5『百万弗大放送』(1938/米)ミッチェル・ライゼン

(イメージ無し)
 ついていけない
 金がないので3人の先妻の慰謝料が払えていないというどうしようもない男バズが主人公。ゴルフコースや船の中でしつこいギャグが延々と繰り広げられ、ドタバタやってるうちに最初の妻とまた寄りを戻していく、という展開になるがついていけず、感情移入もできないし笑えない。


1.5『世紀の楽団』(1938/米)ヘンリー・キング

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 人間の感情をすっ飛ばしている
 女歌手のアリス・フェイがバンドリーダーに対して子供っぽい怒り方をし、ダダをこねるので面倒くさい。そのくせラブソングを演奏した途端簡単に相思相愛になる。恋愛における心情を何かとすっ飛ばして描いている。軍に入隊したバンドマンがショーをするシーンも挟まるが、戦争が近い世相を反映したに過ぎずこれといって面白くはなかった。
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1.0『カレッジ・スイング』(1938/米)ラオール・ウォルシュ

(イメージ無し)
 笑えない
 200年間落第し続けている女子学生というありえない設定で、無駄に話がごちゃごちゃしていて分かりづらいし、ギャグとしても古くなっていて笑えない。
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0.5『グレート・ワルツ』(1938/米)ジュリアン・デュヴィヴィエ

グレートワルツ [DVD]

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 何もかも腹立たしい
 主人公はシュトラウスという音楽家だが、「伝記ミュージカルとは何の関係もない」(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』99p)と言われるように、これはシュトラウスの伝記映画のフリをしているが全く違っており、なんでそんな紛らわしいことをするのか腹が立つ。だったらオリジナルの登場人物の話にしてほしい。
 内容だが、シュトラウスは革命の行進曲を作曲したのにフランツ・ヨセフが王位に就いたことは歓迎しているから矛盾しているし、またシュトラウスは自分が不倫しているのになぜか彼が妻を責めるシーンがあり不愉快である。そんな妻は、シュトラウスのためなら「ナイフのような痛み」も「耐えられます」と不倫に耐えるしかなくて可哀想である。何もかも腹立たしい。


0.5『気儘時代』(1938/米)マーク・サンドリッチ

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 オカルトじみていて気持ち悪い
 「結婚しましょう」と言ってくれない女性を精神科に通わせて結婚させようとするという話で、まずその発想が気持ち悪い。精神科医のアステアは暗示や催眠術みたいな方法を駆使してロジャースを「治療」するが、洗脳みたいなことではないのか。女性が可哀想だしオカルトだしで、私には面白さがわからなかった。
 ちなみに、ゴルフ場でのダンスは3分に満たないが難易度が高く撮影に2日半かかった(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』98p)らいしが、そんなに頑張ったということを踏まえても内容が酷すぎるので0.5点にした。
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0.5『ルーム・サービス』(1938/米)ウイリアム・A.サイター

(イメージ無し)
 笑わなかった
 セットの中だけで行われるコメディだが、単純に笑えるギャグがない。また、他のマルクス作品以上に女性が出てこないので、男達のホモソーシャルなノリに見えて嫌である。異性愛者の私には見所が分からなかった。
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5.5『オズの魔法使』(1939/米)ビクター・フレミング

オズの魔法使 特別版 [DVD]

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 「おうちが一番」はいらない
 ジュディ・ガーランドの歌はいいし、原作より物語が面白くなっていると思うし、こんなに金をかけて作り込んだミュージカルファンタジーは前例がないのも分かるのだが、桃太郎みたいに次々お供を従えていく展開は単調で退屈に感じた。また、ラストの「(やっぱり)おうちが一番」の連呼は、せっかく冒険したのに冒険そのものを否定しているからまったく必要ないと思う。
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4.0『マルクス兄弟珍サーカス』(1939/米)エドワード・バゼル

マルクス兄弟珍サーカス 特別版 [DVD]

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 サーカスでのギャグは笑えない
 若い男女は最初からカップルとして居るので恋愛としても物足りないが、87分と短いので他のマルクスの外れ映画よりはよかった。しかしサーカスでのギャグはあまり面白くなくて、前半の電車内でのシーンの方が笑えるから、それはそれでダメなんじゃないかと思う。


3.5『鴛鴦歌合戦』(1939/日)マキノ正博

 現代とはズレている説教
 メロディーに歌詞を乗せるのがまだうまくいっておらず試行錯誤の印象を受けるが、狸御殿などのシリーズに比べれば和製のミュージカルとして観ていられる。ただ、たいした筋も無く単調である。また、ラストでヒロインの市川春代は父親が持っていた値打ちのある茶入をわざわざ叩き割り、お金より大事なものがあるという説教じみた歌が流れてフィナーレになるが、生きる上で金はある程度必要なのだからそんなことをする必要は無いし、しかも老いた父親が居るのだから介護資金も必要になるだろうに何をしているんだ、と現代の感覚からしたらズレていて共感できなかった。


3.0『ワシントン広場の薔薇』(1939/米)レゴリー・ラトフ

(イメージ無し)
 逃げているオチ
 全体的に物語に起伏がなく、たとえ相手が元ヤクザの男だとしても私(アリス・フェイ)は愛してるなら関係ないわ、というだけの話。ただ、元ヤクザと結婚してからが大変だと思うが、物語は男が自首をしたところで終わりになるので逃げているオチだと思う。ところで、10人くらいで煙草を吸いながら踊る奇妙なダンスがあってこれは面白かった。
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2.0『カッスル夫妻』(1939/米)H.C.ポッター

カッスル夫妻 《IVC BEST SELECTION》 フレッド・アステア セレクション [DVD]

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 後味も悪い
 実在の舞踏家カッスル夫妻の伝記映画だが、彼らの演技が次々に興行師の目にとまっていくだけでドラマや工夫が感じられない。しかも悲劇なので後味も悪い。アステア&ロジャースが好きな人だけ見ればいい。
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8.0『踊るニュウ・ヨーク』(1940/米)ノーマン・タウログ

(イメージ無し)
 アステアとパウエル
 フレッド・アステアエレノア・パウエルが唯一共演した作品で、それぞれのダンスは面白い。また、アステアと相棒のマーフィがずっと仲良くやってきたのに、喧嘩するところなどは迫力がある。しかし、アステアが自分に自信が無いのか謙虚すぎるのが似合わないし、スカウトを借金取りと間違えてスカウトを交わしつづけるなど強引な展開は面白くなかった。
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6.0『セカンド・コーラス』(1940/米)ヘンリー・C・ポッター

 もっと笑えるといいのだが
 フレッド・アステアとバージェス・メレディスは学生からのバンド仲間で、マネージャーのポーレット・ゴダードをめぐってお互い気を引こうとするがなかなか彼女がなびかない様を見ているのは楽しい。ただ、コンサートの後援者を侮辱して追い返してしまったのに、すぐまた丸め込んで仲直りできるなど都合の良い展開も多く、コメディならばもっと笑えないと成立しないと思う。
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4.5『ファンタジア』(1940/米)ベン・シャープスティーン

 長篇として見ると面白くない
 世界初のステレオ音声の映画。7曲のクラシック音楽に合わせて7本の短編アニメが流れるオムニバス形式の実験映画のようなもので、ミッキーが魔法で箒に水くみをやらせる章や、地球ができて生命が誕生し恐竜が栄え滅びる章など個々では良いものがあったが、長編映画として面白いとは言えない。とくに最後のアヴェ・マリアに合わせたアニメはスローな演出で地味だし退屈だった。


4.0『ミュージック・イン・マイ・ハート』(1940/米)ジョセフ・サントリー

(イメージ無し)
 そんな簡単に養子にする訳がない
 移民局に帰れと言われている貧乏歌手の男が主人公だが、そのわりに脳天気なギャグが多い。ラストで、リタ・ヘイワースを狙っていた別の資産家の男が、リタ・ヘイワースと結婚するのを諦め、彼女と貧乏歌手の男を養子にすることに決めるのだが(男は国籍を手に入れるのでそこもハッピーエンドという流れだが)、そんな重要な決定を下すのならもっとたくさん人間同士のドラマを描くことに時間を割かなければダメだろう。まあ逆に言うと、もっとドラマがあれば面白かったのだが残念、ということだが。
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2.5『マルクスの二挺拳銃』(1940/米)エドワード・バゼル

マルクスの二挺拳銃 特別版/マルクス兄弟デパート騒動 特別版 [DVD]

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 金を払ったように見せかけて払ってないままおつりをもらう、というような一個一個のボケが長くしつこい。マルクス兄弟のボケに周りの人々が笑ったりするので寒い。マルクス兄弟唯一の西部劇だが、シチュエーションが変わっただけで内容は同じである。
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1.5『シンガポール珍道中』(1940/米)ヴィクター・シャーツィンガー

 マッチョな男性の欲望を映像化
 珍道中シリーズ第一作。行く先々で、男二人が女に惚れられたり暴力を振るったりする、いかにもマッチョな男性の欲望を映像化したような映画。ヒロインのドロシー・ラムーアは最終的にボブ・ホープでなくクロスビーを選ぶが、なぜクロスビーのほうがいいのかという理由も分からないし、他方でクロスビーに結婚を迫っていた別の女はどうなったのかも描かれておらず不満が残った。
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1.0『ストライク・アップ・ザ・バンド』(1940/米)バスビー・バークレイ

(イメージ無し)
 女のことを考えたっていいだろ
 高校バンドリーダーのミッキー・ルーニーは、仲間に「女の事しか考えられないのか!」と怒るのだが、そのくせジュディ・ガーランドに惚れられたり別の女子にも好かれているので腹が立つ。女の事しか考えない私に喧嘩を売る発言である。また、ルーニーガーランドの関係は友達で、恋人ですらないのに、まるで夫婦が相手の浮気に嫉妬するかのような喧嘩をしていて違和感をおぼえた。加えて、映画全体が120分以上もあり長くて退屈だった。
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1.0『遥かなるアルゼンチン』(1940/米)アーヴィング・カミングス

 舞台をアルゼンチンにしてみただけ
 『ロミオとジュリエット』のように互いに仲の悪い家同士の息子と娘が惚れあった、という話だが、家同士が仲の悪い理由はその父親達が同じ一人の女性を取り合った、というだけのことで全くドラマがない。舞台をアルゼンチンにしてみたというだけで、内容に見るべき所がない。
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0.5『ピノキオ』(1940/米)シャープスティーン、ラスケ

ピノキオ スペシャル・エディション [DVD]

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 私に楽しむ余地がない
 ピノキオには主体性がなくただただ周りに流されるだけなので、葛藤やドラマもなく面白くない。またピノキオは一見純粋に見えるのに、わざわざ青い妖精には嘘をつこうと思った理由が分からない。鼻が長くなるシーンをやりたかっただけで、ピノキオのキャラは定まっていないんじゃないか。その後はなんとピノキオが嘘をつくシーン自体が出てこないので設定も生かせていない。また、「木でできた少年?信じられん」と二足歩行のでかいキツネが言うが、そもそもそっちの方が信じられない。動物がふつうに人間のように話して二足歩行で歩いているのは普通で、「木でできた少年」は普通じゃないとはどういうことなのか、世界観が掴めない。さらに極めつけとして、この映画は男と男児は出てくるが女キャラは青い妖精以外全く出てこないなど徹底して女性を無視していて、女性が好きな私には楽しむ余地が全くない映画となっている。


8.0『マイアミの月』(1941/米)ウォルター・ラング

(イメージ無し)
 女性への信頼が感じとれて良い
 ドン・アメチーとロバート・カミングスがベティ・グレイブルを巡って争うが、登場人物の心の動きなどが丁寧に描かれていて面白かった。私はやはりモテる男より女を口説くがなかなかうまくいかない男を観る方が好きである。また、ドン・アメチーは実は資産が底を突いているとベティ・グレイブルが知っても彼を裏切らないところに、作り手の女性への信頼が感じ取れて良い。女が嫌いな男は、しばしば女が男を裏切る展開にしてしまうから。
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6.0『ダンボ』(1941/米)ベン・シャープスティーン

ダンボ スペシャル・エディション [DVD]

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 映画の長さは64分と短いが、キャラクター造形はかわいいし、ちゃんとダンボの成長物語になっていて面白かった。ただ、母親以外のメスの象がかなり意地悪に描かれているのは女性嫌悪を感じた。また、ダンボが酒を飲んでしまった後に見る幻覚が悪夢のようで怖いし、長く感じた。


3.0『銀嶺セレナーデ』(1941/米)ブルース・ハンバーストーン

 難民なのに余裕過ぎる
 男(ジョン・ペイン)がノルウェーからやって来た難民の赤ん坊を引き取りにきたら、何と赤ん坊ではなく年頃の少女だった(といっても少女を演じるソニア・ヘニーはこの時29歳なのだが)という話。だがソニアは異常になつっこくてジョン・ペインにベタベタしてくるので違和感がある。外国に養子としてやって来たら、もっと異文化への怖さや戸惑いがあるし、ましてや男に引き取られるのなら少女は警戒しそうなものである。またソニアは戦争から逃れて父も家も亡くしてきているのに明るすぎて、やたらポジティブで、全然難民っぽくないのでキャラ設定の段階で失敗していると思う。加えて、美人なソニアに惚れられているジョン・ペインに私は感情移入は出来ないので恋愛映画としても楽しくない。
 ところで、ソニアが雪山で足を怪我したと言っていたのが嘘だと分かったジョン・ペインが、山小屋でソニアのズボンを破って肌を露わにさせるシーンはエロいので3点にした。


2.0『踊る結婚式』(1941/米)シドニ-・ランフィールド

(イメージ無し)
 心情の変化を伝える描写がない
 リタ・ヘイワースの心情の変化を伝える描写がなく、許嫁がいて結婚間近なのにもかかわらず彼を捨ててアステアと結婚する、という乱暴な話。中盤でアステアは徴兵されるが、兵舎でアステアが見ている夢の中のギャグなどはしつこく蛇足だった。
 ちなみにこの映画は「真珠湾攻撃のちょうど3か月前に公開されたが、金をかけたミュージカルで初歩訓練中の初年兵のキャンプ生活が描かれたのは初めて」(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』120p)だという。
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2.0『マルクス兄弟のデパート騒動』(1941/米)チャールズ・F・ライスナー

マルクスの二挺拳銃 特別版/マルクス兄弟デパート騒動 特別版 [DVD]

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 デパートが笑えない
 序盤の探偵事務所でのシーンは笑ったが肝心のデパートのシーンで笑えないのはダメだろう。終盤に挿入されるオーケストラの演奏もまったく物語と関係なく登場人物の感情を表現しているわけでもない。また今回のカップルの男は元ガキ大将だったらしいので、そんな男の恋路に私は関心は無い。
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1.0『恋のラジオ放送』(1941/米)ジョージ・マーシャル

(イメージ無し)
 『我が家の楽園』の焼き直し
 自分の家系と敵対する家の女と知らずに仲良くなる、という筋はフランク・キャプラの映画『我が家の楽園』(1938年)焼き直しに見えた(『我が家の楽園』も主演はジェームズ・スチュアートである)。全編通して家庭はいいものだというイデオロギーが強くて楽しくない。


0.5『アフリカ珍道中』(1941/米)ヴィクター・シャーツィンガー

アフリカ珍道中 [DVD]

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 放火して逃げるな
 珍道中シリーズ第二作。前作に引き続きビング・クロスビーボブ・ホープ、ドロシー・ラムーアが出演するが、役名や設定は変わっている。彼らが芝居小屋で消し忘れた火が元となり町まで燃えたというが、ちゃんと捕まえて反省させた方がいい。特に笑うところもなかった。
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8.0『スイング・ホテル』(1942/米)マーク・サンドリッチ

 戦前ミュージカルの入門にいい
 芸人仲間のフレッド・アステアビング・クロスビーが、同じ女性をめぐって友情に陰りが差していくところに惹きつけられる。また、ショックで疲れ切ったクロスビーが、気を紛らわすためにかけたレコードから聞こえてくるポジティブな歌詞に冷たくツッコんでいくシーンは笑えるし感情も揺さぶられる。同じく二人の男が女性をめぐって駆け引きをするのは『セカンド・コーラス』も同じだが、人間を丁寧に描いていている分だけ『スイング・ホテル』のほうが面白い。女が男を捨てることが多く女性蔑視のきらいはあるものの、アステアのダンスとクロスビーの歌の両方が見られるわけだから戦前のミュージカルの入門としてもいい作品だと思う。
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4.0『晴れて今宵は』(1942/米)ウィリアム・A・サイター

晴れて今宵は [DVD] FRT-245

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 精神的な近親相姦
 結婚に興味の無い娘にロマンチックな気持ちを起こさせるようにと父親(アドルフ・マンジュー)が娘(リタ・ヘイワース)に匿名のラブレターを書くのはなかなか気持ち悪い。精神的な近親相姦をしているんじゃないかと思った。しかもその作戦が結構順調にいって、リタがその手紙の差出人に恋するのだから怖い。このあと本当に近親相姦をテーマにいた映画になれば一周回って面白いかもしれないが、その後はアステアとリタ・ヘイワース互いが好きなのになかなか真実を伝えられないというだけの話になって退屈である。アステアはヘイワースと大きな喧嘩をする訳でもないし、ストーリー上での存在感もない。
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1.5『ロッキーの春風』(1942/米)アーヴィング・カミングス

(イメージ無し)
 趣味に合わない
 メインの二人ははじめから婚約という間柄なので恋愛の情緒はなく、夫婦喧嘩のようないざこざが続く。物語に起伏はないし、何を面白がればいいのか分からない。また、男に惚れている女の嫉妬ばかりが描かれるが、女というのは醜い生き物だと思っている人間が作っていそうな映画である。作り手の趣味に合わない。
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1.5『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』(1942/米)マイケル・カーティス

ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ [DVD]

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 誠実でない伝記映画
 興行師ジョージ・M・コーハン(劇作家、作曲家、作詞家、俳優、歌手、ダンサーでもあった)の伝記映画で、その後大量に作られることになるミュージカル伝記映画の先駆けとなった作品。だが、コーハンは実際は二度結婚しているが、結婚は一度だけということに改変されている(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』125p)など、伝記としての誠実さに欠けている。全編通して主人公が格好良いところが強調されるのが退屈で、心に響かない。魅力的な人間には陰影があるものだと思うが、戦意高揚映画の側面もあるので主人公を格好悪くは描けなかったのかもしれない。アメリカン・フィルム・インスティチュートのアメリカ映画ベスト100の内の一つに選ばれたりするなど評価の高い映画だが、なぜなのか教えていただきたい。
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1.0『オーケストラの妻たち』(1942/米)アーチー・メイヨ

 楽団がうまくいかないことを妻のせいにしている
 トランペッターのビルは持て男で、すぐに相思相愛の恋愛になりすぐキスして結婚できるから苦労がない。その後色恋沙汰により次第に楽団の信頼関係が崩れるが、ビルは妻に向かって「君が楽団をぶっこわした」などと責任をなすりつけ、ビルに同調した楽団員たちも冷たい目で妻を見るようになるのでとても嫌な気持ちになった。


1.0『モロッコへの道』(1942/米)デヴィッド・バトラー

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 笑わなかった
 珍道中シリーズ第三作。君主制を用いたファンタジーにすぎず、笑わなかった。
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1.0『プライベート・バッカルー』(1942/米)エドワード・F・クライン

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 ストレートな戦意高揚映画
 物語もギャグも遊びもない、かなりストレートな戦意高揚映画である。美女が「私が男なら軍隊に行くわ」、「あなたの力が必要よ」「武器を作るために金属を差し出すのよ 私たちが軍隊を支えるの 良い悪いを言っている暇はないわ」と呼びかけ、ラストシーンでは軍需工場や戦艦、航空隊の映像が流れる。「金貸しだろうが詐欺師だろうがみんな勝利のために戦うのだ」「勝ちたければ突っ込んでいけ」「勝つまで文句は言うな」「たとえ疲れても頑張るんだ」と、当時の日本の「欲しがりません勝つまでは」のような禁欲的なスローガンが聞けるのは興味深いが、あくまで歴史の資料として興味深いのであって、映画としては面白くない。


1.0『歌ふ狸御殿』(1942/日)木村恵吾

(イメージ無し)
 シンデレラと同じ
 木村恵吾による「狸御殿」シリーズ第2弾だが、第1弾(1939年)はフィルムが現存していない。内容だが、「シンデレラ」を日本に置き換えただけで、歌や踊りも面白いとは思わなかった。また、「女として一番忘れてならないのは女らしさだ」という台詞に見られるような、何か言っているようで何も言っていない女性観も嫌であった。


7.0『ダニー・ケイの新兵さん』(1943/米)エリオット・ニュージェント

 戦意高揚映画だが面白い
 神経質なダニー・ケイは親友と共に徴兵されたことを不安に思うが、偶然知り合いの看護婦たちも軍に召集されていたことから恋が始まる。しかしダニー・ケイの片思いは空回りし、全く報われないのが切なくて面白い。ただ、結局のところダニー・ケイは別の美人な女性と結ばれるのでモテないわけではない。最後にダニー・ケイは日本軍と戦うが(もっとも中国系アメリカ人が日本兵を演じているのか、彼らは全く日本語を話せない)、これもギャグとしてまあまあ笑えたのでプロパガンダ映画としての不快感はなかった。
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5.0『青空に踊る』(1943/米)エドワード・H・グリフィス

 素性の知れない男に女が求婚するか?
 アステアの映画らしく、雑誌の写真部の女性への片思いがなかなか実らない。戦争まっただ中の映画であるが恋愛の描写はわりと丁寧に描いてある。ただ、なぜかアステアは自分が軍人であることを女に隠しているが、素性の知れない男に美人が求婚するとは思えず脚本をもっと練ってほしかった。
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5.0『デュバリイは貴夫人』(1943/米)ロイ・デル・ルース

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 王より女を憎んでいるように見える
 普通の恋愛コメディかと思ったら、中盤からレッド・スケルトンが見る夢のなかの話となり、フランス革命直前の歴史映画になる。王が破れるという展開だからこの政治的主張には私は賛成だが、革命党の指導者ジーン・ケリーや民衆が「デュバリイは毒婦」と声を揃えるように、人々は王様本人よりも女性に対して敵意を燃やしているんじゃないかと思ってしまうので、女性嫌悪が伝わってくる不快さはある。
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3.0『春の序曲』(1943/米)フランク・ボーゼージ

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 なぜか意地悪な兄
 歌手になるためにニューヨークにやってきたディアナ・ダービンがニューヨークに居る兄を尋ねると、彼は作曲家の執事をしていた、という話。ただ、尋ねた兄は最初優しかったのに、急にダービンに冷たく当たるなど立ち位置がよくわからない。「人の不幸は構わないんだな」などと兄がダービンを攻めるのを見るのは不愉快である。また一緒に生活していた音楽家が、ラストになってようやくダービンの歌声を耳にするのもおかしい。
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2.0『ストーミー・ウェザー』(1943/米)アンドリュー・ストーン

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 気晴らしの映画
 レナ・ホーンは美人で歌も良いし、本人役で登場するキャブ・キャロウェイなど黒人の歌やパフォーマンスは十分観られるが、物語は浅く力が入っていないので映画として面白くない。ストーミー・ウェザーというタイトルだが、天候の演出が見事だとか効果的だとかいう訳でもない。戦時中なので、黒人にも戦争を頑張ってもらうために気晴らしとして作られた作品の一つなんじゃないかと思う。


1.5『バスビー・バークリーの集まれ!仲間たち』(1943/米)バスビー・バークレイ

(イメージ無し)
 無理矢理キスをして恋仲になれる訳がない
 バナナのオブジェを用いた絢爛な踊りが展開されるが、だから何だという話で、人間や物語に魅力がなければ映画としてはつまらないと言うほかない。あとこの映画に限ったことではないが、男が女に無理矢理キスすることで女が男に惚れて恋仲になる、という発想はいかにもマッチョな男性の欲望を体現したもので不愉快である。
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1.5『キャビン・イン・ザ・スカイ』(1943/米)ヴィンセント・ミネリ

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 宗教が好きな人向け
 『ハレルヤ』に次いで2つめの、キャストがオール黒人のハリウッドミュージカルで、のちのミュージカルの巨匠ヴィンセント・ミネリの処女作(スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』133p)でもある。妻のいる男のもとに天使と悪魔が現われ、地獄に行くか天国に行くか天使と悪魔が駆け引きをする映画だが、神を信じる者は救われるという説教臭さがあり、無神論者の私には関心のある話題ではない(なぜなら天国も地獄も存在しないから)。登場する女性も、「男を誘惑する女」という女性蔑視の典型的なものだし、また捨てられた妻の方がなぜか夫に謝るという理解しがたいシーンもあり私には面白くなく、宗教が好きな人向けの映画である。


0.5『ステージドア・キャンティーン』(1943/米)フランク・ボーゼージ

(イメージ無し)
 ただの戦意高揚
 多くのスターが友情出演しているプロパガンダ映画で、それぞれの出し物やショーや歌が淡々と披露されていく。マニア向けであって、一般の人には面白くはない。


8.5『若草の頃』(1944/米)ヴィンセント・ミネリ

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 恋愛描写はいいが父親の心変わりが気になる
 ジュディ・ガーランドが男に惚れている側だが、ジュディ・ガーランドはそんなに美人ではないので嫌みがなく応援したくなる。二人で家のろうそくを消していく場面など、恋愛描写が細かく丁寧に描かれていていい。ガーランドの歌がいいし可愛いらしいし、子役のマーガレット・オブライエンも熱演である。
 ところで、お堅い父親はニューヨークに転勤を命ぜられるが、セントルイスに愛着を持ち恋人もいるガーランドや妹は反対する。娘達のことを思った父親は心が変わったようにニューヨーク行きをとりやめ、ガーランドは結婚も出来たしハッピーエンドということになる。だが、仕事は大丈夫なのか。父親がクビになったら幼い娘や家族はどうなるのだろうか。もちろん、父親リストラされず大丈夫だったのだろうが、父親の心変わりや今後の生活の見通しなどの部分が物足りなく減点した。
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3.0『カバー・ガール』(1944/米)チャールズ・ビダー

(イメージ無し)
 迷信深い人に共感できない
 リタ・ヘイワースら登場人物は迷信深く、とくにリタ・ヘイワースは自分の祖母は結婚式の最中に結婚式を抜け出して幸せになったからと、自分も結婚式を抜け出すと幸せになるなどと考えておりオカルトの域に達している。ギャグやコメディではなく、本当にそう信じているのだから怖い。また、リタ・ヘイワースが自分の結婚相手にブロードウェイのプロデューサー・ノエルではなくジーン・ケリーを選んだ理由も、「牡蠣を開けたら中から真珠が出たから」で、人生の重要な決定を迷信に頼っていて全く共感できなかった。
 ただ、ジーン・ケリーが自分の分身と踊るなど、ダンスや音楽は面白いので3点にした。
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2.0『我が道を往く』(1944/米)レオ・マッケリー

 「宗教は人の生き方を決めつけない」は嘘
進歩的な牧師ビング・クロスビーが、不良グループを聖歌隊に入れて更正させるエピソードがあるが、いくらビング・クロスビーが寛容な牧師だからといってすぐ不良が言うことをきくとは思えない。不良を更生させるまでにもっと躓くことや絶望的な事件があるはずである。またクロスビーは「宗教は人の生き方を決めつけないからね」というがこれは嘘だろう。例えば、キリスト教も含めて宗教は基本的に同性愛者には批判的である。この映画は宗教の力を過信しているし、美化していると思う。
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2.0『姉妹と水兵』(1944/米)リチャード・ソープ

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 姉のキャラがおかしい
 姉(役;ジューン・アリスン)は母親代わりに妹を見守る役だが、実際には母親では無いのだから姉に母性が常にあるように描かれるのは不自然である。それでいて、姉はまじめで堅そうなのに兵隊にすぐ惚れてしまうのも矛盾している。堅い女がだんだんと男に惹かれていくというプロセスが描かれるからこそ面白いのである。また、姉妹の喧嘩も夢の中のシーンで1回行われるだけで退屈である。なぜか120分以上あり、長いのもマイナスである。
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1.5『世紀の女王』(1944/米)ジョージ・シドニー

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 『水着の女王』を見れば良い
 エスター・ウィリアムズのプロデューサーの陰謀で、彼女は結婚式の最中に新郎のレッド・スケルトンが浮気をしていると勘違いして出て行くが、女は愚かだからまんまと陰謀に引っかかり愛を裏切るという感情が読み取れて嫌である。その後、レッド・スケルトンがエスター・ウィリアムズの通う女子大に入学し、彼女の誤解を解いていくという強引な展開になるが、女子大でレッド・スケルトンが人気者になるのでムカつく。この二人の出演作は『水着の女王』(1948年)が面白いのでそちらを見れば良い。
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1.5『ピンナップ・ガール』(1944/米)ブルース・ハンバーストーン

 戦時中の気晴らし
 口から出任せで海軍の英雄に近づくベティ・グレイブルが主人公で、彼女は自分がミュージカルスターだと嘘をついているうちにショーに出ざるを得なくなり、思い切って舞台に出たら完璧に歌って踊れた、という茶番である。また、その英雄をめぐって別の年上の女が嫉妬するなど、女を醜く滑稽に描き、男がモテモテな展開が続く。戦時中の気晴らし映画ということだろう。
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1.0『キスメット』(1944/米)ウィリアム・ディターレ

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 君主制に憧れる乞食
 古代のバグダッドを舞台にしたおとぎ話で、乞食の王だと名乗るロナルド・コールマンは、盗みなどをして乞食ながら羽振りが良い。ただ、彼は「外の世界は醜いから」と自分の娘を部屋の中に囲っているのだが、そんな人権侵害をされているのに娘と父はあまり対立せずドラマがない。また、ロナルド・コールマンは自らを「乞食の王」と名乗るように王や貴族という称号に憧れやプライドがあり、身分制がいいと思わない私にはそこも共感できなかった。


0.5『ハリウッド玉手箱』(1944/米)デルマー・デイビス

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 研究者が見るのだろう
 こちらも戦争まっただ中の戦意高揚映画で、ワーナーブラザーズのスターが勢揃いするが、そのスターに兵士たちがワーワー興奮するだけで映画として見る価値はない。なぜDVD化しているのか謎であるが、研究者が見るのだろう。





参考文献

スタンリー・グリーン『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』村林典子役/岡部迪子監修、音楽之友社、1995年
ポール・D・ジンマーマン『マルクス兄弟のおかしな世界』中原弓彦永井淳訳、晶文社、1974年
猪俣良樹『黒いヴィーナス ジョセフィン・ベイカー 狂乱の1920年代、パリ』青土社、2006年



訂正
ポール・D・ニューマン → ポール・D・ジンマーマン(2018/01/05)